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第三話 何事も準備は大切ですね

まだ行きません 笑

 あれからおよそ1時間


 俺はとある山の登山道を歩いていた。


 これまでの自分の生き方やこの先の人生への不安など全部ひっくるめて考えたくなくなった俺は、最近じゃ勝手に窓が下がってしまう愛車のミニバンを走らせ、地元では比較的登りやすいと言われている山まで来ていたのだ。


 この山は今から何百年も前に大きな噴火があり、その時にできた湖を山頂から見る事ができると言うのが最近の若い人たちにも人気の登山スポットらしい


 かく言う俺も今から15年以上前に、うちの会社の従業員で登山が趣味の当時60代のおじちゃんに一度だけこの山に連れてきてもらった事があって、その時の俺は登山になんてなんの興味もなかったし、たまたま仕事の休憩中に何となく話を合わせているうちに一緒に登山する約束になっただけだった。


 今と違って若い頃の俺は、自分は何でも出来ると思っているハッキリ言ってめちゃくちゃアホな若僧だったから、服装だってTシャツにデニムパンツ、靴なんて某ブランドのスニーカーと言う、山を舐めたものだった。


 唯一しっかりと持ってきたものは、山頂で景色を眺めながら飲むためのジュースとつまみの魚肉ソーセージ、そして朝飯がわりのコンビニのおにぎりの入ったバックパックだけだった。


 あの時は途中で雨が降り、おじちゃんが持ってきた予備の雨ガッパを借りて、足元がぬかるむ中スニーカーを泥だらけにして無事に山頂に到着し、辺りを見渡せば一面に広がる霧、霧、霧


 正直言ってめちゃくちゃガッカリしてしまった。


 そこそこ汗もかいたし、そこそこしんどい思いをしたのに山頂にはなんの絶景も広がっていなかったのだ。


 だけど、そんな俺の下がりまくったテンションを一気にてっぺんまで上げてくれたのが、頂上でいただいたジュース、魚肉ソーセージ、コンビニおにぎりだったのだ。


 俺の他にも登山者はいたが、どうせ霧のせいで周りなんて見えちゃいないと思い、気圧のせいかいつもよりハリを感じる赤が特徴の炭酸飲料をバッグから取り出し


 プシュァッ!


 ほんの少しだけ吹きこぼれた泡ごと口に運んだ瞬間、それまで感じた事がないほどの美味さにショックを受けてしまったのだった。


「めちゃくちゃ美味いな!」


 心からの言葉だった

 疲れた体と乾いた喉に染み渡る様な味だった

 そうなるとつまみが欲しくなるのは仕方がない事で矢継ぎ早にバッグからソーセージとおにぎりを出して食べたのだが、これがまたべらぼうに美味くて今でも忘れられない味になったのだ。


 それらわ食べ終えて下山する時に膝がガクガクした事を思い出し、少しだけニヤッとしながら俺はあの時と同じ登山道を歩いている。


 作業服に安全靴と言う、15年前の俺が見てもヘンテコな服装でひたすら山登りをする俺の背中には、あの時よりも少し高級なバックパック、そしてその中にはあの時と同じ三種の神器が入っているのだった。






次こそ行きます!

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