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物語る。  作者: 桃巴


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17/23

物語る。17

「ねえ、リリアナ君」


第一師団塔への帰り道、付き添うカイトが声をかける。

リリアナは『ん?』と顔を向けた。


「……いや、なんでもない」

「あ、そ」


「いや、そこはもうちょっと気にかけてもらえると嬉しいんだけど」

「えー、察して君になったの、カイトって」


リリアナは嫌そうに言った。


「そういうわけじゃないけど」

「ほらまた、けどって続きをこっちに振らないで。なんでも言ってよ、なんてこと私からは促さないから」


カイトが頭を掻く。


「だね。拗らせを伝えておこうかと思ってね」

「第二王子の?」


「ああ」

「興味ない」


リリアナは止めてくれと言わんばかりに、手を振った。


「じゃあ、勝手に話す」


ガクッとリリアナは肩を落とす。

聞きたくないからと、王族の口に魔法をかけるわけにはいかない。


「次兄の婚約が整って、初顔合わせとなったのは二年前のこと。先にアルカロ兄上の婚約は整っていて、クランツでは順当に婚約も婚姻も整っていく慣習だから、次兄の番だったのさ。それで、ある国の姫と次兄は会うことになった」


いきなりの王族の婚約話に、リリアナは気が遠くなる。


「双方申し分ない婚約だったし、二人とも初顔合わせでは特に問題なく、互いに良い印象を持った。それで、姫との親交を深める日々の中、当時第二師団長だった次兄は、魔術師団を案内した。第一師団から案内を始めたのさ」

「ああ……そういう」


リリアナは思わず反応した。予測がついたから。


「そう、姫はルキオに一目惚れした。そこからはもう破茶滅茶だったね。姫はルキオにご執心で、次兄を顧みない。姫の母国も、溺愛する姫の要望だからとルキオとの婚約に変えてくれないかと内々に打診するほどでね」


ルキオにしてみれば、はた迷惑だっただろうな、とリリアナは思った。


「それで、次兄と姫との婚約話は流れたわけ。姫は帰国するまで、ずっと第一師団塔に突撃をかました。そんな姫の好き勝手な行動に刺激され、ルキオに想いを寄せる者たちも、自分もと参戦しだして……カオスになったさ」

「だから、唯我独尊師団になったってこと?」


「そ、ご明察。次兄は、思い詰めてね……ルキオと対決した。第一師団と第二師団の訓練だと称してさ。もし、第二師団がルキオに勝ったなら、第一師団を名乗ると言って。第二師団に潤沢に供給されている魔石宝石を湯水のように使って挑んだんだよね。結果は」

「ルキオが勝ったから、まだ第一師団なのでしょ」


ルキオは反撃せず、防戦だけだったという。それでも勝てたのは、次兄率いる第二師団が魔法の源も魔力も使い切ったから。

最後にルキオが拘束魔法をかけ、アルカロに引き渡したのだそう。


「まあね。それで、アルカロ兄上が、許可のない対戦と魔石宝石の多量使用を咎め、責任を持って採集するように次兄を第四師団長に落として、第四師団にいた僕を第二師団長にしたんだ。対戦時に第二師団から緊急供給を命じられたけど、僕は応じなかったからね。だから、次兄はルキオだけじゃなく、僕も目の敵にしてさ」

