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第八話 旅の恥はやっぱり恥

すみません、なんだかんだでお盆は飲み会に溺れてしまいました。


ブックマークってよくわかってないんですが、登録していただいた方ありがとうございます。


とあるビルの1室で俺はスーツに身を包み、自分よりもひと回り近く歳下の上司の机の前でひたすら頭を下げていた。



「お前何やってんだよっ!?今月ひとつも契約取れてないのお前だけだぞ!?」


「すみません」


「すみませんじゃねぇんだよ!ふざけてんのか?ぁあ!?何しに会社来てんだよ!?弁当食って帰るのがテメェの仕事か?」


「・・・いいえ、違います」


「何が違うんだよ?ここは使えねぇおっさんにメシ食わせるために金払うところじゃねぇんだわ!?わかってんのかよ!?」


「はい、すみません・・・すみません」


「お前面接の時なんて言ってたっけ?『現場仕事で養った体力と根性で頑張ります』なんて古臭ぇこと言ってたよな?俺は反対したんだよ、こんな現場仕事しかしてこなかったおっさん雇うのなんて金の無駄だって」


「・・・・」


「たまたま試用期間中にちいせぇ契約一個取って来たのを部長がまにうけたせいで、なんで俺の下にこんな使えねぇおっさんよこしたんだよ」


「・・・・」


「あれ?なんだ?泣いてんのか?おいおいおい、やめてくれよ〜、何が根性あるだよいい歳したおっさんが気持ち悪りぃ〜なぁ、こんなんじゃまるで俺が泣かせたみたいじゃん」


「・・・すみません」


「だよな?俺は何にも悪くないよな?お前が勝手に泣いてるんだもんな?なぁ、みんな、俺は仕事が出来ない中年のおっさんにアドバイスしてやってるだけだよなぁ!?」


背後からクスクスと笑う声が聞こえる


悔しい

情けない

悔しい


睨みつけてやりたいのに、なぜか頭を上げることができない

まるで何かに上から押さえつけられているようだ


歯を食いしばりながら無理やり頭を起こそうとした時



目の前に茶色の壁が現れた。




「あれっ!?えっ?なんだ?・・・え?」


壁だと思っていたのは天井だった


どうやら眠っていたらしい

やたらと胸がドキドキしていた。


なんだかすごく嫌な夢を見ていたような気がするが、うまく思い出せない、なんの夢だったのだろう?

ボーッとした頭を起こすと、やたらと広いベッドの上だった。


「え?ここどこ?」


木造建築らしい部屋と、少し湿ったような匂い


「もしかして山小屋?おやおやおや?俺は山で霧に包まれて遭難したんだよな?それでもって霧が晴れたらよくわからない超でかい木の生えた森の中にいて、超でかい蛇から逃げて・・・エルフと一緒に化け物退治?・・・いや、そっちの方がよっぽど夢だろ!?」


もしかしたら、山で遭難→気を失う→救助隊に発見される→山小屋に搬送される→意識が戻る(今ここ)

の可能性の方が高い気がする。


「そうか、そうだよな、全部夢だよな・・・」


俺は山から生きて帰ってこれた嬉しさよりも、あの非現実的な世界が夢だったことが残念でしかたなかった。


「それにしても、やたらとフカフカなベッドだな」


山小屋や避難小屋とは思えないほど上質なベッドと驚くくらい軽い掛け布団に感心していると、俺はあることに気がついた。


「俺、服着てなくね?」


そこにはほぼ全裸で下半身に布を巻かれたおっさんの姿があった。


「え?え?え?え?なんで?え?なんで服着てないの?え?てか服は?靴は?バッグは?」


突然の発見にパニクった俺は、そんな格好のままベッドを降りようした。


〝コン、コン、コン〟


すると部屋の外からドアをノックする音が聞こえた。


「は、はい!」


反射的に返事を返した俺は自分の惨状を思い出し、急いでベッドに潜り込んだ


『失礼致します、大神樹の村副神官長ルシウム入室させていただきます!』


は?なんて?だいしん?・・・なんて?


