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5・漫画家の真実とタイムリープの真相


体が…頭が重い。


重くて動きたくないが、

無意識に動かなくてはいけないと感じた。

僕はノロノロと瞼を上げどうにか上半身を起こした。


あれ、ここはタイムリープする前にいたアパート…。


そう思った瞬間、

自分が殺された時の痛みやショックそして、

ついさっき見た凄惨な殺人現場の、

不気味さとグロテスクさを思い起こしてしまい、

胃から吐き気が上がって来た。


僕は込み上げるものをなんとか抑え、

這いつくばってトイレまで行き嘔吐した。


出すとちょっとスッキリし落ち着いたおかげで、

脳が少しずつ動き始めた。


まず犯行を止められなかった悔しさが襲って来た。

だがその後一つの収穫を得られたと思った。

それはやったのは僕ではなく、

真犯人が別にいるということである。


次に深呼吸して現状の把握をしようと考え、

本当に現代に戻ったか確認することにした。


そこでバッグを探しスマホを取り出して、

日時の確認をした。


2025年の4月10日17時過ぎ。

引っ越し当日かつ殺される約5日前になる。


周囲を見渡すとタイムリープ前のように、

片付け途中の段ボールが置かれていた。


やはり現代に戻って来たんだな。

そして真犯人は僕に罪を擦り付けた…。


そう思いつつまだ半分ボーっとした頭のまま、

何気なく段ボールの中を覗いてみた。


すると、

記憶にない手紙が2通入っているのに気付いた。


不思議に思い1通目を手に取り差出人を確認すると、

それは伯父である長壁誠人からのものであった。


書かれていた事を要約すると、


・施設の規則で最長20歳直前まではそこにいられる。

・重要な用事がない限り施設外へ出ないように。

・どうしても出る場合はしっかり用心するように。

・何かあったら自分に連絡すること。


ということだった。


なんで彼は、

施設外に出ないよう念を押しているんだろう?

もしかして何か知っているのだろうか…。


後で伯父に電話しようと考えながら、

次に残るもう1通の手紙を手に取った。


それは大好きだったあの、

漫画家であるSEIからのものであった。


えっ、彼から手紙をもらってたんだ!?


推しからと分かり一瞬脳内が混乱したが、

恐る恐る封筒から中身を出して開いてみのだった。



「海斗くんへ。

この前は会えて楽しかったよ。

親が死んでしまったこと、

犯人は君だと決め付けられたこと、

慣れない施設での生活。

色々大変だと思う。


実はあたしは病気でもう命が長くない。

それが分かった時、

自分がこの世で一番不幸なんじゃないかと思ってしまった。


けれど君からファンレターをもらって、

読んで事情を知って、

幼い子がこんな想いをしているんだと知ったんだ。

そしてそんな君が、

あたしの作品で元気をもらってると、

そう言ってくれている。


こんなに幸せなことは無いと思った。

そして君に会ってみたいと思った。


ぶっちゃけるとね、

女のあたしが少年漫画を描くのは、

いろいろと大変なんだ。

その上病気になっちゃって上手く絵が描けない。


それで挫けそうになったけど、

辛い中生きている君の姿を見て勇気をもらった。


君は今のあたしにとってヒーローなんだよ。


あたしも頑張って生きて最期まで漫画を描くよ。

そしてずっと応援してる。


あっ、そうそう。

お礼に天国に行ったら神様に交渉してあげるね。

2回だけ一番戻りたい過去にタイムリープできるようお願いしてあげる。

このお願い通ったらかなり面白くない?

2回なら通りそうでしょ?


あたしは実際に海斗くんに会って、

犯人は君じゃないと感じたからさ。

タイムリープして真犯人見つけちゃいなよね。


じゃあ先に天国に行ってるね。

ありがとう、あたしのヒーロー。」

 