「だから、魔石の補充が滞ってたのか」


「そういう拗らせが背景にあるんだよね。元々、ルキオと次兄は、第一と第二師団で連携が取れていて、仲が良かったんだけどさ」


カイトが深いため息を吐いた。


「当時、ルキオに対して問題を起こした魔術師たちは除隊させたし、姫も予定を早めて帰らせた」


第一師団塔が見えてくる。

リリアナはやっと面倒話から解放されると安堵した。


「……その姫が、ルキオに置き土産を残した」


カイトが喉を鳴らす。

重い沈黙は、想いがそこにあるから。

リリアナはカイトが続けるのかどうか確認する。


「続けるの?」


さっきのアルカロとの会話の後だ。

何をカイトが告げようとしているのかわからないわけではない。


カイトは『隠し事』を明かそうとしている。


「ルキオを諦めきれない想いが禁じ手に縋ったのか、恨みに変わったからか」


リリアナはカイトの言葉に反応しない。

全て明かすかどうかはカイトに委ねた。途中で止めてもいいように、リリアナはもう口を挟まない。


「魔法魔術に対抗できる力を、リリアナ君は知っているかい?」


それはリリアナに答えを求む話し方ではなかったから、無言を貫く。


「ルキオの髪一本だけで、施せる術式だよ。禁術『呪い』さ」


それが、ある病の正体だということはわかる。実際に、リリアナは目撃しているから。


「ルキオなら、『呪い返し』はできる。できるけれど、それをしたら姫が喰らう。たぶん、姫は廃人もしくは……死人になるだろう。国家間の問題になるのは間違いなくて、ルキオに我慢を強いた。姫の母国は、このことを知っているし、呪い返しをしないでほしいと懇願していてね。解決のためには、姫との婚約婚姻が有効だとも迫ったんだ」


それにルキオは屈しなかったわけ。

一人、唯我独尊師団で耐え抜いているのだ。本当なら、呪い返しをしたいはずなのに。


「『呪い』を無効化するには、呪い返ししか方法はない。いや、姫の望みが叶えば解呪されるだろう。ルキオとの婚約婚姻をね。それはルキオにとって正真正銘の解呪にはならない。結局、姫に囚われるようなものだからさ」


カイトが第一師団塔を見上げる。

ちょうど、着いたのだ。


「リリアナ君、僕からの個人的依頼をしたい」

「依頼内容は?」


リリアナとカイトはそこで視線を交わした。


「何を、どう依頼するか、僕にはわからない」


それは、アルカロも口にしていた。どうしていいかわからない、と。

ただただ、王家の意向でルキオは呪い返しを止められている。


解決策がわからない。


だから、何を、どう依頼するかわからないのだ。


と、そこで……



ボンッ!



爆発音が響く。

リリアナとカイトは第一師団塔を見上げた。

五階から、カラフルな粉塵が立ち上っている。


「……爆発だね」とカイト。

「だね。分析爆発したっぽい」とリリアナ。



シュン



二人の前に魔法陣が出現する。

中から第三師団長と団員が現れた。


「たぶん、万能魔法薬を懲りもせずに分析したみたい」


リリアナは、五階を指して言った。


「現場確認してきます」


第三師団長と団員が、第一師団塔を上がっていく。

リリアナとカイトもそれに続いた。


五階で待ち受けていたのは、分析爆発した第二調合室と全身色彩まみれのルキオ。


「ブッフォ」


リリアナは吹いた。


「ヨッ! これぞ『色男』だね、ルキオ」

「……」


ルキオがリリアナをギロッと睨む。


「ゥヘヘヘェー、それ魔法じゃあ落ちないでしょ。頑張って洗ってきてねー」


リリアナはルキオをおちょくる。


「ああ、そのとおり。お前も第二調合室の掃除頑張れよ」


ルキオがリリアナの肩をポンポンと叩く。


「ゲッ」

「私は掃除済みの第一調合室を使うから」


リリアナはまさにガーンという顔で項垂れた。


「振り出しに戻った……」

「リリアナさん、粉塵が落ち着いたら、第三師団もお手伝いしますよ。現場検証のついでですから」


第三師団長が言った。


「ううっ、ありがと、第三師団長。ルキオにこき使われる日々。耐え忍んでみせますわ」


リリアナは被害者ムーブで、苦労人のごとく振る舞った。


「そうかそうか、発言を真実にしてやろう。行け」


ルキオに首根っこを掴まれて、粉塵立ち込める第二調合室に、リリアナはポーンと投げ込まれたのだった。





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