表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
トリムルティ  作者: 姫野博志
第三章  楽天知命《らくてんちめい》
30/56

逢魔ヶ刻の邂逅

 部屋へと向かうサティを見送ってから、ガナはゆっくりと窓を閉めた。

 彼女の足音が、すっかり階下に消えてしまうのを確認すると――


「……聞いていたんだろう?」


 背後に向かって静かに声をかける。

 廊下の突き当たり――わだかまる暗がりの中へ潜む気配に、ガナは気付いていた。


「………………」


 硬い表情を浮かべたガリウスが、窓際から差し込むほのかな光の下に歩み出る。

 まるで逢魔ヶ刻のような薄暗がりの中、ガナの陰鬱な声が響く。


「この事件に|《機関》《アムリタ》が関わっているのは解っているね…………

 この村が狙われたのも、単なる偶然じゃないんだろう?」

 

ガナはガリウスの方に身体ごと向き直ると、厳しい視線を送る。


「いったい、どこまで関わっていたんだい? あんたは……」


 ガナの数歩手前で止まったガリウスは……

 窓の縁に手をつき、暗い眼差しを窓の外に向けたまま重い口を開いた。


「二十年前……王立学院に留学していた頃、気付かぬうちに片足を突っ込んで、そのまま抜けられなくなってしまった。

 ――そして九年後……大切なものを失ってから、初めてその恐ろしさに気付いた」


 二十年……と、小さく口の中で呟き、溢れる殺気を隠そうともせずにガナが再び問う。


「アシュラ計画を知っているかい?」


「……耳にしたことはある――だが、中枢に関われるほどの立場ではなかったのでな……

 具体的な内容まで知らされることはなかったよ」


 同じ姿勢で淡々と答えるガリウス。

 言葉を切り、少し考え込むように眼を瞑る。


「――ただ……………………」


「……ただ……?」


 右手を窓枠に乗せたままガナの方を向き直り、ようやく視線を合わせるガリウス。


「貴女とは――貴女本人なのかどうかは判らないが…………

 まだ小さい……五歳くらいの貴女達(、、、)に、剣の稽古をつけたことがある―」


「…………そうか――! どことなく見覚えがあると思ったら……あの時の――」


 そう言いながら、記憶の引き出しを探るようにガリウスの顔を凝視するガナ―――

 十一年前……そう、二十年前の九年後、ボクが四歳の時だから計算は合う…………

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