物語る。3
「断る」
ルキオが即答した。
「なぜ、私がこのちんちくりん野良の身元引受人にならなければならないんだ」
「じゃあ、出国するね」
リリアナはあっさりと引き下がる。
「待って待って!」
カイトが焦ったように、リリアナを引き止めた。
「ルキオが今調べてる万能魔法薬は、リリアナ君が調合したものかもしれない」
「何?」
ルキオが訝しげにリリアナを見た。
「お前が調合しただと?」
「ちんちくりんでも野良でもお前でもなく、リリアナですけど」
リリアナは、ルキオにべーッと舌を出して挑発した。
ルキオのこめかみに青筋が浮かぶ。
「おい、ちんちくりん、魔法薬を調合してみろ」
「断る」
リリアナはフフンと顎を上げた。
ルキオの魔力がブワンと放出され、リリアナも呼応する。
まさに、一触即発。
「ねえ、君たち、ここは一応城内なんだからさ、止めてくれない?」
バタバタバタバタ
「失礼致します! 異常な魔力を感知しましたので」
「ほら、第三魔術師団が来ちゃったじゃないか」
カイトが第三魔術師団の面々に、軽く手を上げて応じた。
「二人とも、魔力比べはわかったから、抑えてよ。ごめんよ、第三師団長。登録前の魔力検査ってことにしてくれるとありがたい」
カイトが場の収束を図る。
「……なるほど。もしや、彼女が例の?」
第三師団長が、リリアナを見る。
第二師団が出張ってずっと捕まえられなかった野良魔術師か、と確認したのだ。
今、ここに第一から第三までの師団長が集まっている。
第一師団とは名ばかりの唯我独尊ルキオ。
第二師団は、ある意味外勤、外活動を担う。
第三師団が内勤、城内事案を担当。
第四、第五、とまあ、第十師団まである。
魔術師として、力のレベルがそのまま反映されている。
「ああ、ルキオに手伝ってもらってね。やっとのことで本人に会えた状況さ」
カイトが答えた。
リリアナはペコッと第三師団長に頭を下げる。
第三師団長が魔力持ちであるのは、見た目でわかる。ルキオやリリアナと同じで魔法使い兼魔術師。カイトのように、宝石をほとんど身に纏っていないから。
「リリアナです」
「……」
第三師団長がリリアナを見つめる。リリアナの魔力を見定めているようだ。
その瞳はオッドアイ。魔眼の持ち主で、魔力鑑定師である。
「……はい、認識しました。私どもでは手に負えないですね」
第三師団長がカイトに言った。
「だよね。だから、ルキオに身元引受人を頼んでるわけ」
皆の視線がルキオに集まった。
ルキオの表情が強ばる。
リリアナも心底嫌そうな表情だ。
「いや、私がクランツ領域を出てけば問題ないでしょ?」
「その前に、魔法薬を調合しろ」
「ケッ、嫌なこった」
「フンッ、どうせ大した調合はできないんだろ?」
「そんな挑発にはのらないよーだ」
リリアナは変顔をして、最大限にルキオを煽った。
いっこうに場は収束しないし、話が進まない状況に、カイトがお手上げだとばかりに、第三師団長を見て苦笑いした。
そこで、第三師団長が助け舟を出す。
「城内では規定以上の魔力放出は違反です。ルキオ師団長もリリアナさんも、城内を預かる私の指示に従ってもらいます」
第三師団長が冷静に発した。
「リリアナさんはルキオ師団長預かりとします。ルキオ師団長は責任を取って、リリアナさんを預かってください」
「なんでだ!?」とルキオ。
「なんでよ!?」とリリアナ。
「リリアナさんの魔力に対抗できるのは、ルキオ師団長しかいないから。力のレベルで師団預かりを決めるなら、リリアナさんは第一師団だから。ただし、預かり先であって、身元引受人ではないので、リリアナさんには六ヶ月の第一師団奉仕を義務付けます。二人とも、城内で異常な魔力放出という違反をした処置ですから、妥当でしょう」
「うん、ちゃんと筋が通ってるね。ルキオは預かり人として、リリアナ君に魔法薬の調合を指示できるし、リリアナ君は本来一年の所属勤務期間が半年に短縮できる。どっちも有益だよ」
カイトが第三師団長に追随した。
「さて、ちょうど鑑定師の第三師団長が来てるから、魔力と魔術波動の登録済ませちゃおう」
「はい。早速」
カイトと第三師団長が準備に取りかかる。
「……」
「……」
リリアナとルキオは思わぬ展開に無言となったのだった。
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