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物語る。  作者: 桃巴


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12/26

物語る。12

翌々日のことだ。

第一調合室の掃除は終わっていて、リリアナは古式魔法具の仕分けを始めていた。


万能魔法薬はクランツに素材がなく、調合できていない。

あの山の素材場でしか生えていない薬草が必要だから。


次に行くときに採集する予定だ。

ルキオはすぐにでも行きたそうだったが、昨日も今日も、第三師団塔へ行っている。

魔術師団会議が緊急で開かれて、連日出席しているからだ。

本来、師団長か副師団長どちらかが出席すればいいのだが、第一師団はルキオしかその立場にない。連日とんでもなく不機嫌な顔で第三師団塔へ転移していた。


だから、主不在の第一師団塔で、リリアナは好き勝手できた。


「今日は地下室探検しよっと」


ルキオがいないから、気になる魔法具だけを手に取って試したりしている。

だいたい、仕分けといっても千差万別ある魔法具をどうカテゴライズすればいいのか、ルキオから何も指示されていないのだ。


そんなこんなで、魔法具遊びをしていると、上が何やら騒がしくなる。


「なんだろ?」


リリアナは気配を消して、階段を上った。


『構わん、物理攻撃しろ』


男の声だった。


『ドンッドンッドンッ』


出入口の扉を破壊しようとしているようだ。魔法攻撃では、ルキオが扉に設置した魔法陣を突破できないからだろう。


招かざる者ってことよね、とリリアナは判断した。

ルキオが不在時を狙って来ているのだから。


『師団長、壊れません!』


そりゃあ、ルキオの魔法陣だもの。物理攻撃にも有効に展開してるって。リリアナはさてどうしたものか、と考えるが、その間にも外の連中は次作に打って出る。


『チッ、仕方ない。魔石爆発させろ。特大のやつでなら突破できるだろう』

『師団長、そんなことをしたら、すぐに第三師団が来ますよ』


『構わんさ。来る前に新入りを手中にしてしまえば問題ない。事の発端は、第四に知らせず、抜けがけで素材採集した第一と第二が悪いんだ』


なるほど、なるほど、とリリアナは扉前の連中が第四師団だと察する。

命令しているのは、第四師団長にして、第二王子のはず。

そう、拗らせ王子だな、とリリアナは判断した。


『新入りを第四師団に迎えるぞ。あのルキオが第一師団に人を寄越すなとまで言わしめたご執心の新入りだ。必ず、手に入れてやる。やれ!』


完全に勘違いしているが、目的が自分であるとわかったリリアナは、音を立てず地下室に戻って箒を手に取る。例の箒である。

それから、古式魔法具の中から、鳴り物であるオルゴールを見つけ、箒にくくりつけた。


すぐに、変わり身の魔法で変身させ、偽リリアナに言動の指示を出す。前回は、人形のように佇ませただけだが、今回は第四師団を欺かねなければならないから、鳴り物を加えて変身させたのだ。


ドゴーンッ


破壊音と同時にリリアナは転移した。




ルキオは苛々を募らせる。

第四師団がいちゃもんをつけてきて、魔術師団会議が開かれたから。

こういうときに、副師団長がいればと考えるが、やはり、一人がいいとすぐに思う。

あのちんちくりんは……許容範囲だ。使えるし。


「ところで、第四師団長は来ていないですね」


第三師団長が第四師団の副師団長を一瞥する。


「魔術師団会議は、師団長か副師団長のどちらかが出席すればいいので、本日は私が」


第四師団の副師団長が答えた。

だが、第四以外が全員師団長ばかりである。何よりも、会議開催は第四師団長の要望だった。


「そうですか」


第三師団長が頷く。


「では、私が昨日に続きまとめます」


第三師団長が出席者を見回す。

それでいいか? との視線だ。全員が目礼し、第三師団長は続ける。


「まず、第二師団は魔石や宝石の在庫が乏しくなり、第一師団に魔力補充を依頼した。問題はないですね?」


皆が頷く。


「第一師団は魔力を補充したが、第二師団が活動するための魔石や宝石の在庫量が至らない状況だった」


カイトが頷く。


「その発端は、現在第一師団に預けられているリリアナさんを捕らえるために、魔石や宝石を多く消費したからですね?」


「ああ、そうです」


第三師団長の問いに、カイトが答えた。


「私もリリアナさんを鑑定しましたが、彼女はルキオ師団長に匹敵する魔力持ちです。第二師団の消費は妥当です。私の鑑定に異議はありますか?」


魔眼持ちの第三師団長に異議を唱える者はいない。


「そこで、責任を感じたリリアナさんが、地元での魔石の採集を申し出た」


第三師団長がルキオを見て、発言を促した。


「ああ、そのとおり。本人はクランツが魔術師登録が必要だと知らず、逃げ回っていたから。第二師団の状況は自身のせいだと言い、魔石を採ってくると言った。外活動は、第二師団が担っているから、一緒に向かっただけ」

