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物語る。  作者: 桃巴


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10/20

物語る。10

魔力を失った魔石はただの石ころである。輝きを失った宝石も価値はない。


積まれたそれらを、リリアナはまじまじと眺める。


ほとんどが、魔力を注げる感じがしなかったから。


「まじで、スッカラカン間近でね。第二師団として危機的状態なわけ」


カイトが三連の腕輪を外す。

それも、魔力が枯渇していた。


「昨日の転移で使い切ったんだよね」


カイトのそれは、魔力を注げる(じょうたい)である。

魔術師には、魔法を使う源の魔石や宝石が必ず必要だ。


「じゃあ、サクッと」


リリアナは、宝石が幾つも埋め込まれた腕輪を手にして魔力を注いだ。

その様子をルキオとカイト、セレスが見ている。


「はい、どうぞ」


リリアナはカイトに腕輪を差し出した。が、それをルキオがさらう。


腕輪を視ているのだ。

小さく頷くと、カイトに渡した。


「問題ない」

「当たり前じゃん」


リリアナはムッとする。


「それが、当たり前じゃないんだ、リリアナさん」


セレスが続ける。


「魔力を惜しみなく注げるほどの魔法使いは、少ない。他に注げるほどの魔力を持っていないから」


だから、魔術師が増えて、魔法を術式化した魔法陣という魔法の型が主流となったわけ。


「そうなの?」


リリアナは不思議そうに訊く。

山奥暮らしだったリリアナは、そのあたりの情報に疎い。


「師団長か副師団長クラスしかいないね」


カイトが答えた。


「クランツの魔術師団は、師団長か副師団長のどちらかが魔法使い、魔力持ちと決まっている」

「ふーん」


リリアナは適当に返事しながら、注げる器がある宝石の装飾品を手に取って、魔力を注いでいく。

それを、ルキオに渡し点検してもらう流れ作業になっていった。

ルキオも点検しながら、大きな水晶に手をかざして魔力を注いでいる。

その水晶が、第二師団が身につける個々の水晶装飾品へと繋がっているのだ。


「私一人では、カイト師団長の補充が精一杯で」


セレスがカイトの装飾品に魔力を補充しながら言った。

師団長のカイトは魔術師だから、副師団長のセレスが魔力持ちである。


「そっか、二人一組なんだ」


リリアナは第二師団の構成がわかった。

魔術師と魔法使いで二人一組構成になっていると。

対外的には、皆魔術師と呼んでいると言っていたが、活動では違うのだ。


「鋭いね。第二師団の魔法使いは少量でも魔力を注げる実力者を集めている」


それが二人一組にする理由だ、とカイトが言った。

外活動で窮地に陥ったときのためだろう。魔術師は源が枯渇すれば、ただの人になるから。


「これ以上注げる器のブツはないようだな」


手を止めたリリアナを見て、ルキオが発する。

リリアナは頷いた。


「追加の魔石が必要だね。ルキオ、魔石を頼める?」

「素材採集は、第四師団担当だろ?」


カイトの言葉に、ルキオが答えた。


「ルキオ師団長、それ言っちゃいます?」


セレスが苦笑する。

リリアナは会話の意味がわからず、小首を傾げた。


「第四師団長は第二王子なんだよね。ほら、弟の方が師団上位で拗らせてるわけさ。魔石補充を依頼しても、反応が遅いし量も少ない」


セレスが説明した。

カイトは第三王子で、第二師団長。

第二王子が、第四師団長。


「なんかよくわからないけど……元はといえば、私が発端だし、魔石取ってくるよ!」

「お前、それを口実にトンズラしようとしてるだろ!?」


ルキオがリリアナの首根っこを掴む。


「トンズラなんてしないって! ちょーと、お外遊びしたいだけ。気分転換だって」

「お前はまだ第一師団塔の仕事が残ってる」

「第一師団が担う仕事に出てもいいじゃんか! 一応、団員だっしぃー」

「魔石採集は第四師団の仕事だ」

「拗れてて、第四師団に頼んでも意味ないんでしょ。第二師団が手に負えない事案ってことじゃん。各師団が手に負えない事案は第一師団が請け負うんじゃないの?」


ルキオとリリアナはあーだこーだと言い合った。


そこで、ボソッとセレスが呟く。


「そういえば、リリアナさんの地元を第四師団は調べていないんじゃないの?」

「第四師団は安全が確保されないと動かない慎重な師団だもんね。やっとリリアナ君を捕まえたばかりで、きっとまだ新領域を調べてないはず。というか、新領域の安全確保は、結局第一と第二師団がすることになりそうな気もするし」


カイトがルキオを窺う。


「新領域を見ておきたくない? 地元民のリリアナさんに案内してもらうのが的確だと思うけど。ね、ルキオ師団長」


セレスが決定打を打った。


「……」


ルキオが無言の肯定をした。


こうして、魔石採集を理由に出張ることが決まったのだった。




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