あまりにも聞き馴染みのない言葉に困惑する俺をよそに、ドアが開き入ってきた人物を見て自分の推理が間違っていたことに気がついた。


「あれ?リーダーさん?」


その人物は俺が夢だと思っていた化け物退治に協力してくれた白銀トカゲ兵団のリーダーさんだった。


キラキラでサラサラな金髪、モデルさんが裸足で逃げ出すほどのヴィジュアルとスタイル、何より特徴的なピンと伸びた耳


「やっぱり夢じゃなかったんだ・・・」


思わず呟いた俺のベッドの前まで歩いてきたリーダーさんが、突然膝を折り頭を下げた。


『聖人様、改めましてご挨拶させていただきたく存じます、ワタクシこの大神樹の村で副神官長を勤めております、ルシウムでございます、この度は村の窮地をお救いいただき誠に有難うございました、神官長ルファムが養生中につき、ワタクシが代表して挨拶をさせていただきました』


まただよ、またよくわからない事を言いながら頭下げちゃってるよ・・・


「あ、あの、ルシウムさん?」


『はっ!?』


頭を下げたまま返事を返してくる。


「あのですね〜、私が落ち着かないので、できれば頭を上げてくださると助かるんですけど・・・」


『はっ!?御寛大なお心遣いに感謝致します』


そう言うとスクッと立ち上がるルシウムさん、やはりひとつひとつの所作が洗練されていて、そのキラキラしたオーラ?に圧倒されそうだ。


ここはどこなのか?なんであんな化け物と戦ったのか?色々と尋ねたいことがあったけど、とにかく今の俺が何よりも優先すべき事を尋ねてみた。


「ちょっとお聞きしたいんですけど、私の服ってどうなっちゃってますかね?」


するとルシウムさんは、これまたキラッキラ輝いた笑顔を俺に向けた。

たぶん同性だと思うけどドキッとするような笑顔だ


『はい、差し出がましいこととは思いましたが、先の戦闘でだいぶ汚れていたようなので、こちらで洗濯させて頂きました、そして体の汚れも隅々まで丁寧に拭き上げさせて頂きました・・・なにか不手際がありましたでしょうか?』


おおおおお、マジか?

不手際とかの話じゃないだろ?

寝ている間に脱がされたんだな

こんなだらしないおっさんの体を拭かせたか

・・・隅々まで・・隅々までっ!?


ハズイッ!?恥ずかしすぎる!

四十超えたおっさんが知らない人に裸を見られて、その上いじくりまわされた?なんて・・・

顔から火が出そう


「つかぬ事をお聞きしますけど、それはルシウムさんが脱がせてくれたって事ですか?」


『いえ、今回聖人様のお世話をさせていただいたのは医務宮にいる医務官たちです、いずれも信用のおけるものたちですのでご安心ください』


「は、はぁ」


柔らかい物腰なのに、やたらと嬉々とした表情のルシウムさんに気おされる、やはり結構な人数に裸体をさらしたのか・・・超恥ずかしい

旅の恥はかき捨てって言うけど、恥ずかしいモノは恥ずかしいのだ。


でも、もうひとつ俺がずっと気になっている事を尋ねてみた。


「あの〜、もうひとつお聞きしたかったんですけど良いですか?」


俺の問いかけにルシウムさんは満面の笑みを浮かべて答えた。


『はい、私が答えられることであれば、なんなりとお聞きください』


「私のことを、セイジンって呼ぶのはなんででしょうか?」







『え?』




「え?」

ポカンとした表情のルシウムさんに対し、俺も反応してしまった。


妙な沈黙を破ったのは、ドアの向こうから聞こえた声だった。



『失礼します、ただいまルファム神官長がおみえになりました!』


だれでもいいから、この空気を破ってほしいと思っていた時に聞こえた声に、俺は少なからず安堵していた。










































お盆も終わりましたが、余韻を楽しむように読んでいただけると幸せです!



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