幕間その1 大神樹の護人
幕間のはずが何だかめちゃくちゃ長くなってしまったのでパート1パート2で分けようと思います。
寝落ちするのにちょうどいい長さだと思うのでぜひ読んでやってください。
〝ゴーーーーン〟
〝ゴーーーーン〟
私はこの村が好きだ
『ルファム様、おはようございます!』
『はい、おはようございます』
『ルファム様だ〜』
『おはようございます、みんな仲良くするのですよ』
『はぁーーーいっ!』
『ルファム様〜、うちのハタケで獲れたバリッサです!あとで鐘楼ダイの方に持って行きますね!芯のブブンはちとカタいんでクリオスのエサにでも混ぜてやってください』
『いつもありがとうございます、エイリアさんの作るバリッサは甘味があって美味しいと子供達にも評判が良いんですよ』
『そりゃあ、ありがたいハナシですね!ソレならコンドの収穫サイにはウチのドンドナのマル焼きを提キョウさせてもらいます』
『本当ですか、それは子供達が大喜びしそうですねきっと聖守アルムナダもお喜びになる事でしょう』
『めめ、メッソウもありません!?ルファム様や社宮のみなさんには、うちのガキどものメンドウを見てもらってる上にヨミカキまで教わってんだ!礼をイウのはコッチの方ですよ』
『いえいえ、コチラの方こそいつも子供達に元気をいただいているんですよ、それにマルナもイオも物覚えが良くて、簡単な算術なら出来るくらいなんですよ』
『ウチのガキどもと来たら、帰ってきてもルファム様の話とナイームさんたちのハナシしかしないもんだから、本当に宿ダイやってるのかウタガワしくてね?何かモンダイ起こしてみなさんにメイワクかけてないかひやひやしてるんですよ』
『おやおや、うちの社宮で1番の問題児だったエイリア君も、いつの間にか立派な親御さんになりましたね』
『ルファム様〜!?そいつは言いっこナシでお願いしますよ〜』
『ほほほ、これは少し冗談がすぎたかもしれませんね、それではエイリアさん今後ともよろしくお願いしますね』
『ルファム様こそ、おイソガしいのにお呼び止めしてしまい申し訳ありませんでした』
『貴方に大神樹の加護のあらんことを・・・』
『はぁ〜』
過ぎ去る後ろ姿さえ神々しく
まるで光を帯びているかのような美しさに
この小さな集落で農業を営むエイリアは何万回目かのため息をこぼした
ルファム様は昔から変わらない、自分が小さな時からずっとこの村の代表として我々を導いてくれる、全ての村民の憧れであり目標なのだ
〝バチン〟
『ちょっと、あんた!なにボケっと突っ立ってんのさ!今日中にソライモのナエ植えちゃうんだろ?じゃないとバリッサのシュウカクが遅れちゃうじゃないか!?』
昔の懐かしい思い出に浸ろうとすると、決まって女房の邪魔が入る
なんだかんだと連れ添ってはや170余年
美形揃いのこの村でも一、二を争う美人な嫁さんを迎えることが出来たのは嬉しかった。
長命であるが子供が出来にくいと言われる種族の中で2人の子宝にも恵まれたのも大神樹の加護、ひいては聖守アルムナダの眷属であるルファム様の祝福のおかげだと思っている。
チラリと隣に目をやると、そんな美人な女房も昔の面影を残しながら立派なお母ちゃんになっていた。
『なんだい?あんた?人の顔をジロジロ見て?』
『いいや、オレはステキな嫁さんをもらえたなと思ってな』
〝バッチン!〟
『んもう、いやだよこの人ったら〜!?急にそんな事言うなんて、なんかワルさでもしてんじゃないだろうね〜?そんな事いいからさっさとソライモの苗畑に運んでおくれよ!コンヤの晩酌に一品つけてあげるからさっ♡』
背中を叩かれた拍子に咳き込みそうになるのを我慢して、ガハハと笑いながら家に入っていく恋女房の後ろ姿を見た後に、もう一度初恋の人が歩いて行った通りを眺めながら、エイリアは今日一番のため息をついた。
〈大神樹の護人〉
自分たちがそう呼ばれたのは、いつからなのだろう?
