最初の建設
村に、いつもと違う音が響いた。
――ギィ、ギィ……。
古びた斧が木に食い込む音。
それは、この村では珍しい“計画的な労働”の音だった。
「本当にやるんですね……」
村の入口で、セリーナが呟いた。
「やるって言っただろ」
俺は腕を組んで答える。
目の前では、村人たちが集められ、伐採作業を始めていた。
これが――
俺の領地経営、最初の一歩。
◆村人たちの不安
「坊ちゃん、本当に木を切って大丈夫なんですかい?」
村の長老格の男、ガルドが不安そうに言う。
「森は、村の命綱ですぜ」
「わかってる」
俺は頷いた。
「だから、必要な分だけだ」
俺の視界にUIが浮かぶ。
【伐採可能量】
安全範囲:〇
森林資源:豊富
環境影響:低
(ゲームみたいだけど、現実だ)
だが、村人たちには見えない。
だからこそ、俺が責任を負う。
「木材が増えれば、家が建てられる。
家が増えれば、人が増える」
「人が増えて……どうなるんです?」
若い村人が聞く。
「村が、町になる」
その言葉に、村人たちはざわめいた。
誰も、本気でそんな未来を考えたことがなかったからだ。
◆最初の建設命令
昼過ぎ。
切り出された木材が積み上げられた。
俺はUIを操作する。
【建設開始】
・木造住宅×3
建設時間:3日
満足度上昇予測:+5
人口増加可能性:上昇
すると、不思議な現象が起こった。
大工でもない村人たちの手が、自然と動き始める。
「……なんだ、これ?」
「身体が、勝手に……」
木材が組み上がっていく。
釘も、設計図もないのに。
まるで“見えない設計者”がいるかのように。
セリーナが小声で言った。
「まるで……魔法みたいですね」
俺は黙っていた。
正確には、魔法じゃない。
“システム”だ。
◆ヒロインの気づき
アリアは、その光景をじっと見つめていた。
「……不思議ですね」
「何が?」
俺が聞くと、彼女は少し躊躇ってから言った。
「この感じ……どこかで見たことがあるような……」
俺の背中に冷たい汗が流れる。
(まさか……)
だが、アリアはそれ以上言わなかった。
「気のせい、でしょうか」
そう言って、微笑んだ。
◆兄の視線
その時、背後から声がした。
「随分と騒がしいな、レオン」
振り返ると、そこにいたのは長兄――アルベルト。
伯爵家の跡継ぎ候補。
貴族らしい威圧感を持つ青年。
「何をしている?」
「村の発展の準備」
俺は答えた。
アルベルトは鼻で笑う。
「発展?
この辺境で?」
「やらなきゃ、二年後に終わる」
一瞬、兄の目が細くなった。
「……面白い」
彼はそう言い残して去っていった。
その背中を見ながら、俺は理解した。
(敵は、外だけじゃない)
◆建設の意味
夕方。
建設中の家を見ながら、俺は呟いた。
「たった三軒の家……」
前世なら、笑われる規模だ。
だが、この村にとっては革命だった。
セリーナが静かに言う。
「レオン様。
この村は、今まで“変わらないこと”が普通でした」
「……」
「ですが今日、初めて“変わる”という選択をしました」
俺は家の骨組みを見つめた。
これが、俺の選択。
そして――
この領地の運命を変える最初の建物。
その時、UIに新しい通知が浮かんだ。
【イベント発生】
「人口増加フラグ:ON」
俺は小さく笑った。
「……面白くなってきた」
こうして、辺境の村は、静かに動き始めた。




