初めての政策
朝。
俺の視界に、いつもより多くのウィンドウが浮かんでいた。
【領地ステータス更新】
人口:100 → 112人(+12)
住居:不足 → 改善
満足度:48% → 56%
財政:赤字 → 微赤字
イベント:移住者発生
「……増えてる」
思わず声が出た。
セリーナが驚いた顔でこちらを見る。
「何か問題でも?」
「いや、むしろ逆」
俺は内心、震えていた。
(本当に、シムシティだ……)
◆移住者というイベント
村の入口に、見慣れない人影が集まっていた。
「ここが……アルヴァレス領か?」
旅装の男が言う。
「仕事があるって聞いたんだが」
その後ろには、家族連れや若者たち。
俺はUIを確認する。
【移住者】
職業候補:農民、木工職人、商人
期待値:中
要求条件:食料、住居、治安
(なるほど……)
家を建てたことで、“移住フラグ”が立ったらしい。
セリーナが小声で言う。
「普通、辺境に人が来ることなど……ほとんどありません」
「でも、来た」
俺は答えた。
「なら、受け入れる」
◆税率という選択
その夜。
俺は自室でUIを開いていた。
【政策メニュー】
税率:10%(標準)
治安投資:低
公共事業:低
福祉:なし
(ここからが本番だ)
シムシティの経験が脳裏によみがえる。
税率を上げれば収入は増える。
だが満足度は下がる。
逆に下げれば、人口は増えるが財政が苦しくなる。
俺は一瞬迷った。
「……賭けるか」
【税率変更】
10% → 7%
予測効果:
・満足度+8
・人口増加率上昇
・短期収入減少
決定。
その瞬間、UIが光った。
【政策実行】
「減税政策」
◆周囲の反応
翌日。
村はざわついていた。
「税が下がったって本当か?」
「貴族が、そんなことするのか?」
村人たちの目は、疑念と期待が入り混じっている。
ガルドが俺に言った。
「坊ちゃん……損をするんじゃないですかい?」
「短期的にはな」
俺は笑った。
「でも、長期的には得する」
「……難しい話ですな」
「簡単だよ」
俺は言った。
「人が増えれば、金も増える」
◆ヒロインの視点
夕方。
アリアが俺に近づいてきた。
「レオン様、なぜ税を下げたのですか?」
「普通は上げると思った?」
「……はい」
俺は少し考えてから言った。
「もし君が領主だったら、どうする?」
アリアは驚いた顔をした。
「わ、私が……?」
少し考えたあと、彼女は言った。
「……たぶん、同じことをしたと思います」
俺は目を見開いた。
「理由は?」
「人が増えない町は、必ず衰退するから」
その言葉を聞いた瞬間、俺は確信した。
(やっぱり、この子……)
だが、まだ言わない。
◆システムの警告
その夜。
UIに赤い通知が浮かんだ。
【警告】
財政悪化リスク:中
原因:減税+公共事業不足
推奨対策:産業拡張
(来たか……)
セリーナが静かに言う。
「レオン様。
正直に申し上げますと……」
「金が足りない?」
「はい」
俺は笑った。
「わかってる」
そして、UIを開いた。
【産業ツリー解放】
・漁業Lv1(条件:海)
・製材業Lv1(条件:木材)
・交易所Lv1(条件:街道)
俺は迷わず選んだ。
「次は――海だ」
画面が光る。
【新規プロジェクト開始】
「漁業開発」
こうして、俺の領地は、
ただの村から“都市”へ向かう歯車を回し始めた。
だが、まだ俺は知らなかった。
この選択が、
やがて“貴族社会”を揺るがす事件に繋がることを。




