8・幼い自分からのメッセージと真犯人
記憶を頼りに昼過ぎに殺人現場である、
実家のあった土地まで辿り着いた。
伯父からも聞いていたしさっき叔母も言っていたが、
アパートと家は無くなっていて更地になっていた。
もう随分昔のこととはいえ、
やはり殺人事件のあった場所であるこの土地には、
なかなか買い手がつかないのだろう。
「売地」の看板が立てられていた。
しばらく眺めていたら、
過去にタイムリープしていたにも関わらず、
妙に懐かしくなってしまった。
そして無意識に、
ロープの張られているまっ更な土地の中に入って、
ポツポツと歩いてしまった。
ここが自宅でここらへんが僕の部屋だった。
それでここが居間で、あっちが庭だったよな。
そうそう庭には柿の木があって、
その実を食べるのが大好きだったんだ。
僕は思わず柿の木のあった場所に歩み寄った。
ここいらへんに生えていて秋には甘い香りがして…。
と思いにふけっているとフと脳裏に、
この辺りを掘った映像が浮かんだ。
あっ、そういえば時々、
柿の木の根元周辺を掘って遊んでいた気がする。
アリを捕まえたりしていたような。
それなら何かを埋めているかもしれない。
そう思い付いて途中で念のために購入した、
百均のシャベルをリュックから取り出し、
地道に掘り返す作業に取り掛かった。
この作業は夕方まで続けることになった。
同じ作業を続けたせいで、
もうヘトヘトで腕が痛くなりかけた時。
ついに「カツッ」という石とは違う、
軽い感触の手応えを感じた。
焦らずゆっくりと物体の周りから土を掘り返し、
それを取り出すことに成功した。
…そして、
出て来たものはガチャポンのカプセルだった。
僕は首を傾げながら、
少し薄暗くなって来たので夕日に向けてかざし、
中身を眺めてみた。
どうやら中に薬とメモが入っているようだった。
その収穫に鼓動が早くなるのを感じながら、
深呼吸して震える手でカプセルを開いてみた。
中にあったメモにはこんな事が書かれていた。
「クスリのむのイヤだ。
ヘンなかんじでねむくなる。
◯◯さんにもらったってかあさんいってた。
でものみたくない。でもいえない。
だからかくしちゃえ。」
僕の動悸はさらに早くなり脂汗が出るのを感じた。
…ついに真犯人が分かった。
そして幼い自分はイヤな物も負の感情も現実も、
全てを土に埋めてしまいたかったのだろうと思った。