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4月18日/火曜日(後)ー過去ー

初めての方は初めまして

前回の続きで読んで下さっている方は、ありがとうございます。


というわけで後編です。


おばあさんとは彼女にとってどのような存在なのでしょうか。

それでは、どうぞ!


「いいかい?ここでいい子にしているんだ」

「はあい、おとうさん、おかあさん」

「それじゃあな」

「ごめんなさいね…雪見」

「いってらっしゃあい」



「わたしは当時7歳でした。そして、お父さんとお母さんはこの公園に私を残しました」




まわりは人がいっぱいいる。

あ!すなばであそぼう。



「当時この公園は桜もたくさんあって人気があるところでした。両親が帰ってくるまで私は公園で一人で遊ぶことにしました」




「できた」


わたしはできあがった砂のおやまをみる。

うん、よくできた。


「…あれ」


まわりにはみんないなくなってる。

わたし一人。

…おとうさん、おかあさん、まだかなぁ。

わたしはおやまをくずす。

おててがよごれたからかえったらあらわなきゃ。

おかあさんたちがくるまで。

いすにすわってまとう。

わたしはいすにむかう

おおきめないすにすわってまつ。



「私は両親に言われた通り,ずっと待っていました。やがて暗くなり、私は泣いてしまいました…」




「うっく…おがあさん…おどおさん…まだなのぉ…」

おとうさん,おかあさん,来ない。おそとまっくら。お腹すいた。


「はやぐかえってきでよぉ…ヒック…うう…」



「やっぱり両親は来ませんでした。ですが私はそれでも待ち続けました。一時間…二時間…空腹と疲れで私はもう死んでしまうかと思いました」




「ひっ…ひっく…おなか…すいたよお…」


どうしてかえってこないの?

