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第六章:決戦の舞台


 都心の高層ビル内にあるホールは、冷徹なまでの静謐に包まれていた。


 彰人は、プレスされたシャツの襟元を一度だけ正し、車椅子のハンドリムを握った。

 膝の上には、紬と共に磨き上げた渾身のデザイン案が眠っている。


 会場の最前列には、審査員として鎮座する正蔵の姿があった。

 彼は彰人と目が合っても、眉一つ動かさず、ただ時計を気にする素振りを見せる。


「……瀬戸さん、大丈夫です。私、ここで見ていますから」


 会場の隅で控えていた紬が、声に出さず唇の動きだけで彰人に伝えた。

 

 プレゼンテーションが始まり、ライバルたちの華やかな作品が次々と紹介される。

 誰もが「利便性」や「明るい未来」を謳い、会場からは感嘆の声が漏れていた。

 

 ついに、彰人の番が回ってきた。

 彼がステージ中央へ進み出ると、会場に微かなざわめきが広がる。

 車椅子のデザイナーという存在が、好奇の目に晒されているのを感じた。


「……私の提案するデザインのテーマは、『轍の色彩』です」


 彰人の声は、広いホールに静かだが力強く響き渡った。

 巨大なスクリーンに、あの深夜に完成させたモノクロームのデザインが映し出される。


「世界は常に、欠落のない完璧な光を求めています」


「しかし、傷つき、影の中を歩む者にしか見えない輝きが、確かに存在するのです」


 スクリーンの中で、銀色の車輪が描く軌跡が、淡い虹色に発光し始めた。

 

 会場のざわめきが止まり、審査員たちが身を乗り出す。

 だが、その静寂を切り裂くように、正蔵が冷ややかな声を上げた。


「……美しい理屈だが、瀬戸くん。君のこのデータ、重大な欠陥があるようだ」


 正蔵の手元のタブレットが操作され、スクリーンに別の図面が表示される。

 そこには、彰人のデザインの構造的な不備を示す赤字が、無数に書き込まれていた。


「構造計算がデタラメだ。……こんなものは、ただの夢想家の落書きに過ぎない」


 会場に冷ややかな空気が流れ、周囲の視線が「同情」から「軽蔑」へと変わっていく。

 彰人は息を呑んだ。……提出した最終データが、何者かによって書き換えられている。


「……これは、俺が提出したものではありません」


「往苦しい。……君の能力不足が、娘を惑わし、この神聖な審査を汚したのだ」


 正蔵の言葉は、まるで審判のように重く、彰人の誇りを踏みにじろうとした。


 絶体絶命の窮地。

 彰人の指先が震え、視界が白く染まりそうになったその時だった。


「……いいえ、それは違います!」


 会場の最後方から、凛とした、けれど震える声が響き渡った。


騒然とする会場の視線が、一斉に後方の扉へと向けられた。


 そこには、呼吸を乱しながらも真っ直ぐに前を見つめる、紬の姿があった。

 係員の制止をすり抜け、彼女は長い通路を全力で駆け抜けてくる。


「……紬、何の真似だ。控えなさい」


 正蔵の怒声がホールに響き渡るが、彼女は立ち止まらなかった。


「お父様、嘘をついているのは瀬戸さんではありません」


 紬は彰人の隣まで辿り着くと、手にしたタブレットを震える手で掲げた。


「瀬戸さんのPCから送信されたログを、私はずっと見ていました」


「そこに映っている数値は、誰かが後から書き換えた偽物です!」


 会場にさらなる動揺が広がり、審査員たちが顔を見合わせる。

 彰人は、隣に立つ彼女の肩が激しく震えているのに気づき、そっとその手を握った。


「羽鳥さん……どうして、そんなものを」


「瀬戸さんが寝ないで頑張っていたのを、私は一番近くで見ていたから……」


 紬は涙を堪えながら、彰人の端末と同期していたバックアップデータを操作した。

 スクリーンに、正真正銘、彰人が完成させた完璧な設計図が上書きされる。


「見てください。……これが、瀬戸さんが魂を削って描いた、本当の轍です」


 完璧な構造計算。そして、影の中から湧き上がるような、圧倒的な色彩の調和。

 正蔵が提示した「欠陥」が、何者かによる捏造であったことが白日の下に晒された。


「……馬鹿な。そんなはずは」


 正蔵の顔から余裕が消え、隠しきれない動揺がその表情を歪ませる。


 彰人は、彼女が繋いでくれたこの一瞬のチャンスを、逃さなかった。

 彼は再びマイクを握り、正蔵を、そして会場の全ての人々を射貫くように見据えた。


「羽鳥さん……いいえ、審査員の皆様」


「このデザインは、私一人で作ったものではありません」


「光の美しさを教えてくれた彼女と、二人で掴み取った『答え』なんです」


 会場を支配していた冷ややかな空気は、今や熱を帯びた感動へと塗り替えられていく。

 

 正蔵は椅子に深く沈み込み、言葉を失ったまま、目の前の光景を凝視していた。

 かつて彼が「欠陥品」と切り捨てた娘と、車椅子の男。

 その二人が、彼の築き上げた完璧な論理を、今、鮮やかに打ち砕いたのだ。



この作品はAI40%、筆者60%で書きました。

原案100%筆者。

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