第三章
―颯side―
・・・蓮が最近、真由によく話し掛けるようになった。
さっき教室でる時もなんか薄っすら笑ってたし、なんか企んでるよな、あれ。
小学校の時から一緒だから蓮の気持ちくらいすぐ分かる。
蓮・・・が、真由を・・・ねぇ。
気づいてないフリをしてるから、蓮はばれてないとでも思ってるんだろうな。
実際、独占欲強いから嫌だけど、気にしてないフリしてる。束縛はしたくないから。
真由は自覚ないだろうけど、真由は可愛い。ほんと可愛い。
甘い声で言う言葉とか一言一言が可愛すぎて。
照れる時少し笑って、少し顔を赤らめて、長い髪の先をいじるしぐさとか。
長い茶色の巻いた髪が綺麗で、黒くて大きい澄んだ瞳がとても綺麗で。
俺は、真由の事は、転校してきた時から好きだった。一目惚れだった。
男子生徒にも一目置かれていた。
はっきり言うと、モテてたってわけ。本人は気づいてないけど・・・ね。
大人しくて、誰も寄せ付けない雰囲気を装っていて、友達もいなかったらしい。
そんなとこもよかったんだけどね。
そして、中3のクラス替えの時、真由の名前があって喜んだ。
偶然にも席が隣になって。
悠斗は俺の気持ち知ってたから、一時期は冷やかされた。
由紀は
「チャンスなんじゃん?彼氏とは別れたって噂だし。」
と、言ってくれたけど、話し掛ける自信とか勇気とかなかった。
そして、由紀はため息を付き、窓の外を指差した。
「ん?」
指を差している先を見ると真由が木の下で本を読んでいた。
「「ほーら、行って来ーい!」」
ドンッ
「イテッ!てめーら・・・何すんだー!」
「「行って来い。」」
二人共、真剣な目をしていた。
「・・・分かった。」
そして、俺は走った。
「さて、どうなるかな。」
颯が教室を出て行った後、悠斗がぽつりと呟いた。
校庭では、無表情の真由が本を読んでいた。
無表情っていうより、哀しい顔をしていた。
泣きだした時は焦ったけど、無意識に真由を抱き締めていた。
それから仲良くなれたんだよな。
*****
「颯?おーい!はーやーてー?」
「う、おっ!?」
「あははは。どうしたの?」
可愛く笑う真由にふいにもドキッとしてしまった。
「ま、真由の事・・・考えてたんだよ・・・。」
「へ?」
その瞬間真由の顔が真っ赤になった。
「・・・それ反則だから・・・。」
ぽつりと小さく呟き、真由の手に俺の手を絡めた。
―真由side―
「まーゆー、何食べる?」
「んーっと、チーズケーキがいーな」
「じゃー俺、ショートケーキ☆」
・・・
「「「ぶっっ」」」
ははは。ほんと可愛いなー颯。
「ちょ!なんで笑うのさー!」
「「「いや、可愛いなーと」」」
「いやいや、そんなハモられても、ね・・・?(笑)」
「じゃあ、俺ガトーショコラ」
おー、なんか悠斗意外だな。
「あたし紅茶のシフォンケーキ」
「由紀それ好きだな。」
由紀大人だなー。落ち着いてるし。
黒いストレートの少し長い髪に、少し小さな綺麗な瞳。
羨ましいなぁ・・・。
「うーうまっ♪」
悠斗の笑顔って、意外と可愛い。
ちょっと茶色がかった黒髪に、少し短い髪。
スポーツは得意だけど、
だるい、遊ぶ時間なくなるとかで部活入ってないけど、
ほっそりした体型に、整った顔。
「あーほんと、おいしい」
「チーズケーキうまそー・・・」
と、颯がほしそうに見つめる。
「あ、食べる?」
はいっと笑顔でスプーンを颯の口の所へと差し出した。
「「「・・・」」」
(天然?)
(天然だろ)
(狙ってるわけじゃなさそうだしな)
「?なに?3人でこそこそ・・・」
「「「あ、いや。なんでもないっす!」」」
「?あ、そう・・・?」
*****
「ふー・・・食った食ったー!」
「・・・颯、お前は食い過ぎ(笑)」
「そろそろ帰ろっか?合コンもあるしねー。」
由紀が携帯を開いて言った。
「そだなー。帰るか。」
と、悠斗が続けた。
そいや、合コンの事詳しく聞いてなかったな。
「ねえ、由紀ー。」
「ん?」
「合コンってどこで?」
「カラオケ。」
「何時から?」
「9時から」
「え、遅くね!?」
と、颯が割り込んできた。
「颯、心配し過ぎ。まぁ、遅いっちゃ遅いんだけどね。」
「・・・」
悠斗は何かを考えるように黙り込んでいた。
「んー、大丈夫なんじゃない?」
「二人共、なんかあったら電話しろよ?すぐ行くから」
「そんな心配することじゃないよー。ね?真由」
「へ?あ、うん」
話しているうちにいつの間にか別れ道に来ていた。
「じゃあ、俺等こっちだから。」
と、悠斗と由紀が手を繋いで帰って行った。
「じゃあ、俺等も帰るか」
と、颯が手を絡めてきた。
「へ?でも、颯・・・電車通じゃないでしょ?」
「送るよ、駅まで。」
「あ、ありがと^^」
「っ・・・。だからそれずるいって・・・。」
颯がぽつりと呟き、唇を落として来た。
そして、あたしもゆっくりと瞼を閉じた。
・・・
颯もあたしも目を開け、顔を赤くした。
「「あはははっ」」
そんな自分達がおかしくて、笑い合った。
-悠斗side-
「・・・。」
琉輝・・・大丈夫かな・・・。
「?悠斗どした?」
「なあ、由紀、今日の合コンさ、琉輝って奴来る?」
「え?あ、うん。らしいね。」
やっぱり琉輝達と・・・か。
「が、どしたの?」
「ん?いや、俺ね、琉輝のいとこなんだ。」
「・・・だから?」
「ははは。」
由紀って時々毒舌だなー。
そうゆうとこも好きなんだけどね。
「で、それがどしたの?」
「颯には内緒ね?」
さすがに、颯にばれちゃ・・・やばいよね。
「うん?」
「真由の元彼って・・・」
「あ、そいえばなんか噂あったね」
「うん。それがな、琉輝なんだよ」
「え。まじ!?今日やばくない?」
やっぱ由紀も同じ考えか。
「・・・でも、なんで別れたの?」
「それが・・・」
・・・・・・・・・
「え?まじ?真由だから小学生の時の・・・」
「そうなんだよ。」
「そっか・・・・。」
「で、由紀に一つお願いが。」
「ん?」
「琉輝に、あの日あったこと教えてくんない?」
俺からは・・・言いにくいもんな。
「え?いいけど・・・悠斗から言った方がいいんじゃない?」
「やー・・・なんか、ほら。言いにくいじゃん?」
「・・・そうだね。分かった。」
・・・
「琉輝は・・・どうするかな。」
俺は、小さくぽつりと呟いた。