第二章
―真由side―
(真由となっているの第四章で分かります。)
「おっはよー☆」
後ろから抱きついてくる一人の可愛い男の子。
「ははっ。颯おはよ^^」
颯は、あたしの彼氏。元気で可愛くて女の子にもてもてだ。
「朝っぱらから暑くるしいっつの。」
「あははは(笑)」
親友の由紀と、由紀の彼氏で颯の親友でもある悠斗。
「なんだよー、いいじゃんかー!」
ほっぺを膨らませ、金髪に近い茶髪の綺麗な髪を揺らしながら颯が言う。
「はいはい、教室行こうね。遅刻するよ?」
この3人と出逢ったのは、中3になったばかりの春。
大人しいからか、
友達も出来ず、いつも一人で本を読んだりしていたあたし。
席替えで颯と席が隣になった時があった。
昼休み校庭で一人本を読んでいたあたしに颯が話しかけてくれた。
「いっつも一人で本読んでるね?寂しくない?」と。
「・・・うん。慣れてるから、大丈夫・・・。」
嘘。本当は、すごくすごく寂しかった。
「ははは。強いんだね真由ちゃん。」
初めて名前で呼ばれた。影が薄いから、名前を知っている人はごくわずか。
なのに颯は知っていてくれた。嬉しかった。
「・・・でもさ、そうゆうの慣れちゃ駄目だと思うよ?我慢しちゃ駄目だよ?」
その瞬間、あたしは泣いていた。
泣いている私を颯は静かに抱き寄せ、頭を撫でてくれた。
颯は小さい頃親が事故に合い母親がなくなったらしい。
颯は、
「人は誰だって、一つは辛い事、悩みがあるもんだよ。」
と、言っていた。
それから、
颯と仲の良い悠斗とも仲良くなり、悠斗の彼女の由紀とも仲良くなった。
あたし達は4人でいる事が自然になった。
そして、一緒の高校に行く事も約束した。
席はあたしの隣が颯、颯の前が由紀、由紀の隣が悠斗となっていた。
授業中はよく4人でこそこそ話したり、4人でさぼってプリクラを撮りに行ったりした。
昼休みはもちろん校庭で4人で弁当を食べ、他愛のない話をしたり。
休みの日は4人で映画を見に行ったり、遊園地に行ったり。
幸せだった。とても楽しかった。
そして、いつしかあたしは、颯を好きになっていた。なんでかは分からない。
自然に好きという気持ちがでてきたんだ。でも、颯はモテる。
可愛らしい整った顔に、綺麗な金髪に近い茶髪、細い足に白い肌、
誰にでも優しい明るい性格、頭も良いし、スポーツも得意だ。
影の薄いあたし、大人しいあたし、暗いあたし、
スタイルは並み、勉強は普通、スポーツは得意じゃないあたし。
颯に釣り合うわけがない。そんなのとっくに分かっていた。
でも、颯に恋してしまったあたし。馬鹿だなーって思う。
もし、あたしが颯に告白して、振られたら4人の関係が気まずくなる。
それが嫌で、この関係を壊したくなくて、崩したくなくて・・・、
自分の気持ちを隠し続け、中学校の卒業式が来てしまった春。
でも、予想もしていなかった事が起きた。
由紀に卒業式が終わったら体育館裏に来てと言われたので、体育館裏へ行った。
話があるなら教室でもいいのにーなんてのんきに思いながら待っていた。
待っているうちにあたしは眠っていた。
そして、
名前を呼ばれ、肩を揺さぶられているのに気づき、重たい瞼を持ち上げた。
目の前にいる人の顔見た瞬間あたしは固まってしまった。
そう、そこにいたのは呼び出した由紀じゃなく、・・・颯だったから。
「あ、起きた。」
「な、なんで颯が?由紀は?」
「んー?あー・・・・・・」
そう言って颯は顔をほのかに赤くして、髪をくしゃっとし、下を向いた。
「へ?」
訳が分からず、思わず間抜けな声を出してしまった。
「っ、だ、からっ、そのっ・・・、好・・・き・・・なん、だよ・・・」
その瞬間颯の顔が真っ赤になった。
「嘘・・・」
あたしは泣いていた。ほんとに嬉しかったんだ。
颯から告白なんて予想もしてなかったから。
「ほんとだよ馬鹿・・・」
そう言って初めて颯があたしに話し掛けてくれた時のように
あたしを抱き寄せ、頭を撫でた。
「付き合って、くれる・・・?」
「はい・・・」
そう言ってあたし達は静かにキスをした・・・。
「・・・ゆ、・・・まゆ!」
「わっ!」
「なに。どしたの?ぼーっとして」
・・・由紀か。
「いや、ちょっと・・・ね(笑)」
「んでさー、今日合コンあるらしいんだけど、人数足んないんだって。真由行かない?」
「へ?ちょ・・・合コンって・・・由紀、悠斗は?」
「なんか人数合わせって言ったら、いいよって。」
いいのか!甘いなー、悠斗は。
「うーん、あたしは別にいいけど、颯に聞かなきゃなー。」
「OK、じゃ行って来ーい!」
ドンッ!