少なくとも私が生まれた時にはすでにこの場所に村があった。
私の先祖には聖守アルムナダの血が混じっているとされ、代々神官長の家系だった、私は生まれながらにこの村の神官長としての責務を果たすことが義務付けられていた。
私が生まれた時も、村では子供の数が少なかったが私が神官としての教育を鐘楼台に隣接した社宮で受けている時、たまに窓の外で見かける同年代の子供たちが楽しそうに遊んでいる姿を見るのは、ほんの少しだけ胸が苦しくなった。
私は今から700年前に神官長として就任した。
歴代でも最高の神力を持つと言われ、噂を聞きつけ数多くの国が私との婚姻を結ぼうと数えきれないほどの使者を送ってきたが、私が首を縦に振ることはなかった。
この村の神官長として、社宮での若い神官見習い達を一人前にするための講習や講義、村の政を見守りながら大神樹の森と聖守アルムナダの保護と監視、家庭を持つ村人への婚礼の祝福、日々の公務に目の回るような忙しさだったのだが、私は周辺国家間同士との外交の切り札としての役割も担うことになっていた。
神樹の森の加護というものが世界に与える影響は大きく、神樹の森に満ちるマナには万病を癒す力がある反面、使い方を誤ればその力は世界を滅ぼしかねないほどの脅威へと変貌する。
その力の一端を受け継ぐ我々の種族は数は少なくとも他国の脅威となり得る存在として、ある種の抑止力として機能していた。
そしておよそ350年前に全世界共通の不可侵領域として、大神樹の森とこの村を含む地域一帯を保護区に制定する調印がなされたのだ。
私はこの村が好きだ
村人たちの生活を見る事が好きだ
子供達が元気に走り回る姿が好きだ
これまでたくさんの村人を育て、たくさんの村人を見送ってきた。
それがこの村の神官長としての私の勤めなのだ
これまでも、そしてこれからもそんな生活が続くと思っていた
『ルファム様ぁーーー!!』
勢いよく社宮内にある神官長室に飛び込んできたのは30年ほど前から神官見習いとして働いている
タスカだった。
『どうしたのですか?これから神官になろうとするものが社宮内を無闇に走っては行けませんよ?』
『た、大変なんです!?ザウルの村に行商に出ていたマリーダ達が何者かに襲われたらしく、たった今医務宮へ運び込まれました』
いつだって悪い事は突然やってくる
『すぐに神官達を招集し、怪我人の治療に当たらせてください、衛士達には村の警備と門の警備に手分けしてあたらせてください、そして村民たちには絶対に家の外に出ないよう通達してください』
『は、はい!かしこまりました!』
勢いよく飛び出して行ったタスカに続き、私も駆け出していた。
〝ゴーーーーーーン〟
〝ゴーーーーーーン〟
〝ゴーーーーーーン〟
夕暮れ時を知らせる鐘の音がやけに遠く感じた。
『ルファム様、お待ちしておりました』
医務宮内に入るといち早く治療にあたった神官達が疲労の色を滲ませながら私を迎え入れてくれた。
『負傷者の容態はいかがですか?』
『はい、重症ではありますが一命は取り留めそうです、しかし我々ではここまでが限界かと』
ベッドの上を見ると、全身に包帯を巻いた負傷者たちが苦しそうに顔を歪めていた。
『そうですか、貴方たちの処置のおかげです
ありがとうございましたあとは私が引き継ぎます』
そう言うとルファムは両手を胸の前で開き、体内の神気をゆっくりと開放しながら詠唱を開始した。
『大神樹の祝福を穢れなき者たちに、その大いなる力で癒しと安らぎを与えたまえ!エリアヒール!』
ルファムの身体が青白く発光し、その光が両手に集まると、一気拡散し医務室内を優しく包み込んだ。
『おお〜さすがルファム様だ』
感嘆の声をあげる神官たち
先ほどまで苦悶していた負傷者たちも安らかな表情を浮かべていた。
『ありがとうございます、ルファム様』
『礼には及びません、それよりも今回の行商にはマリーダを含む10人が参加していたはずですが、こちらには4名しかいない、他の6名の行方はわかっているのですか?』
神官たちは揃って俯いている
