第十五話 おっさんはベールに包まれています
更新が遅れてしまいすみません。
1人でも多くの方に読んでもらえると幸せです。
この世界に来てからずっと驚かさせることばかりだ。でっかい木、でっかいヘビ、でっかいゴブリン、でっかいエルフに魔法なんて日本じゃまず体験することはなかっただろう。
だけど1番驚いている事がある
それは
「俺の体どうなっちゃってんの?」
自分の体の異常なまでの強靭さだった。
ゴブリン達と戦った時もそうだが、先ほどから長い事とフォッゾさんに青白く光を纏った木製の槍で殴りつけられているはずなのに、ほとんど痛みを感じないのだ。
ハッキリ言ってはじめのうちはビビって避ける事もできないほとんど袋叩き状態だった、こんな大男に棒でしばかれたら普通の人間なら一撃で昏倒、もしくは命の危険すらあるはずなのに、俺は全くと言っていいほど痛みを感じなかった。
なんならずっと棒を振るっているフォッゾさんが苦しそうな表情を浮かべ肩で息をしている始末、最初は目をつぶって丸まっているのがやっとだったフォッゾさんの攻撃も、今では打ち込みからの軌道すらハッキリと視認できている。
なんなら棒の木目まではっきりわかるくらいだ。
先日ボコボコにしたデカサイズゴブリン達の攻撃も当たりはすれど、大した痛みもなくそのうち目で確認してから避けられるようになり、しまいにはコチラの攻撃だけ一方的に相手に当てていたのだ。
ろくに喧嘩すらしたことない日本人のおっさんには分不相応なチカラだけれど、こんな奇想天外な世界で生きるには正直ありがたいと思った。
そんな事すら考える余裕があったからか、チラリと脇を見れば、大勢の村人が歓声を上げる中、ルファムさんがキラッキラした瞳でコチラを見ている、さっきまでフォッゾさんを『サイトーさんに失礼ですよ!?』なんて嗜めていたはずなのに今ではすっかりこの勝負の行方が気になってしょうがないって感じだ。
〝ガキン!〟
頭を軽く叩かれた感覚と反比例するかのように大きな打撃音が響き、フォッゾさんが俺から大きく距離をとった。
ぼたぼたと滝のように汗をかきながら構えるフォッゾさんの顔は手合わせ前の好戦的なものから、得体の知れない物を見るようななんとも言えない困惑した表情に変わっていた。
それもそうだろう、俺だって10分以上一方的に殴りつけた相手が平気な顔をして立っていたら同じような顔をしていただろう、て言うかこんな事日本にいたら起きる事すらなかっただろう。
荒くなった呼吸を整えながらフォッゾさんが俺に話しかけてきた。
『これだけワタシの攻撃を受け続けても無傷ですか、サイトー様やはり貴方は特別な存在なのですね』
やっぱりそうなの?だよね、おかしいもんね
「いやぁ、自分でもおかしいなって思っていたんですけど、やっぱり私って変ですよね?」
俺がそう言うとフォッゾさんは大きくため息をつき、下を向いて首を左右に振った。
そして顔を上げると困ったような顔をしながら話を続けた。
『いえいえ、むしろ喜ばしいことです、この村を救ってくださった方に全力でぶつかれる事は武の高みを目指すワタシにとってはこの上ない褒美のようなものです・・・それに・・・』
そう言うとフォッゾさんは、俺に向けて声援を送るルファムさんの方を見るともう一度俺に好戦的な目を向け、槍を上段に構えた。
『壁は高ければ高いほど越える甲斐があると言うものですから!』
そう言うとフォッゾさんは今までで1番の速さでコチラに飛び掛かってきた。
俺はしがないおっさんなんだけどね
コマ送りで見えるんだよなぁ〜、スローモーションがコマ送りになったところで速くは感じないもんで、なんならさっきからずっと絶好のカウンターチャンス到来しまくりなんだよね。
正直今の俺なら飛び込んでくるフォッゾさんの周りを一周しても余裕で迎撃できる自信があります。
