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9・施設と共犯者

ついに真犯人と思われる人物が、

過去の自分が残したメモで判明した。


だが僕には1つ引っかかっている事があった。


それは自分が退所する時期を、

あの人がどうやって知り得たのかである。


施設内の個人情報は秘密になっているはず。

ということは誰かが漏洩したのではないだろうか?

ということは共犯者が居ることになる。

だって施設内で、

あの人の姿を見たことなんてないのだから。


だとしたらそれは許されないことだ。


個人情報の漏洩も然ることながら、

もっと罪深いことがある。


自立支援施設には様々な事情を抱えた、

子供たちが入所している。

中には本当に酷い目にあって、

致し方なく罪を犯してしまった子だっているはず。


そんな傷を負っているはずの子たちがいる所であり、

いずれにしても彼らの未来を考え、

更生を支援する場所なのに。


犯罪者が犯罪目的で混ざっていていいはずがない!

しかも僕のせいで!


イサムーンだったら、SEI先生だったら。

知ってて見過ごしたりしないはずだ。

僕には潜り込んでいるそいつが誰なのか、

知って対処する責任がある。


腹から沸き立つ強い憤りと自責の念を感じ、

翌日には育ててもらった施設の方へと赴いた。


「やぁ、海斗くん、

もうホームシックになったのかい?」


ニヤリと人懐っこい笑顔を向けながら、

割腹の良い体を揺らして所長が出迎えてくれた。


「あはは。

まだ引っ越して数日なのにね。」


笑い返しながら僕は周囲を見渡した。


「みんな変わりないですか?」


この質問をした理由は。


もし共犯者が潜り込んでいたならば、

用済みのこの施設から居なくなっているのでは、

と考えたからだ。


僕がソイツならダラダラ長居して、

身バレでもしたらマズイと不安になるだろうし。


所長はタプンとした顔の上のズリ下がったメガネを、

右手の中指でクイッと上げながら答えた、


「うん、みんな相変わらずだよ〜。

あっ、でも、

残念だけど先生が1人辞めちゃったんだよね。」


僕の心臓はドクンと跳ね上がった。


「えっ、それは誰なんですか?」


「ほら、海斗くんも良く懐いていた…。

沙羅先生だよ。」


心臓はさらに早鐘のように打ち出した。


そんな…。

沙羅先生は地道だけど真面目で大人しくて、

小柄でオットリとした女性だった。

接しやすい雰囲気があって、

子供たちに懐かれていた人だったし、

僕も多分に漏れずそうだった。


あんな優しそうな人が!!


愕然として固まってしまった僕に、

所長は不思議そうな表情で声をかけてくれた。


「あれ、そんなにショックだったのかい?」


いけない、

ヘンな様子を見せちゃダメだ。


「うん、驚き過ぎちゃった。

けどしょうがないよね。」


僕は笑顔を作りながら、

これからどうするかを考えたのだった。

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