『そうですか・・・しかし一体誰がこんなことを?我々、大神樹の村とその民は世界協議によって不可侵領域として認められているはず、その我々が襲撃を受けるなどあってはならないはずなのです』
『ゴブリンです・・・私たちはゴブリンに襲われました。』
一番奥のベッドに横たわる今回の行商のリーダーだったマリーダがそう答えた。
『そんなバカな!今度の行商には護衛役として、元副神官長であるノマーク様と、その息子の神官ノコーム、それに3名の衛士が同行していたはず、たかがゴブリンごときものの数にも入らぬはず!何かの間違いに決まっている!』
『そうだ、そうだ!ノマーク様と言えば長年ルファム様の右腕としてこの村を支えて来た人物、全盛期を過ぎられたとは言え、今でも我らより神力の扱いに長けているお方がゴブリンになぞ遅れをとるものか!マリーダ!本当のことを言え!』
『静粛にっ!』
〝ピシィッ!〟
ルファムの一喝に医務宮内の空気が一変した。
『貴方たちの気持ちはわかりますが、今はそんな事を言い争っている場合ではありません、それよりもマリーダたちの話を聞くことが最優先ではありませんか?』
『し、失礼しました』
『神官として深く反省しております』
ルファムはその謝罪を受け止め、静かに頷くとマリーダのベッドまで歩いて行き、枕元に身を屈めるとまっすぐ天井を見上げたままのマリーダに向かって優しくと話しかけた。
『マリーダ、今回はよくぞ生きて帰って来てくれましたねツラいとは思いますが、ザウルの町で一体何があったのか話してくれませんか?』
『あれは・・・』
マリーダは視線を天井に向けたままゆっくりと話し始めた。
マリーダ達の一行は8日前、予定通りザウルの町にたどり着いた。
今回の行商の目的が大神樹の村の特産品である野菜や果物、農閑期に各々の家庭で手作りされる漬物などの食品、そして他国では秘薬と呼ばれるほど高い効果を持つポーションを昔からの取引先である商会で買い取ってもらい、売上金の一部で石鹸などの日用品から火吹き石と呼ばれる魔石、ぶどう酒やタバコなどの嗜好品も購入する予定だった。
しかし町に一歩踏み入れるとすぐに違和感に気がついた。
ザウルの町に以前のような活気が無かったのである。
わずか半年ほど前までは、通りの至る所に屋台が並び昼夜問わず行商人や旅人でごった返していたはずが、今回はまるで町の人たち全員ががどこかに行ってしまったかのように閑散としていた。
ザウルの屋台名物のソライモフライを楽しみにしていた一行は落胆しながらも、早速取引相手であるライルグラス商会へと足を進めた。
目的のライルグラス商会にたどり着いた一行だったが、ここでも予想外の出来事が起こった。
商会の扉は固く閉ざされていたのだ。
こちらから何度も声掛けをするが扉の向こうからは一切の反応がなかったのである。
商会の中に人の気配はあるものの呼びかけに応じない事と旅の疲れからか、若干の苛立ちを感じていると、扉の隙間から一通の手紙が差し出された。
その手紙にはよほど急いで書いたのか、ところどころ掠れた文字でこう書いてあった。
【今後大神樹の村との取引には応じることができない、すまない】
およそ200年前にこの町に商会ができてからの付き合いだったはずが、わずか一通、しかもあまりにも一方的な内容にマリーダたちは困惑していた。
その後何軒か馴染みの店を訪ねるも、そのすべての店で同じような対応だった。
徒労に終わった今回の行商の旅
次の町まではクリオスの竜車を使ってもおよそ14日はかかるため今回は村に帰還する事をノマークが提案して来た
仕方なく宿屋に一泊した後、村に帰還する事を告げマリーダ一行がザウルの町の常宿へ向かうために竜車を走らせようとしたその時、今回の行商の護衛として来てくれた元副神官長のノマークが、マリーダにだけ聞こえるようにこう言った。
『見られています』と
マリーダは慌ててノマークに指示を仰ごうとしたが、ノマークはマリーダの肩に手を置き静かに言った。
