10 ため息
その日の昼休み。
僕は彼女と一緒にいつものように
屋上で、昼ごはんを食べていた。
空は灰色の雲でうめつくされていた。
夏が終わり、木は秋の衣装を
身に纏おうとしているのに
最近の天気は梅雨の如く、雨ばかりだった。
今にも雨が降りそうな天気の中
僕と彼女は並んで座っていた。
弁当を食べている最中も
僕は彼女の顔色を伺うばかりだった。
何かあったのか、直接聞こうとも思ったが
勇気が出なかった。
弁当も食べ終わり、僕は弁当を片付け始めた。
片付けながら、ふと横目で彼女を見る。
やはり彼女の顔には元気がなかった。
そういう彼女の顔を見るたびに
心が締め付けられ、心配になる。
やはり、はぶられているのは確かなんだろう。
実際、自分の目でも見た。
・・・やっぱり直接聞いたほうがいい。
決心して、僕は聞くことにした。
「・・・ねぇ」
口を開く。
「何?」
彼女は笑顔をつくる。
でも、それは無理矢理つくったようにしか
思えなかった。
「実那さ、最近なんか悩んでるよね?」
その言葉を言うだけでも、鼓動が早まる。
「え?別に悩んでなんかないよ」
「でも、最近ため息ばっかりついてるよね?」
彼女は、少し顔を曇らせる。
「・・・うん。この頃寝不足で、疲れてるの」
その笑顔に、僕はまた心が苦しくなる。
「・・・そう・・・なんだ。体調崩さないようにね」
「うん。ありがとう」
なんで聞かなかったんだ。
”本当のこと言ってよ”って。
そんな簡単な言葉、何で言えなかった。
勇気を出せない自分が嫌になる。
予鈴がなった。
僕達は立ち上がり、教室へと向かった。