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届かぬ恋②~儚い恋物語

国立大医科大学院生は双子の兄弟。


兄はトレンディドラマの主役俳優として人気絶頂。


弟は大学院生として医学の研究に没頭し今まさに日本医学会を代表する論文を発表しようかと前途洋々たる将来があった。

学園医学部附属病院と内科研修医契約を結んでいる医科大学院生。


かわいい白衣の天使と若き医師として内科外来では仲良く診察をするはずではあった。


週一ぐらいなら時間が取れると思った大学院生ではある。


ところが…


本業の院生としての修士論文。研究者としての集大成をまとめて書き上げる段階に至っていた。


院での研究課題が医学部教授陣に認められる。指導教授からは多大な期待が寄せられていく。


準備段階では山のものとも海のものとも言えぬ手探りな研究課題。


それが今や日本医師会で発表され最先端医療の端緒となるのではないかと高く評価され出していた。


研究の成果。修士論文は先例のないような最新医療の分野に視点を置いてある。

これから本格的な医学研究がしたいとならばアメリカ医学であった。


修士を逐えてアメリカ医科大学院生に留学する芽がありそうである。


指導教授の言葉を借りれば鋭き切り口で医学の既成概念を(くつがえ)しかねない。


斬新で従来の日本医学では替えがたい代物であれ。


教授会はともかく


日本医学会では論文の完成を待たれるところである。

「よおしっ!もうひとふんばりしたら論文のアウトラインだけは完成する」


研究課題の貴重なデータはすべて出揃い課題の結論までしっかりと把握できる自信があった。


「あとは時間が欲しいところかな」


指導教授から直々に論文の手助け(アシスト)を医学部のスタッフ全員で惜しまないと言われている。


「嬉しいですね。(学部の)医学生や院生まで。大学の附属病院スタッフまで尽力してもらえるなんて」


大学一体となって明日の医学を後押しする。


まさに今にも孵化するかの若き医学者をバックアップである。


大学医学部も大学院修士の成績も常にトップクラスの優秀な頭脳である。


必然的に教授からの期待値はあがってしまう。


大学院の研究室や附属病院は論文作成のため全面協力体制にある。


「教授からは研究所を大学を好きなように使いなさいと言われている」


手一杯にデータを収集してみる。


より完璧な学術的論文に仕上げあげたい。


ときに…


研究に医科大学院生として没頭するはよいが


「睡眠時間を削ってパソコンの前にいるからな」


自宅の医院に帰ることもままならぬことになる。


「研究に熱中のあまり…」

ハタッと気がつけば


人並みな衣食住の生活から程遠くなっていた。


風呂は研究所のシャワーで済ませばよい。


問題はちゃんとした食事も摂らずじまい。見事な栄養失調である。


「目が霞む。ずっとパソコンとにらめっこだから肩が凝る」


ビタミン不足は野菜を食べていないこと。


眠気覚ましのカフェイン(コーヒーと紅茶)の過剰摂取。


医者が医者として自己管理の健康を維持できないのは笑われてしまう。 


「学食にいけばその無駄な時間(アイドリングタイム)がもったいない」


分刻みとなるば売れっ子タレント並みであった。


一方学園では…


「困りましたなあっ」


学園附属病院の財務人事課であった。


国立大からの医科大学院生派遣は契約書を取り交わしている。


学生が多忙となったから内科外来は欠員では困るのである。


「こればかりは弱ります。かといって学園から天下の国立大に苦情を申しつけることなど」


大学組織の力関係からして御法度である。


「ひとまずは学園から頭をさげてみましょう」


医科大学院生の派遣がダメだとならば


違う医師でもよろしい


大学自体が優秀なことだからどなたでも結構だと頼みたい。


「わかりました。ではさっそく人選をいたしましょう」


リーンリーン


内科外来のPHS(内線)が鳴る。


「うん!誰から?あらっ嫌だっ」


学園の管理職からのPHSは呼び出しの点滅が異なっていた。


「こちらは人事課です。内科外来担当ですね」


内線を受けた白衣のナースは身構えた。この手の呼び出しはろくなことがないのである。


「君に頼みたいんだね。引き受けてくれるかい」


人事課長の事務的な声を聞いたナース。やにわににっこりとしてしまう。


「国立大へ行ってくれないか」


憧れのドクターに逢える。

「私らの方も医師派遣について尽力する」


あの医科大学院生の気持ちが大切なんだ。


「聞けば優秀なドクターらしい。ならばわが学園の附属病院に是非とも続けて来てもらえたら」


若くて可愛い白衣のナースが迎えにいけば


「多少なりとも効果があるのでは」


大学院生だって男だもの


「魅力的なナースに(なび)かないかなあ」


恋物語を理由に引き留め工作をしたい。


国立大への使者が決まった白衣のナース。


さっそくおめかしをして憧れのドクターと交渉である。


「先生は研究者が本業なんだもん。私のいる内科外来は臨床医学。あまり興味がないんだろうなあ」


このまま学園と縁切りとなりそうな予感である。


ナースは18歳の女の子である。


精一杯にお洒落をしたい。

かわいいフリルのワンピースを選んだ。


「ちょっと子供っぽいかしら」


姿見に全身を映してみる。

「ワンピースの丈は大丈夫かな。短めだと真面目な先生に怒られちゃいます」


チラッ


裾を捲ってみた


純白の清純さがあった。


「さあって。頑張っていきましょう」


憧れのドクターに


診察室で優しく抱きしめてもらった温もりを思い出します。


大学の研究室。


リーンリーン


「先生っお忙しいところ。大学本部に面会人が待っております」


来客の氏名を聞きビックリする。


「面会って…」


脳裡にパアッ~とカワイコチャンのナースが浮かんでしまう。


今は実験データ待ち(一日)である。


少しぐらいパソコンや研究室を離れても支障は出ないはずである。


「面会の方は本部ですね。私がそちらに出向きます」

実験データ警報装置を携帯で2~3回確認して研究室を出る。


「今の時間なら…」


ナースとゆっくりレストランのビュッフェで軽食がいただけそうだ。


研究所から本部まで広いキャンパスで数分掛かる。


ナースが医科大学院生に来客であると思えば…


「なんとなくソワソワしてしまうぞ」


然るべきかなっ早足である。


本部の女子事務員にチラッとからかわれもする。


「あらっ先生っ。お安くありませんねぇ」


ドクターの"彼女さん"ですか?