『何者かが我々がこの町に到着する前からコチラを監視しています、この町に入ってからは10からの数がコチラに悪意ある視線を向けてます』
マリーダが恐る恐る竜車内を振り返ると、先ほどまで疲労の顔を浮かべていたノコームと衛士たちは真剣な表情で槍や剣を握り、護衛対象である我々を囲むように座っていた。
何かただならぬことが起きていることに緊張するマリーダの肩にもう一度手を置いたノマークは『大丈夫ですよ、私たちがついています』と微笑みながら言った。
そして一行は少しの休憩ののち出発の準備をする事にした。
クリオスへの餌やりを終えた一行は必要最低限の荷物だけを竜車に載せて、ノマークとノコーム親子が交代しながら御者として竜車を操り迅速に村への帰路に着いた。
途中何度か休憩しながらも順調に進んでいたマリーダたちがここを過ぎればあと2日で村へ到着するという山の峠道に差し掛かった時、御者であるノマークが急に竜車を止めたのだった。
ほぼ寝ずの行軍の疲れからかウトウトしていたマリーダは急な停車に驚き、御者席のノマークに何が起きたのかと訊ねようとすると
『マリーダさん、出て来てはいけません・・・挟み撃ちですか?私の探知を掻い潜りここまで接近を許すとは・・・ふふ、私もだいぶ勘が鈍りましたかね?』
〝ザッザッザッザッザッザッザ〟
暗闇の中に多数の足音が聞こえて来た
『不可侵とはどこに行ったのでしょうね?』
疲れと恐怖で、一体何が起きているのか理解できないマリーダの頭をポンとひと撫でしたノマークは
『ノコーム、そして衛士の皆さん!ここから先は貴方たちだけで村へ向かいなさい!絶対にマリーダさんたちを無事に送り届けるのですよ!』
『『『『『はいっ!』』』』』
御者席からバッと飛び降りたノマークにマリーダが声をかけた
『ノマークさんっ!ノマークさんはどうするんですか!?』
するとノマーク笑顔を浮かべながら
『安心してください、私は大神樹の村の〝元〟副神官長ですよ、必ず後から追いつきますから先に行っててください』
『で、でも』
『大丈夫、私にはコレがありますから』
そう言ってノマークは自らの首から下げられた白銀のペンダントを揺らした。
それはまだノマークが若手の神官だった頃に村を襲った四つ足の魔獣を討伐した栄誉を讃え神官長ルファムから直接賜った、勇気の証でありノマークを村の英雄と呼ぶ所以となった物だった。
『さぁ、早く行きなさい!そして一刻も早くこの事をルファム様や村の人たちに伝えるのです!』
『父上、ご武運を!』
『ノコーム、頼みましたよ』
そう言い終わるやいなや、ノマークの体から青白い光が放たれ竜車前方で大きく弾けた
それを合図とばかりにノコームは手綱を操りクリオスを全速力で走らせた。
その道の先では行手を阻んでいたであろう何かが焼け焦げるように倒れていた
その何かに見覚えのあるノコームは妙な胸騒ぎを感じながらも全力で竜車を走らせた。
『ゴブリンですか?』
竜車の中では先ほどノコームが見かけた魔物の話になっていた
『ゴブリンってあのゴブリンですよね?』
『そうです、あれは間違いなくゴブリンでした』
ゴブリン、森や山などに暮らす低級の魔物で大神樹の村の衛士ならば1人で30体は相手にできると言われるほどの貧弱さではあるが、性格は残虐で狡猾、徒党を組むとタチの悪い魔物である。
『ゴブリンであればノマーク様が相手にするほどの魔物でもなく、我々で充分対処できたのでは?』
まだ年若い衛士が素朴な疑問を投げかける
それに対しノコームは振り返らずに答える
『それでも私は父上の判断が間違っているとは思えないのです、村の英雄と呼ばれた父上が自ら相手取るほどの何かを感じたんだと思います』
不安と緊張に震えながらマリーダは自分の部下たちと体を寄せ合っていた。
『マリーダ、私たち本当に帰れるんだよね?』
『大丈夫よ、きっと大丈夫』
『ノマーク様はご無事でしょうか?』
『当たり前じゃない!私たちの村の英雄なのよ!ルファム様の次に強かったんだからっ!』
