第一章
ある夏の夜、輝く星空の下で君と出逢った。
―琉輝side―
「ただいまー。」
・・・
家の中はしーんとしている。
毎日こんな感じだ。
家に帰っても誰もいない。誰も・・・。
親父は俺が産まれてすぐ死んだ。
おふくろは夜中にならないと帰ってこない。
毎日違う男と酒を飲んでいる。
誰もいない家が寂しくて、
俺はよく家を飛び出し、星空の見える河原へ来ていた。
ここに居れば寂しくないから。親父がいるって思えたから。
そして、小6の夏
おふくろがストレスや、お酒の飲みすぎで倒れ、病院へ運ばれた。
「琉・・・輝・・・ごめ、ん・・・い、つも・・・一人に・・・して・・・ご、めん・・・ね・・・」
そう言って、一粒の涙を流し永遠の眠りについた。
葬式の日、
俺はおふくろが死んだ事を信じたくなくて、死んだと思いたくなくて、
星空の見える河原へ走った。思い切り走った。・・・涙を堪えながら。
河原へつくと一人の女の子が座っていた。
俺は、女の子に話しかけてみた。
「なにしてるの?」と。
そして、俺は顔を覗いてみた。俺は固まってしまった。
・・・そう、その女の子が泣いていたから・・・。
「お母さんとねお父さんがね、喧嘩しちゃって・・・家、飛び出してきたの。離婚するかもしれないんだって・・・」
俺は、何故か無意識にその子の頭を撫でていた。
女の子は驚いて、泣きやみ、可愛らしい笑顔で笑った。
「名前は?」
「橋本由真」
「俺は星野琉輝」
「何歳?由真は12歳」
「一緒」
「一緒かー、・・・で、あの・・・さ、貴方は・・・どうしてここに来たの・・・?」
その言葉を聞いた瞬間、一粒の涙が零れた。でも俺はぐっと我慢した。
それを見た女の子は、何も聞かず
「あ、ご、ごめん。でも思いっきり泣いていいんだよ?我慢しなくていいから、由真が傍に居るから。」
そう言って手を握ってくれた。その瞬間涙出てきて、止まらなくなった。
その夜は俺も信じれないくらい思い切り泣いた。
手に由真のぬくもりを感じながら・・・。
それから俺達は、星空の見える河原へ来て他愛のない話をしていた。
それで、お互い心の傷が癒えるような気がしたから。
寂しい夜、嫌な事があった夜は手を繋いで心を落ち着かせた。
時には泣いたりもした。
それから、中学生になりお互いを意識し始め付き合う事になった。
学校は違うけど。家は遠いけど。毎日会えるわけじゃないけど。
同じ空の下にいると思えば、空を見上げれば寂しくはなかった。
・・・心で繋がっているような気がしたから。
幸せだった。本当に幸せだった。
由真は俺が居れば、俺は由真が居ればそれでいい。
もう誰もいらない。
由真は俺を受け入れ、俺は由真を受け入れる。
もう誰も受け入れない。
由真は俺を愛し、俺は由真を愛す。
もう誰も愛さない。
由真は俺を信じ、俺は由真を信じる。
もう誰も信じない。
そんな存在になっていった。
お互い傷ついた過去があったから。
もう傷つきたくなかったから。もう、傷つかないために約束した。
傷つくのが怖かっただけかもしれない。
でも、これが俺達にとって一番楽な方法だったから。
お互いをお互いで守り続けたんだ。
でも、
そんな幸せな生活が続くはずもなく、悲劇が起きたのは中2のある夜の事。
いつも通り、河原へ来ていた俺。
いつもの場所に座り、いつも通り由真が来るのを待っていた。
いつも通りじゃなかったのは、由真が来る時間。
いつもは9時に来るのに来ない。遅くても10時には来るのに。
時計を見ると、針はもう11時を指していた。
嫌な予感がした。携帯に電話しても出ない。
何度電話しても・・・。何度コールを鳴らしても・・・。
12時まで待っていたが、由真は・・・来なかった・・・。
次の日も、その次の日も、1週間後も、1ヵ月後も、1年後・・・も・・・。
由真がこなくなった中2の夜から2年が経ち、俺は高1になっていた。
この2年間、一瞬でも由真を忘れた事はない。約束はきちんと守っている。
でも、高2になったのある日
「合コン来てくれ!お願い!がちでお願いします!」
と、言われた。
「やだ。」
「お前が来るっていう約束で○○○高の合コンお願いしたんだよ!お願い!」
は。
ってか、
「なんで俺なんだよ」
「お前かっこいいからさ、人気なんだよ!お願い!」
「は。意味分かんねー。」
「お願い!お願いだーかーらー!」
「・・・・・・・・・あー!もう!分かったよ!」
・・・暇ってのもあったし、
別に行くくらいは、話を聞くくらいはいいかなって感じの
軽い気持ちで・・・本当にそんな軽い気持ちで行く事にした。