こわいよぉ…おなかすいたよ。


「うっ…うっ…」

「おやまぁ,どうしたのかね?」


わたしの前にひとがいる。


「だ,だれ?」

「ん?あたし?あたしゃこの辺にに住んでいるおばあさんですよ」

「おばあさん…」

「こんな夜遅くまでなにをしているんだい?」

「おがあざんどおどうさんにまっでいろって…」

「いつからだい?」

「おひる」

「おとうさんとおかあさんは何時頃に帰ってくると言ったんだい?」


くびをふる。


「言っていないのかい…」


おばあさんがたんてーさんのかっこうをしている。


「…あたしも待たせてもらおうかねぇ」


わたしのとなりにすわる。


「ど…どうじて…?」

「おまえさんが心配だからだよ………首を振ってもおばあさんはここにいるんだからね」

「んんーっ」


おばあさんからはなれる。


「あらま,嫌われちゃったかねぇ。……」


またたんてーさんのかっこうをしている


「んー、嫌われちゃったから帰ろうかねぇ」


えっ


「そんじゃあねぇ」


おばあさん,かえった。

またひとりぼっちになっちゃった。

まわり、まっくら。


「ひっ…もう…いやだよぉ…う…うわああああああーーん」


おかあさんおとうさんはやくかえってきてよ。

おうちかえりたい。

かえりたいよぉ…、





おばあさんがいなくなっておじかんがたった。


「あーん…あああーん…うっく…かべりだいよ゛ぉ…」


まだおかあさんもおとうさんもかえってこないよ…


「あっく…うっ…うううう…」


はやく…きてよぉ…


「ひっ…うえええええええええ」


…ほっぺたになにかあたってる。


「ヒッく…うっうう…えええん…」

「ほぉら,お腹がすいただろう?」


おばあさんがたってる。


「…ぅえ?」


わたしのほっぺたにあったかいものが。


「ほら,そこにお座りして一緒に食べようか。おいしいよ?」


わたしはくびをふる。

おなかぐうぐうなってる。


「フフフ、素直な子だねぇ」


おばあさんと一緒にさっきのいすにすわる


「ほら,おたべ」


わたしのおひざに,つめたいグラタンと,あたたかいのみものが。


「えっく…ひっく…」

「ごめんなぁ残り物で。さ,たべておくれ」

「…おいしい…」

「どんどんおたべ。おばあさんうれしいよ」





「おばあさん…」


彼女が呼びかけていたのはこのときのおばあちゃんというわけか。


「はい,おばあちゃんが私を助けてくれたんです。あのとき食べたグラタンの味は…忘れる事はないです」


優しい笑顔をこちらに向けた彼女だが、すぐに正面を向き直し、俯く。


「…それで,ご飯を食べたところまで覚えているのですが、そこから私…安心して寝てしまったので…気づいたときは朝でした」




「うぅん…」


わたしこわいゆめをみてたみたい。

おかあさんとおとうさんがどこかいっちゃう、とってもこわいゆめ。

ゆめだからだいじょうぶ。

はやくようちえんいかなくちゃ。


「おや、目が覚めたかい?」

「え…」


おばあさんが…いる。

こわいゆめじゃ…なかった…。

おかあさんと…おとうさんは…?


「う…うえ…うええええええ」

「あらまっ,一体どうしたんだい?」

「うええええん…うわああああん」

「おー,よーし,よーし」

「えええええんうえええええん」

「寂しいんだよねぇ…可哀想に」






「あああ…ひっく…ううう…」

「落ち着いてきたかい?」

「ひっ…ひっ…」

「ほら、朝ご飯もってきたよ」


いすにはおにぎりとのみもの。


「ほら、おたべ」

「…おばあざん…どうじて、ゆきみに、そんなごとずるの?」

「フフフ…,おばあさんはお人好しだからねぇ」

「んん?」


おばあさんのいってること、わからない。


「んにゃ,気にしなくていいよ」

「さ,それ食べ終わったらお父さんとお母さんを待とうか」

「…うん」





「それから毎日私とおばあちゃんは父母を待ちました。この公園の…そう、このベンチで」


黒羽の伸びた左手がすっかり古くなってペンキがいたるところで剥がれてしまったベンチの感触を確かめている。


「私はお母さんとお父さんが来ると信じていました。…ですが、いくら経っても両親は現れませんでした…」

「まさか…」


聞きたくもない事実の確認をする。

無情にも、黒羽はそれを肯定する頷きを返す。その顔は憎しみにとらわれているわけでも涙をながしているわけでもなく、ただ穏やかだった。


「…はい、私は両親に捨てられたんです。……いえ!そんな顔しなくても大丈夫ですよ」

「え?俺今どんな顔している?」

「えっと…その、とても悲しそうな顔をしています」

「あ、あぁ悪い」


無意識に顔に出てしまったようだ。

そうなるのも許してほしいものだ。こんな普通の女の子にそんな壮絶な過去があるとは知る由もなかったのだから。


「あんまり両親の顔覚えていませんし大丈夫ですよ」

「そうか…」


俺の父親も,似たようなものだが。


「それでですね」


微妙に重くなった空気を入れ換えようとしてくれたのか、黒羽が口を開く。


「待っている間,公園で遊んで過ごしていたのですが…そのときなんです。この人形をもらったのは…」


淡く微笑みながら黒羽は手に持つ人形を見つめていた。





「ああぁん,かえしてよぉ」

「へっへー!だれがかえすもんか!」

「わたしのだよぉ…!かえしてぇ…!」

「やーい!ここまでおいでー!」

「かえしてったらかえしてってばぁ~」

「ノロマー!はやく追いついてこいよ!」

「はぁ…はぁ…まってぇ…!」


もうわたしはしれない。

おとこのこはやい。


「はぁはぁ…ひどいよぉ…」


どうしていじわるするの…?


「うっく…うっう…かえじてよぉ…」

「へっ!泣いたってかえさないよーだ!」

「公園に住んでるほーむれすのくせに!」

「ほーむれす!ほーむれす!!」


「うえええええーん!」

「まーた泣いた!ほら泣いたぞーっ」

「ゆきみちゃんは泣き虫だなぁ!ハハハハハーっ!」

「あーん…うう…えええええええんん…!」





「まさか…」

「…はい、わたし、子どものときもいじめられていたんです」

「色んな意味で苦労人だな」


そういう運命なのだろうか。


「そんなやりとりを,おばあちゃんは聞いているはずなのに」

「決して止めはせず、ずっと見ているだけだったんです」

「いや,普通は止めるよな」

「そうなんですよね」


黒羽が苦笑いしながら話を続ける


「それで…私がおばあちゃんのところに行くと…」

「そのときでした」





「おばあざああ゛ぁあ゛ああんん!」

おばあさんにとびつく。


「いじわるざれた…うえ…うえええええん!」

「…ゆきみや」

「うわあああ…うわあああああん」

「これをもって」

「うええ…うええ…?」


クマさんのおにんぎょう。

わたしのてに、おかれる。


「ひっ…なに…ごれ…えっぐ…」

「雪見や、これは雪見に元気と勇気をくれる人形なの。苦しいときや悲しい時、つらいときに…この人形をもてば,きっと雪見を助けてくれる。おばあさんの、とっても大事なものなんだよ。」