すごい勢いで由紀に突き飛ばされ、颯の胸の中にすっぽりハマってしまった。
「っぶねーな。どした?」
「え、んーっと、んっとね?んとー・・・、ご、合コン、行っても・・・いい?かな・・・」
「は!?駄目!絶対駄目!」
・・・やっぱりそうか。
「いーじゃん、颯。そんなけちけちしないでさ。人数合わせだけだから。」
と、由紀のフォロー。
「うーん・・・。」
「真由が浮気するような奴に見える?」
「見えない!絶対見えない!」
「んじゃ、いいよね。決定。」
由紀すごいなー。
「・・・分かった。人数合わせだけだよ?真由」
「うん。てゆうか、あたし地味だし、話し掛けられる事もないし。」
「「「いや、あるから!絶対あるから!」」」
・・・そんなハモられてもねぇ・・・。
っていうか、
「なんで?」
「・・・自覚ないのかねぇ、この子は。まったく。」
と、由紀が呆れて言う。
「あーあ、全くほんと勿体無いよな。なんでこんな奴(颯)と付き合ってんのかなー。」
と、悠斗が続けて言う。
「こんな奴ってなんだよー!こんな奴ってー!糞悠斗ー!」
と、颯が言い返す。
「おい、一言多いんだよおめーは」
悠斗目がまじだ。痛そう(悠斗が颯の首を絞めている)
「い゛ーた゛ーい゛ー!苦しいー!離せよ悠斗ー!馬鹿ー!」
「ははは。やってるやってる(笑)」
由紀冷静だなー。
(由紀ー、これ止めなくて大丈夫?)
(あー、もうすぐ授業だし。止めるか)
あたしはゆっくり頷いた。由紀は小さく笑い
「はい。おーわり!もうすぐ授業始まるけどさ。どーする?」
「あー?んー、なんか、かったりーよなー・・・。」
悠斗が颯の首を絞めていた手を放しながら言った。
颯は相当苦しかったのか咳をしていた。
「で、どうしますかね。」
「はーいっ!俺なんか甘いもん食いたーい☆」
と、颯が笑った。・・・うー・・・、可愛いなぁ。
「最近、近くに店出来てたよなー?」
「あー、うん。あそこめちゃ美味いらしいよ?」
由紀が珍しく乗ったな。
「んじゃいこーっ☆真由も行くー?」
「うん!行くっ♪」
笑顔で言ってみた。
さぼりたい気分だったからな。たるいし。
・・・
って、ん?なんか悠斗と颯の顔が赤いのは気のせい?
「どうかした?」
「うー・・・もうっ真由可愛すぎー」
と、颯が抱きついてきた。
「「うんうん」」
「へ!?」
ちょ・・・悠斗と由紀まで・・・。
「・・・っていうか!早く教室出ないと先生来ちゃうよ?」
と、由紀が言う。
「よし、じゃー行くか」
と、悠斗が慌てて言う。
「んじゃー、蓮、後はよろしくな!」
蓮は颯の幼馴染み。
席があたしの後ろでたまーに話したりもする。
「あー?どこ行くんだよ、おい」
「さぼるー♪腹減ったからスィーツ食い行くー!」
「んー、了解。あ、真由ちゃんばいばいー」
「あ、うんっ!ばいばいっ☆」
そして、あたし達は鞄を持ち静かに教室を出た。
薄っすらニヤリと笑ってあたしの事を見つめている蓮に気づきもせず、
何か考え込むような冷めた目で蓮を見ている颯にも気づかずに・・・。