封筒には便箋以外にもう1枚入っていて、

それは子供の自分と写っているSEI先生の写真だった。


SEI先生は20代位の美しい女性。

黒いショートヘアの下にキリッと整った顔立ち、

白い肌に黒のシャツとジーンズがとても似合っていた。


僕は熱い涙が勝手に溢れ出すのを、

止めることが出来なかった。

思わず肩を震わせ嗚咽してしまった。


自立支援施設に入所後に、

送ったファンレターが切っ掛けで、

こんな素晴らしい出会いがあった事を、

スッカリ忘れていたなんて。


わざわざ施設まで会いに来てくれたというのに、

彼女のことを忘れて男性だと思い込んでいたし、

理解者などいないと思っていた。


ずっと自分こそ世界で一番不幸だと思い込んでいた。

誰からも本当には気にかけてもらえないと思ってた。


けれどずっと不思議に思っていたタイムリープは、

SEI先生からのプレゼントだったのだ。

約束してくれた通り神様に交渉してくれんだ。


そしてこんなダメ人間をヒーローと呼んでくれた。


うん、約束する、真犯人見つけるよ。

それでこんなクソみたいな運命変えてやるから!

見ててね先生!


よしまずは1度目のタイムリープで起こった、

出来事や引っかかる点をまとめてみよう。


僕は元気を取り戻したおかげか空腹を感じたので、

お湯を沸かしカップラーメンを作った。

それを頬張りながらメモ帳に、

出来事などを書き出し始めた。


この方が頭の中が整理されて、

新たな発見があると思ったからだ。


まずは出来事を順に棚卸しする。


一・2013年4月10日 

過去に戻った。数日過ごすが両親はやはり毒親だと実感する。辛い時間をやり過ごすために加藤清史さんの部屋へ行ったり、猫に餌やりをした。学校では友達はおらずほぼ1人で過ごす。


二・同年4月中旬

小学校の担任教師が家庭訪問。両親は外面良く対応していた。


三・同年4月下旬

父に命令されアパート住民の家賃を受け取りに行く。加藤清史さんは自分できちんと届けに来てくれていたので、1階の鈴木家と田中家を訪問。鈴木家は夫が無職で妻が仕事をし、子供3人居て経済困窮、雰囲気が暗い。田中家は妻が精神疾患でいつも苛立っているが、夫は無関心で仕事も定職に就いておらず、子供は1人。どちらも問題ありだがうちの両親との仲は不明。


四・同年5月上旬

親戚がうちに次々とやって来た。長壁誠人伯父さんと会話をしたが、なんとなく意味深な気がした。叔父は本当に母の様子を見に来ていただけなのだろうか?


五・同年6月中旬

こっそり餌やりをしていた野良の子猫が死んでいた。その死体にショックを受けたと同時に違和感を感じる。


六・同年6月下旬

風邪を引き病院に行く。虚弱体質のため小学生になる少し前から、毎晩薬を飲まされていたが、風邪薬が加わり苦痛を感じる。

風邪が良くなった辺りでまた鈴木家田中家へ家賃の回収に行かされる。彼らは相変わらずだった。


七・同年7月15日

事件は予定通りに起こった。居間からは犯人に繋がるヒントは出なかった。僕が寝ている間に実行されていた。


※引っかかる点

・毒親である両親が他人から恨まれる可能性はあるが内弁慶で外面がいい。なので本性を出しやすい、近しい人間なのではないか。

・アパート住民は全員生活困窮者だから、金品目的で襲う可能性があるかも。もしくは家賃関係とかで恨まれていたか。

・加藤清史さんはきちんとしていたし除外される?

・父親の仕事関係者という可能性もあるか?

・伯父は何か知っている?本当に善良な人間なのか?

・子猫の死体になぜ違和感があったのか。


書きながら急にピンと来た。


違和感の正体は子猫に抵抗した後がなかったからだ。


あの倉庫は父の仕事道具を入れていた物だから、

おが屑やほこりも多く汚かった。

そこで暴れたりしたなら、

もっと体が汚れていたはずなのに、

比較的キレイな体のままお腹と背中を刺されていた。


「刺されていた」というのは、

ナイフのような感じではなく、

鋭利な(きり)?ピッグ?のようなもので、

穴が開いていたような感じだった。

これが3、4ヶ所くらいあった。


最初動物の牙の跡かとも思ったが、

牙ならもっと歯形が残っているはずだし、

抵抗した後だってあったはず。


ということは人間の仕業に違いない。


逃げたり抗ったり出来ないようにして殺したんだ。


一体誰が何の目的でやったのだろう…。


しばらく考えたが思い浮かばなかったので一旦脇に置き、

とりあえず伯父に電話して会う約束を取り付けたのだった。

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