おばあさんがわらう。


「これをあげるから…ね?強い子になるんだよ?」

「ひっく…この…くまさんが…?」

「あぁそうさ。ゆきみの力になってくれるはずだよ?」

「…うん、わかった。くまさん、たいせつにする」

「雪見はものわかりがいい子だねぇ」

「えへへ…ゆきみつよくなる!」

「おばあさんはずっと一緒にいるからね」

          

「ありがとう!おばあちゃん(・ ・ ・)!」





「そうだったのか…」


おばあさんの形見ってことか。


「それから私はこの人形を持ち続けました。小学生になっても…中学生になっても。そして今も必ず私の見えるところにあります」


撫でるように人形を優しく触る。


「おばあちゃんの話を信じていますし、なによりこれがおばあちゃんとの最後の繋がりですから…」


捨てられた彼女の元に現れたおばあちゃんという存在。

それはまさに救世主とでも呼べる存在であり、小さいころであるならそれはもう掛け替えのない人物であったのだろう。

そんな人からもらった人形であるなら、そんな願いが込められた人形であるなら、あそこまで彼女はこの人形に縋っていたのだ。

おばあちゃんと人形はイコールで結ばれているといっても過言ではないほど、それは愛おしいものなのだ。

そう考えると今までの行動に納得がいく。


「そして,後に私はおばあちゃんの養子になり…」

「もう親に捨てられたと,わかったからか」

「そうですね…。いつまで経っても来ませんでしたし」

「しばらくは,おばあちゃんと楽しく暮らしていました」

「ですが小学校4年生になった頃…」


微笑みの唇が儚く閉じていく。

目の下が暗くなっているのが影だけではなくなっている。

恐らくおばあさんが亡くなったことを思い出したのだろう。

両親の変わりの親を亡くしたつらさは痛いほど分かる。


「…いや,さっきも言ったけど,言いたくないことは言わなくていいよ」


そう言ってみる。


「すみません…。私すぐトラウマができてしまうので…」


嫌な脂汗を光らせている。


「ですが…言わせてください。私、決めたんです」


人形に目を落としていた首を上げる。

同時に朧月と電灯で出来た目元の影が消える。



「決心が付くまで大分時間が掛かってしまいましたが…私、もっと前向きに生きていこうと思っているんです。いつも後ろめいたことばっかり考えていたので」


それは意外な決意だった。


「そんな自分…嫌なんです。逃げてきたばかりの自分は…もう嫌です。これからは自分の過去からも今からも逃げないで…前向きに生きていこう…そう…思っているんです」


意志を露呈するような力強い紅玉の瞳を見る。

きっと。

人形が壊されたことにより彼女の中でどこか吹っ切れたのかもしれない。

今の彼女ならそれはできると思う。


「そうだな。黒羽なら出来るさ」

「えへへ…ありがとうございます」


照れ隠しに笑っている


「では…」


咳払いを一つ入れ,深呼吸をする。

話の続きをしてくれるみたいだ。


「はーっ…。ふぅ。私が小学4年生の時に…病気で静かに息を引き取りました。」





「ゆきみや…聞いておくれ…」


さいきんずっと家でねているおばあちゃんから声をかけられる。


「どうしたの?おなかすいた?」

「ううん…おばあさんはもう長くないみたい。最期に話を聞いてくれないか」

「え…やめてよ…おばあちゃん」


泣きそうになるわたしをおばあちゃんは頭に手をのせる。


「いいかいゆきみ…おばあさんがいなくなっても、しっかりするんだよ」

「…やだよ…おばあちゃん…」

「あんたは弱虫だけど、心の優しい子。その優しさを忘れないでおくれ」


なみだ、出てきた。


「おばあさんはゆきみと一緒に過ごせて、楽しかったよ」

「ひっ…おばあ…うう…ちゃん…」


なみだが出てきて、おばあちゃんの顔、よく見えなくなる。


「これからはその人形をおばあさんだと思って、ね?」

「うぇぇえ…あ…あっ…」


おばあちゃんのやさしい手が、わたしの手にあるおにんぎょうをさわる。


「ずっと前にも言ったよね?これは元気と勇気をくれる人形って。苦しいときや悲しい時、この人形をもてば…きっと雪見を助けてくれるって」