だけどね、なんとなくだけど俺は攻撃しちゃいけない気がするんですよ、惚れた女の前で良いところ見せようとする男心もわかるし、なによりもほんの少し前に目の前のゴリマッチョエルフよりも、数段デカいゴブリンが俺の素人パンチ1発で吹き飛んでいたんだもの。
そんなパンチがもしもフォッゾさんに当たったらと思うとどうしても手が出せないんですよ、武術の経験もない俺でもフォッゾさんの技量が半端じゃないんだろうなって事はわかるんだけど、そんな差を帳消しに出来るくらい俺の身体能力が上がっちゃってるんだよなぁ〜。
コマ送りのフォッゾさんが徐々に近づいて来るのをぼんやりと眺めながら熟考した結果
「よし、決めた!」
〝バシィッ!!〟
俺は振り下ろされた棒の先端を掴みながら片膝をついた
「参りましたっ!」
ギブアップする事にしました。
あっけなさすぎる突然の幕切れに会場が静まり返る中
〝パチ、パチ、パチ、パチ〟
ただ1人ルシウムさんが拍手をしてくれた。
『『『うおぉぉぉぉぉー!?』』』
その拍手から一拍置いて村の人達の大歓声が聞こえてきた。
『凄いものを見せてもらいました!』
『さすがは我らが衛士長フォッゾ様だ』
そう言いながら駆け寄ってくるおそらくフォッゾさんの部下の方々、そして肩で息をしながらも俺の方をジッと見つめるフォッゾさん。
〝バッ!〟
『ありがとうございましたっ!?』
槍を持ったまま勢いよく俺に頭を下げたフォッゾさんは、一度だけ俺の背後に目を向けるとすぐに『さぁ、これから夜警の続きだ!』なんて言いながらこの場から離れていった。
部下の皆さん、ご愁傷様。
そして俺もなんとなく後ろにいる人が誰だかわかっていたので、ゆっくりと立ち上がりながら振り返ると、そこには予想通りの人が立っていた。
『カツヒコさん、フォッゾ衛士長のわがままにお付き合いくださりありがとうございました、きっと衛士長も己の未熟さを知り、益々の研鑽を積むことでしょう』
「ルファムさん、もしかして私がワザと負けたのってバレバレでしたかね?」
俺がそう言うと、ルファムさんはクスリと笑った。
『さぁ、どうでしょう?周りで見ていたものにはフォッゾ衛士長の一方的な試合に見えたかも知れません、しかし私達のように神力やマナを可視化出来るものには途中から絶望的な差を感じさせる展開になっていたことはわかります、きっと衛士長自身も埋めようのない実力差に愕然としたことでしょう』
え?そんな事あるの?可視化?出来んの?
俺は自分の両手を掲げて見てみる、あれ?目を凝らしてもっと見てみる
見えないんですけど
「あの〜、ルファムさん、私まったく見えないんですけど、私からなにか出ていますかね?」
俺が情けない顔でルファムさんにそう聞くと、ルファムさんは一瞬だけ驚いたような表情を浮かべた
『カツヒコさん、本当に見えていないのですか?』
「はい、全然まったく何にも見えませんね、ただフォッゾさんの槍が青白く光ってたのはわかりました」
『光が自身の輝きを認識できないのは常に己が光を放ち続けているからではないでしょうか』
俺の答えに呼応するかのように突然ルファムさんの隣にルシウムさんが現れた。いや、だからなんで貴方はそこにいるんだよ!ちょっとこわいよ!
『そうですね、己が光を意識する事なく放っていればそれは私たちが呼吸する事と同じくただただ自然のことですものね、私としたことが大切なことを失念していました』
またなんだかよくわからないうちに完結させようとしてないか?
「結局のところ私の体からなにか出ているんですかね?」
俺がそう言うとルファムさんとルシウムさんは顔を見合わせ、俺に満面の笑みを見せながら
『『神々しいほど純白のマナを纏われています(よ)』』
いやハモるかいっ!?
幕間を挟む予定だったのですが、文章が長くなり過ぎるかなと思いまして途中で断念しました。
これからも1人でも多くの方に読んでもらえるように頑張ります。




