表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語る。  作者: 桃巴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/18

物語る。4

バッシャーン


リリアナはずぶ濡れである。


「いい気味。新入りが第一師団入りなんて」


寄宿舎を出て、第九師団塔の横を歩いていたリリアナは塔を見上げた。そこにいたのは、数人の女性魔術師。

空になった桶を持って笑っている。


「野生の魔女なんて、由緒あるクランツの魔術師団に相応しくないわ」


リリアナは女の敵は女だって言っていた師匠の言葉を思い出していた。


「お山に帰りなさいな」


クスクスクスクスと笑っている。


リリアナは、アホらしと思いながら、乾燥魔法を使った。

瞬時に元通りである。


女性魔術師たちがリリアナを睨みつけた。

第九師団、つまり、力のレベルが低い師団である。

第十師団は、候補生の魔術師団だから、実質第九師団がレベル最下位である。

リリアナが瞬時に乾燥魔法をしたことが悔しいのだろう。


「目が覚めた。ありがとう」


リリアナはフッと鼻で笑って、その場を後にする。

キーッという悲鳴が耳障りだった。


で、ルキオのいる第一師団塔へ入る。


「おい、さっさと魔法薬を調合しろ」


リリアナは、うんざりした。

入った瞬間に言われたら、そりゃあそうだろう。


「材料は? 調合室は? まさか、塔の出入口でやらせるの?」

「チッ、こっちだ。……塔を案内する」


「良かった。普通の思考回路が働いて」

「その減らず口が開かないようにもできるぞ」


「わあお、そりゃラッキー。調合説明しなくていいんだ。そうだよね、目で見て盗めっていうし」


そこで、リリアナはルキオにニヤッと笑ってみせた。


「弟子は師匠の技を(目で見て盗め)ってね」


ルキオのこめかみに青筋が浮かんだのは言うまでもない。

だが、昨日の今日で魔力を放出させるわけにもいかず、ルキオもリリアナに対抗する。


「見ればわかる」


フフンってな感じでルキオが返した。

つまり、今日も今日とて、ルキオとリリアナはやり合っているわけ。


「塔は五階建て地下二階。屋上には魔法陣が展開されている」


あえて、なんの魔法陣かルキオは言わなかった。


「各階に三部屋ずつ」


リリアナはルキオについていく。


「ここ一階は、応接室と団員詰所に、キッチンだ」


部屋の扉をルキオが開け放つ。

昨日やり合ったのは、応接室。

リリアナは、団員詰所を覗く。


「……団員いないんだよね?」


そう、第一師団は、唯我独尊のルキオだけだから。


「ああ、いない」

「じゃあ、これって……」


リリアナはルキオを窺った。

団員詰所内の異様な光景を、ルキオに視線で問うたのだ。


「魔境置き場だ」


団員詰所内は鏡だらけ。


「まあ、見ればわかりますけどね」


いわゆる魔法具というものである。


「別にとやかく言いませんよ? 自身を鏡に映して陶酔したくなりますよね、その面なら」


リリアナは部屋に入って、ポージングする。


「『どこを見ても、俺様かっこいい』みたいにやってます?」


グワッシ


ルキオがリリアナの頭を掴む。


「頭かち割ろうか」

「ちょ、痛いって!」


リリアナはルキオの腕をペシペシ叩いた。


「神鏡っていう神器を探して、こうなった」


リリアナは再度部屋を見回した。


「神器はないね。そもそも、神器と魔法具は別物じゃん」


ルキオが頷く。


「ああ、わかっている。書物にある神器が所在不明になって数百年。可能性のある鏡を収集しただけ」

「ふーん」


リリアナは興味を無くして、キッチンへ移動した。


「未使用?」

「ああ」


以上である。

予想はしていた。

ルキオがキッチンなど使うことはないだろうと。


「次は二階へ」


……で、リリアナは二階から四階まで案内してもらい、うんざりした。

どの部屋も古めかしい魔法具だらけなのだ。

よく、これだけの古式魔法具を収集したものだな、と呆れるくらい。いや、中には眉唾物もありそうだ。

なにせ、仕分けられていなく、グチャグチャのバラバラだから。

一階の鏡部屋を異様に感じたが、あそこだけ唯一仕分けられた部屋だった。


「次は五階だ」


もう、リリアナは無言でついていくだけ。

五階に上がって目を引いたのは、扉がぶっ壊れた部屋。


「これ、どうしたの?」

「そこが、第一調合室。例の万能魔法薬を分析したら、爆発してこうなった」


「万能魔法薬を分析するなんて、頭イカれてるよ」


万能魔法薬は魔法使いの秘匿でもあるからだ。

いわゆる秘伝というもの。

本人か継承者以外、調合を知ることはない代物である。


だからこそ、万能魔法薬は個体差があり、効果の大小もある。


それでも、風邪薬など一般的魔法薬の調合は世に出回っている。魔法使いの基本でもあるから。


ちなみに、魔法薬は魔力を有しない魔術師は作れない。普通の薬草を使った薬は作れるが。

魔法薬だけは、魔法使いの専売特許のようなものなのだ。

特に女性の魔法使いが魔女とされた理由は、魔法薬が背景にあると言っても過言ではない。


「ああ、第三師団長にも言われた」


昨日のように、爆発で第三師団長が来たのだろう。


「それ以前に、鑑定解析もしてもらったが、あまりに複雑怪奇とかで中断した。魔眼がイカれて一日寝込んだんだ」

「うん、そりゃあ継承魔法だから」


何代にも継がれていく調合だから、その年代分を解析することになる。魔眼がイカれるわけだ。

初代の調合からリリアナまで、改善改良を重ねた歴を解析するなど無謀なのだ。


リリアナは調合室に入った。

絵の具が部屋全体に飛び散ったかのような色彩爆発した部屋になっている。


「最悪なのは、この爆発色に清掃魔法が使えないってことだ」


全て手作業清掃しなければ綺麗にはならない。


「……プッ」


リリアナは笑いを堪えた。

ざまあみろ、と内心で思ったから。

リリアナのそんな様子に、ルキオの口が開く。


「お前にここを使わせてやろう」

「ゲッ」


リリアナはルキオを忌々しそうに見た。


「新入りは掃除からって相場が決まってるだろ?」


ルキオは意趣返しをしたのだろう。目で見て盗め、と言われたことの。


「私は隣の第二調合室を使っている」


ルキオが第一調合室の隣室を指さした。


「それから、残りは私室」


五階は調合室二部屋、ルキオの私室で三部屋ということだ。


「地下は?」

「地下も魔法具を詰め込んである。もう、部屋に空きがないな……ちょうど、第一師団に新入りが入ったことだし、仕分け作業をしてもらおう」


ルキオがこれ幸いだと言わんばかりにリリアナを見た。


「最悪……」


第一調合室の掃除に、魔法具の仕分け、面倒くさいことこの上ない。


こうして、リリアナの第一師団生活は始まったのである。





平日更新

土日祝日休み

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