[はやボク] 1-3.サポートナビゲータ―AI《ステア》
「はじめまして! 私はサポートナビゲーターAIの《ステア》です」
これは驚いた。
学園に関する情報を確認できるって聞いてたから、てっきりスカウターみたいなものを想像していたけど、ナビゲーターキャラが案内してくれるなんて、なんかゲームみたい。
「これからは、私があなたのサポートをさせていただきます。
困ったことがあったら、いつでも頼ってくださいね!」
「うん、よろしく」
スマートグラス越しに映し出されたのは、小学生低学年くらいの女の子の姿で、金髪のロングヘアーに頭には大きなリボン、ふわっとしたワンピースを着たそれは、そうだ《不思議の国のアリス》をイメージしたんだろう。
スマートグラス越しに映し出されるとは言っても、グラスそのものの座標情報や方向をセンサーで取得して、それに合わせて映し出されたものと、映し出されていない部分はそのままの景色が背景として見えるので、まるでそこにその少女が《実在》してるみたいに自然で、はっきりとした存在感がある。
一言でいえばホログラムってところか。これが世に言うARってやつなんだな。すごい。
でも、このサポートナビゲーターAI、なんでこの見た目なんだろう? 可愛い系ロリキャラって、これ開発した人の趣味なのか? 考えてみたら引きこもりはもれなくこういうのが好きなのかと思われているみたいでちょっとイラッとする。
でもまあ、どうでもいいか。とりあえず、やるべきことは確認しておこう。
「それでは、学園生活に必要なことをいくつかご説明しますね!」
サポートナビゲーションAIであるステアの説明は、極めて端的で要点がしっかりまとめられていて非常に分かりやすい。
一年次のカリキュラム内容についてもすんなり頭に入ってきたし、これがあれば授業なんて受ける必要が無いんじゃないかと思うくらい。
これならこの先も安心だ。
って、いやいやいや、ボクは授業を受けるために再登校しようと自分で決めて学園に来たんだ。いきなり手を抜くことを考えちゃダメだろ。
しかし、何というか、幼女に色々説明されるのは、何だか背徳感みたいなものを覚える。まあ、やましい気持ちはまったく無いのだけれど、ステアが見えてるのが自分だけだと考えると、誰もいない《そこ》に向かって一人で会話してる姿は相当シュールだよな。
「以上がこの学園での基本的な規則と一年次のカリキュラムの内容になります。何か分からないことがあったら、いつでも私を呼んでくださいね」
そういうとステアはクルンとフィギュアスケートのように回って、こう言った。
「私はいつも、あなたのそばにいます!」
「分かった。また頼むね」
ボクがそう応えるとステアの姿がスッと消えた。
なるほど、呼び出したときだけ現れる仕様か。四六時中つきまとわれるかと思ってたけど、これなら少し安心かも。
そのときはそう思った。
……そう、彼女に出会うまでは。