自分が今回の行商のメンバーを選んだ事に責任を感じつつ、ここにいるみんなを絶対に村に帰すんだと強い決心を固めたマリーダは震える腕でみんなを強く抱きしめた。
ノマークと別れ、全速力で走り始めて10時間ついにクリオスに限界が来てしまった。
地動竜と呼ばれ大神樹の村では、有事の際は騎士の騎乗や今回の行商の重要なアシとし重宝される大型の亜竜である。おとなしい性格と強靭な体で村では数匹が飼育されていた。
『残念ですがここからは歩いて行きましょう』
ノコームの意見に反対する者は誰もいなかった。
『今までありがとね』
『いっぱい頑張ってくれてありがとう』
『ポーション無くなっちゃったけど、村に帰ったらいっぱいバリッサあげるからね』
竜車から降りた面々が、クリオスの顔を撫でながら感謝の意を伝えた。
ノコームを、先頭にマリーダたち5名その後ろに衛士が2名、少し離れてクリオスを引く衛士が続いていた。
もう少し、もう少ししたら見慣れた景色が見えて来るはず、そう思いながらマリーダたちは疲れた体に鞭を打ちながら少しずつ村に近いていた。
大昔に建てられた狩猟小屋でほんの少しの休憩を取ったのち、あとは止まる事なく村を目指すために準備を始めた時だった。
『ごめん、マリーダ!あたしちょっとお花摘みに行って来るね』
『わかったわ、なるだけ早くしてね』
『もう、やめてよ〜本当デリカシーないんだから』
そんな軽口を叩きながら行商メンバーの1人が小屋から少し離れた茂みに入って行った。
それを見た衛士の1人が護衛のため少し離れた所に立とうとした時
〝ズズーーーン!!〟
大きな地響きとともにマリーダの意識は暗転した。
『・・・ん・・』
『・・ダさん・』
『・リーダさん』
『マリーダさん』
誰かが呼んでいる気がする
だけど体が動かない
少しだけ目を開くが、なぜか左目が見えていない
揺れる視界の中に私の名前を必死に呼び続けるノコームさんの姿が映った。
『マリーダさん!起きてください!マリーダさん!』
『・・ん、私?あれ?どうして?』
『良かった!マリーダさん!』
私を心配そうに見つめるノコームさんの頭からは真っ赤な血が流れ落ちていた。
ズキズキと痛む頭を傾けあたりを見渡すと、先ほどまであったはずの小屋はどこにもなく変わりに何かとてつもなく大きな斧?のようなものが突き立っていた。
『敵襲です!どうやら追いつかれたみたいです!』
その言葉に私の意識は強制的に引き戻された
『マリーダさん、今から私の言うことをよく聞いてください!』
マリーダは精一杯の力で頷いた
『コレからマリーダさんたちに最低限ではありますが治療をします、そしてクリオスの背に乗せて村へと戻っていただきます』
マリーダはもう一度頷いた。
『そして村に戻ったらルファム様やほかの神官たちに敵は強力なチカラを持ち、我々の探知をすり抜けると伝えてください!』
ノコームさんの必死な表情にただただ頷くことしか出来なかった
『父上とも約束したのに、マリーダさんたちに怪我をさせてしまいました、破ってしまい申し訳ありませんでした!もしも帰れた時にはどんな罰でも受けるつもりです!』
よく見るとノコームさんのお腹も真っ赤に染まっていた。
そこからはあっという間だった。
私を含む4人はノコームさんと2人の衛士さんの手によってクリオスの背中にロープで縛られてその場を後にする時、遠くに見えた巨大な何かに向かっていくノコームさんたちの後ろ姿を最後に私は気を失った。
次に気がついた時、私たち4人は村の医務宮にある一室のベッドの上だった。
自分たちが助かった事、ノマークさんたちがこな場にいない事、色んな感情がぐちゃぐちゃになっていたが、ノコームさんたちとの約束を果たすために、私は自分たちに起きたことの顛末を語り出した。
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『そうだったのですね、ノマークたちは立派に責務を果たしたのですね』
私は泣きじゃくるマリーダを抱きしめ、彼女が泣き疲れて眠るまでずっとそうしていた。
パート2も読んでもらえると嬉しいです!