海という資源
潮の匂いが、村に届いていた。
俺は丘の上から、西の海を見下ろしていた。
――ここが、次の戦場だ。
◆漁業プロジェクト始動
視界に、UIが展開される。
【プロジェクト進行状況】
名称:漁業開発
進捗:0%
必要条件:
・漁師の確保
・港湾設備(簡易)
・資金:中
期待効果:
・食料供給+
・収入源追加
・人口増加率+
「港がないのか……」
セリーナが横で言う。
「はい。
この村の人間は、ほとんど海を利用していません」
「理由は?」
「危険だからです」
その言葉の直後。
砂浜の方から、怒鳴り声が聞こえた。
◆既存勢力の登場
「勝手なことをするな!」
海辺にいたのは、数人の男たち。
日に焼けた肌。
荒々しい眼差し。
明らかに、“漁師”だ。
先頭に立つ男が叫ぶ。
「この海は俺たちの縄張りだ!」
セリーナが小声で言う。
「……この地域の漁師ギルドです」
ギルド?
俺は眉をひそめた。
(この世界にもあるのか……)
男が俺を睨みつける。
「坊ちゃん。
貴族だからって、海に手を出すな」
◆交渉フェーズ
俺の視界に、新しいUIが開いた。
【イベント発生】
「漁師ギルドとの交渉」
選択肢:
A:強制命令(貴族権限)
B:金で解決(補助金)
C:利益分配(契約)
D:撤退
成功率:
A:高(満足度-大)
B:中(財政-中)
C:低(満足度+大)
D:確実(成長停止)
(……完全にゲームじゃねえか)
だが、現実だ。
俺は迷わなかった。
「Cだ」
◆利益分配という選択
俺は一歩前に出た。
「奪うつもりはない」
漁師たちがざわつく。
「じゃあ、何のつもりだ?」
「一緒にやる」
男が眉をひそめる。
「……意味がわからん」
俺は続けた。
「港を作る。
設備を整える。
その代わり、収益を分ける」
「……分ける?」
「そうだ」
俺は言い切った。
「お前らは漁をする。
俺は町を大きくする。
結果的に、魚はもっと売れる」
漁師たちは互いに顔を見合わせた。
◆ヒロインの一言
その時、アリアが一歩前に出た。
「……それは、合理的です」
漁師たちが彼女を見る。
「港ができれば、魚の価値は上がります。
今まで捨てていた魚も、商品になる」
俺は驚いた。
(説明、俺よりうまくね?)
漁師のリーダーが腕を組む。
「嬢ちゃん……何者だ?」
「ただの、貴族の娘です」
だが、その目は違った。
計算している目だった。
◆契約成立
沈黙の後、男は言った。
「……わかった」
「本当か?」
「ただし条件がある」
「何だ?」
「俺たちを“使い捨て”にするな」
俺は即答した。
「しない」
男は笑った。
「なら、やってみろ」
◆システム更新
その瞬間、UIが爆発的に展開された。
【契約成立】
勢力:漁師ギルド
関係値:中立 → 協力
新産業解放:漁業Lv1
都市ランク:村 → 発展村
効果:
・食料供給+20%
・財政+
・治安+
・満足度+10
俺は息を呑んだ。
(ランク、上がった……)
セリーナが微笑む。
「レオン様。
これは……歴史的瞬間です」
「大げさだな」
「いえ。
この領地が、初めて“外部勢力と契約”したのです」
◆兄の影
その夜。
領主館の廊下で、アルベルト兄が待っていた。
「聞いたぞ、レオン」
「何を?」
「漁師と契約したそうじゃないか」
俺は頷く。
「問題でも?」
兄は笑った。
「問題だらけだ」
「……」
「貴族が、平民と対等に利益を分ける?
そんな前例はない」
俺は答えた。
「だから、やる」
アルベルトの目が鋭くなる。
「お前は……危険な思想を持っている」
俺は理解した。
(領地経営の敵は、経済だけじゃない)
“貴族社会”そのものだ。
◆次のフェーズ
自室に戻った俺の視界に、新しいウィンドウが浮かぶ。
【都市フェーズ解放】
・市場建設
・商人誘致
・交易ルート設定
俺は笑った。
「……もう止まれないな」
こうして、俺の領地は、
単なる辺境から“経済圏”へ進化し始めた。
そして同時に――
貴族社会との衝突も、不可避になっていく。