「うぅぅう…やだ…死なないで」

「強い子に…なるんだよ」


おばあちゃんはまたわらうと前を見る。


「おばあちゃん…おばあちゃん…!」

「ごめんよゆきみ…おばあさん、少し疲れちゃった」


そう言って、おばあちゃん、動かなくなる


「やだよおばあちゃん死なないで!おばあちゃん!」

「……全く、困った子だ…ねぇ…」


おばあちゃんの体をゆらす。死なないで。


「………ゆき…み…」

「おばあちゃん!……おば…」


いくらゆすっても、おばあちゃん、動かない。


「目をあけて、おばあちゃん!いや…わたしいや…いや…」


おばあちゃんわたしにうそをついた。

ずっといっしょにいてくれるっていったのに。

おばあちゃん死んじゃった。


「ううっううううわあああああああああん!」






「…もう二度と、おばあちゃんが目覚めることはありませんでした」


黒羽の目尻に涙が溜っている。無理もない話だ。


「おばあちゃんが死んでから、私は暫く家に引きこもっていました。なんとか復帰することができましたが」


ずっと一緒にいてくれるといったおばあさんに『裏切られた』というわけか。

…かける言葉が見つからない。このとき彼女になんて声をかけてやればいいんだ。


「でも…やっぱり私はおばあちゃんの言葉を守ることはできませんでした」


黒羽の重くなっているはずの口が開く。


「結局私は弱いままで…自分の気持ちを素直に伝えられなくて…。だから」


生理的現象物を手で拭い去る。


「変わっていきたいと思っているんです。いつまでも人形に頼ったらダメだって。一人前にならなくちゃって」

「…そうだな、変わっていかないとな」


人形はおばあさんとの最後の繋がりであり、大切なものであることは変わりない。彼女を支えてくれる、最高の贈り物である。

だがそれに縋って甘えるのはもうやめて、おばあさんに一人前になると宣言したのだろう。


「そうですね」


決意に満ちた顔で彼女は立ち上がる。


「長話を聞かせてしまってすみません。もう遅いからそろそろ帰りましょうか?」

「そうだな。帰ろうか」





特に何事もなく彼女を家まで送り、帰路につく。

真っ黒に染色された道を外灯を頼りに歩く。

雲の隙間から顔を覗く月に目を奪われながら、盛大な息をつく。

ようやくここまでやり遂げることが出来た。

だが真のエンディングを迎えるためにはまだ足りない要素がある。

魔王、銀堂の存在。

彼をどうにかしないことにはゲームクリアは成し遂げられない。

逆に言えば俺は最後の魔王まで来たのである。

言葉の剣を銀堂の喉元に突きつけるその日を思い描きながら、もう一踏ん張り頑張ろう。

胸に意思を固め、公園の階段を下り終わりって横断歩道の前に来る。

そういえば、今まで何かと考え事や急いでいたこともあって意識する暇がなかったが、ここは幽霊が出るという、住宅街から街へ向かう道路の横断歩道だ。

確かによくよく観察すれば血痕が残っていたりと生々しい傷跡がある。

周りに住居がないということと、外灯があまり整備されてなく日中でも陰湿な薄暗さを感じるなどが事故が発生しても発見が遅れる原因になって、ここで無残に死んだ霊が彷徨っているという。

一時期学校でも幽霊が徘徊していると噂になった時期があった。今や誰もそんな話をしちゃいないが。

そんな格好のホラースポットとなっている横断歩道は今日も侘しい雰囲気が漂っていた。

折角彼女が元気になって、とても良い日だというのに水を差してほしくないものだ。

さっさと通り過ぎる。

明日は彼女が来てくれる。

それだけで俺のここは踊り、上機嫌で帰ったのだった。






というわけで終了です。


今回も相当改変しております。

どうでもいいですが、いつかここにでも内容書いていきたいと思います。


次回は黒羽が学校にやってきて…?


それでは最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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