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物語る。  作者: 桃巴


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物語る。22

その一行は予定より一日早く城門に現れる。

それも西の城門に。


すぐに、第三師団長が対処に向かい、団員がその間にアルカロに指示を仰ぎに行った。


「到着は明日の予定では?」


入城はさせず、城門前だ。


「旅路が順調でしたので」


使者が答えた。


「入城は北の城門だと指定されていませんでしたか?」

「はい、そのように。明日の入城なら、北の城門指定。ならば、一日早い今日は別の城門が妥当かと」


「なるほど。面白い冗談ですね。では、明日北の城門にてお出迎えが妥当でしょう」

「いえいえ、そちらこそ冗談が上手いですね。クランツほどの国が、門前払いなどしないでしょうし」


「貴国こそ、訪問国の意向を無視するような言動はしないことでしょう。国の品位が疑われますから」


第三師団長はいっこうに退かない構えだ。


「さっさと、通しなさいよ!」


突如、姫が第三師団長に食ってかかる。


「これはこれは、ベイリー姫、ご機嫌麗しゅう」


第三師団長は丁寧に敬意を示す。


「この度、ご結婚が決まったとのこと、お祝い申し上げます」


ベイリー姫が『うっ』と喉を鳴らし、拳を握る。


「はい。祝い事でございますれば、どうかその進行を止めることなく、『全て』通していただけましたら、幸いです」


姫の前にサッと体を滑らせて、使者が答えた。

『全て』が何を指すかは言わずもがな。


「クランツ国を侮っておられるわけはありませんよね? ここはクランツ。ナチャン国の『全て』を通らせようなど……脅し文句のよう、いやいや、祝い事で浮かれておいででしょうか」


第三師団長の言葉に、ナチャン国の使者が笑みで応じる。


「あなたじゃ、話にならないわ! 今すぐ、第一師団長を出しなさい!」


ベイリー姫が叫んだ。

と同時に魔法陣が出現し、アルカロとカイト、セレスと近衛騎士が登場した。


「お早いお着きですね」


アルカロがナチャン国の使者とベイリー姫を見る。


「明日、予定通り、北の城門から入城いただけなければ、クランツは貴国のお相手をしません。どうぞ、今すぐにご帰国いただいても構いません」


クランツ王太子アルカロの発言に異議を唱えるなどできはしない。


ナチャン国の使者が深々と頭を下げた。


「ご尊顔を拝しまして、恐悦至極に存じます」

「堅苦しい挨拶はいらないよ。明日まで取っておいて」


アルカロがさらりと返す。


「王太子殿下、お久しゅうございます」


ベイリー姫がしゃしゃり出る。


「それも明日でいいよ」


穏やかな口調でスパーンと遮断した。

それができる立場なのだ、王太子という身分は。


「遅刻なく、早く着いたことを知らせたかった気遣いだということにしておくから。それとも奇襲したの?」

「いえいえ」


使者が慌てたように否定する。


「だよね。ナチャン国が予定外行動するなら、クランツ国もやってもいいってことになるよ。『ドンッ』とか、祝い事のお『返し』とか」


アルカロがそこで真顔になる。

使者の顔が青ざめた。

ベイリー姫は口を固く結び、城門を見つめる。


その感情は……どこに向かうのか………。


その頃、第一師団塔では……。

第一調合室から、私室へとルキオは急ぐ。


ガチャン!


ルキオは私室を閉ざした。


「あの女……」


ルキオは女の気配を感じ取り、歯軋りした。


ギシ

ギシギシ


女の呪いが……ベイリー姫の呪いが発動する。

ルキオは、万能魔法薬を手に取り一気に飲み干した。


いっときの解放の後、またじわじわとルキオを蝕んでいく。


「クソッ、ゥッ……ッ、ハアハアッ」


ルキオは、ベッドに倒れ込む。

体を丸め、痛みに耐える。

女の念が終わらないのだ。


ルキオに自分を思い出せ、と。


だから、ルキオは思った、違う感情を。

金色の魔法陣に包まれた第一師団塔を思い出す。あの綺麗な中に、自分は包まれているのだと。


「フゥー」


息が少し通った。

ルキオは浅い呼吸を繰り返すが、今までとは違い、抗うことができていた。


「……フッ」


ルキオは笑った。

思い浮かんだ声と顔が、ルキオの頬を緩めたのだ。


次第に遠ざかっていくあの女の気配。

腹立たしいことに、あの女とルキオは『呪い』で繋がっている。

だから、近ければ近いほど、わかるのだ、まるで、女の存在自体を知らしめるように『呪い』が呼応する。


ルキオは身を起こし、私室の扉を見つめる。


「私の異常など、気にもとめていない」


以前なら、それが心地よかったが、少しぐらい気にかけたらどうだ、との感情がくすぶる。


「明日からどうするか……」


ルキオは立ち上がり、扉を開けた。


「あ、ルキオ、間に合った?」


第二調合室からリリアナが顔を出している。


「……何がだ?」

「食べ合わせでも悪かったんでしょ?」


「は?」

「お漏らしせずに済んだ?」


ルキオはズンズンと進み、リリアナに頭突きをかましておいたのだった。















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