表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

第六章:決戦の舞台(二)


 会場を包み込む拍手は、彰人の耳には遠く、どこか非現実的な響きを持っていた。


 スクリーンに映し出された最高賞の文字が、眩暈がするほど白く輝いている。

 彰人は隣に立つ紬の、熱を持った小さな掌を、壊れ物を扱うように握りしめた。


「……瀬戸さん。届いたんですね。私たちの、本当の気持ちが」


 紬の瞳から溢れた涙が、ホールの照明を反射してダイヤモンドのように散った。


「ああ。……君がいなければ、俺は、あの闇に飲み込まれていたよ」


 彰人の声もまた、隠しきれない震えを伴っていた。

 だが、その至福の時間を引き裂くように、椅子の脚が床を擦る鋭い音が響く。


 審査員席から立ち上がった正蔵の顔には、もはや理性的な父親の面影はなかった。

 敗北の屈辱に染まったその瞳は、濁った炎を宿し、真っ直ぐに娘を射抜く。


「……茶番は終わりだ。紬、今すぐその男から離れてこちらへ来い」


 正蔵の声は低く、地を這うような冷徹さを持ってホール全体を凍りつかせた。


「嫌です、お父様。……私はもう、あなたの引いた線の中には戻りません」


 紬は彰人の車椅子の横に立ち、細い肩を震わせながらも、凛として言い放った。


「思い上がるな。誰のおかげで不自由なく生きてこれたと思っている」


「……あなたは、私を生かしてくれたかもしれません。でも、心を殺したのはあなたです」


 紬の言葉は、正蔵が長年築き上げてきた「完璧な家族」という偶像を打ち砕いた。

 激昂した正蔵は、傍らに控えていた黒服の男たちに、短く顎で合図を送る。


「連れて行け。……力ずくでも構わん。それが、この子の教育のためだ」


 男たちが、獲物を追い詰める獣のような足取りで、ステージへと迫る。

 会場の招待客たちは、その異常な光景に息を呑み、静まり返った。


「……させない。俺が、彼女の盾になると言ったはずだ」


 彰人は車椅子のブレーキを弾くように解除し、男たちの前に立ちはだかった。

 動かないはずの足に力がこもるような錯覚さえ覚えるほどの、凄まじい気迫。


「不具者の分際で、何ができる。……お前はただ、彼女を泥沼に引き摺り込むだけだ」


 正蔵の罵倒を浴びながら、彰人は静かに、けれど揺るぎない眼差しで彼を見据えた。


「俺は、彼女を泥沼から救いに来たんじゃない。……共に、歩きに来たんだ」


「影の中を、車輪を回して、色彩を探しながら。……二人で、生きていくために」


 彰人の言葉に、会場の空気は再び一変した。

 それは単なる恋愛の告白ではなく、不条理な世界に対する、二人の魂の宣戦布告だった。


 正蔵は拳を握りしめ、言葉を失ったまま、震える二人を見つめることしかできなかった。

 彼がどれほど力を振るおうとも、二人の間に流れる絆の温度までは奪えなかったのだ。


 ホールを去る間際、彰人は静かに、けれど確かな勝利を確信しながら扉へと向かった。

 外は、いつの間にか雪が降り始めていた。



この作品はAI40%、筆者60%で書きました。

原案100%筆者。

指摘や感想とか頂ければ励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