「そこが、おかしいんですよ」


ルキオの発言に、第四師団の副師団長が声を上げた。


「素材採集は第四師団が担っていますから。なぜ、第四師団に魔石の補充を頼まなかったのですか?」


第四師団の副師団長は、ルキオでなくカイトに向けて発していた。


「第四師団への魔石補充依頼は一週間以上前にもしていたね。副師団長が知らないとは言わせないけど」


カイトが答えた。


「第二師団だけ早く融通をつかせるわけにはいきませんから! 手順に沿って各師団平等に配布しています」


第四師団の副師団長が反論した。


「だが、その補充が早ければ、私が出張る必要もなかっただろう。それほど、第二師団は魔力、魔法の源が乏しかったということだ。外活動をする第二師団では致命的になる。平等にしているというなら、第二師団が必要な量を、全師団に配布できるほど、採集量を増やせられていない第四師団の力不足じゃないのか」


ルキオが辛辣に放った。


「以前より採集量が減っているのは、慎重に採集作業をしているからだと聞くが?」


第四師団の副師団長が苦虫を噛み潰したような表情になる。


「ついでに言うと、登録のために着の身着のままでリリアナ君にはクランツに来てもらっていたんだ。だから、一度戻る必要があった」


カイトが付け加えた。

そこで、第三師団長が皆を見回す。


「一番の重要点は、第二師団の魔石補充が緊急か否か。通常の魔力魔石宝石補充と、緊急の魔力魔石宝石補充を同列にすべきでないと考えます。今回はどちらであったか。各師団に問います。特に魔力を持たない魔術師なら、魔法の源不足をどう捉えるかわかるでしょう」


ここには、魔力を持たない魔術師団長が半数はいるのだ。

魔力を持たない魔術師団を多く抱えた師団も。

ルキオが言ったように魔法の源不足は致命的なのだ。武官でもない魔術師から魔法を取れば、単なる人でしかない。


「第四師団はある意味手元にあるから実感がわかないのでしょうな、その恐怖が」


ここで、年配の第十師団長がボソッと言った。


「第四師団は平等に配布と言いましたが、第十には最低限の配布でしょう。何せ、魔術師候補生の師団なので。まあ、そういうものだと認識していますぞ。第二と第十が同じ配布なぞ、あってはならないですしな。だから、自前で採集もしております。まあ、候補生なので採集研修の名目も通りますからの。私は緊急時には、手に負えない事案と判断し、第一師団を頼りますぞ。その方が手っ取り早い」


第十師団長の発言に第四師団の副師団長以外皆が頷き、第二師団は緊急だったと発言する。


「緊急時が通常時と違うのは理解できます。第四師団が問題にしているのは、魔石を採集してくることを、第四師団に事前に言わなかったことです! 第四師団の面目を潰す行為です。終いには、新領域は魔力溜まりがあって危険な採集場だと各師団に通達し、第四師団を蔑ろにしたようなものですから」


第四師団の副師団長が鼻息荒く言った。


「第二師団に魔石補充できていない時点で、十分に面目は潰れているんじゃないのか」


ルキオはどこまでも辛辣である。

第四師団の副師団長が顔を真っ赤に染める。


「さて、第二師団が緊急であったことは第四師団も認めました。その上で、第二師団は第四師団に自前採集の一報を入れられぬほどかと問われれば、否、でしょう。加えて、第二師団でなく第四師団から新領域採集場の情報は伝達すべきことだったとも思えます。この二点は、第二師団不手際でしょう」


第三師団長が言った。

新領域での採集を事前に伝えたなら、第四師団が難癖をつけるだろうから、黙って向かったわけだが、そこはやはり第二師団に非があると言えるだろう。新領域採集場の危険性を第二師団主導で伝達したことも。


カイトが立ち上がり、第四師団の副師団長に頭を下げる。


「認めるよ。すまなかった」


第三師団長がこれでいいだろうか? と、出席者たちに促す。

両方の言い分をたてたわけ。

これで一件落着となるはずだったのだが……



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