可愛いらしいですね


キュートなお嬢様ですこと

ガールフレンドかしら


「お待ちかねの(姫さまは)応接室にいらっしゃいます」


何か冷たいドリンクを差し上げましょうか。


「彼女?いえいえっ。そんな関係ではありませんよ」

そんな関係では…


素直に…


女の子は"附属病院のナース"と言えないのである。

「お待たせしました。僕が忙しくなって」


学園の内科外来に行けなくなってしまいました。


「ごめんなさい。研究が立て込みまして」


白衣のナースがワンピースという私服姿でそこにある。


応接室にチョコンといる女の子


なんともチャーミングではないか!


にっこり笑う横顔などキュートで愛らしく


タレント顔負けである


"驚いた!診察室のナースが。この女の子なのか?"

女子事務員が彼女だっガールフレンドだっと騒ぐも道理である。


ナースは気がつき挨拶をする。


「先生っお久しぶりでございます。研究が忙しいんですね」


女子事務員から取り掛かる研究の進捗(しんちょく)をチラッと聞かされていた。

「そうですね。研究が本業なので」


ひらひらとワンピースがかわいらしい。


「応接室では落ち着きませんから」


ナースを誘って医学部構内(キャンパス)を散策したい。


「学園の日本庭園と比べたら。見劣りして殺風景な大学なんだけどね。案内しますよ」 


ナースは小躍りして喜んだ。


憧れのドクターとふたりだけの世界が持てるとは


「ナースさんが来られた理由はたぶん…」


言わなくてもわかってます。


「ええっ…」


背の高いドクターに1歩下がってナースは歩く。


「先生にはいろいろと学園から無理を言ってしまいました」


大学院生として研究に没頭するのが筋である。私立の学園の内科外来に研修医として出向いても医学的なメリットはない。


「この研究論文が一段落着いたら」


研究論文は日本医学学会に提唱され絶讚される。


(研究内容は幾つかの大学に与えられており競争心を煽られもした)


学会に発表する


これで一段落ではなく


日本での第一人者となるわけで忙しい身となり大学に残って(教授への道)を歩むのである。


ナースが話を聞けば聞くほど


"先生は私達ナースとは住む世界が違う"


外来に勤務するナース


研究者たる院生ドクター


『理想と現実』を見せつけられる。


ナースのかわいらしいフリルつきワンピース


憧れのドクターのために選んである。


白衣ナースよりは魅力的であった。


「もう学園には…」


内科外来の甘い診察室


ハンサムなドクター


かわいらしいナース


テレビドラマのごとく


ナース憧れのドクター


ハッと気がついたら


ナースなどとても手の届かない


世界で活躍する医師の卵


医学権威のある研究者であった。


ナースはだんだんと悲しい気持ち打ち沈む。


キャンパスをめぐりキャフェテリアに案内をする。


「こちらの大学はこんなカフェしかなくて」


豪勢な学園のラウンジと比較にならない。


「外来診察室のナースさんと会えなくなるくらいに忙しくなってしまって」


申し訳ない。


医科大学生は研究所にいないと実験データが集積されてしまう。


「1日で山のように膨大に集まってしまいますから。休めなくて」


やがてナースの前に軽食とドリンクが置かれる。


「この2~3日は特に。寝ても覚めても」


研究所には缶詰め状態でろくに睡眠も食事も…


チラッとナースは顔色を覗いてみる。


穏やかな顔つきは顔つきでもあるが


「先生っそれはいけませんわっ」


気のせいか目の下あたり隈ができているように思えた。


内科担当の経験から胃腸あたりに障害かなっとは思う。


「睡眠不足ですか」


研究室でも教授や准(助)教授ならば秘書や医学助手がつき細かいデータ管理を手伝ってはくれる。


「いかんせん(大学院生は)学生の身分ですから」


秘書をつけるなんて夢にも思わず。


「たいへんですわね」


せめて身の回りの"世話人"ぐらいついていたら


「食事や着替えの用意ぐらい気楽にしたいね」


ぽつりぽつり


不平を不満を


ナースにぶちまける。


医院のお手伝いさんもいらっしゃるがいつもいつも大学に来てくれるわけではない。


ナースとしては憧れの医科大学院生の話しを聞き学園に戻る。


人事課はなるほどっ!


手を叩いて喜んだ。


「国立大から医師派遣はダメという通達があったんだ。君が出掛ける前にね」


学園とのコネクションを保ちたい本部や人事課は思案に苦しんでいた。


「君っ!内科外来勤務は外れてくれたまえ」


大学に問い合わせてあげる。


「研究室の私設秘書兼ナースで国立大へ派遣してあげよう」

白衣のナースの憧れは医科大学院生である。


「附属病院内科外来診察室は甘いムードだわ」


年輩のナースにからかわれるほど日増しに恋心は増してしまう。


研究が忙しく外来診察には当分来られないと知るナース。


「(診察室で逢えなくても)先生のそばにいたいなあ」

切ないほどの乙女心は身分の違う医師に届くであろうか。


「私っナースを辞めても先生と一緒にいたい」


我が儘な女の子に成り下がるか白衣のナース 

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