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4・殺人現場と血に濡れた手


猫の死の真相は分からないまま時が過ぎた。


僕はとにかく周囲を意識しながら生活をし、

緊張してしまったせいだろうか。

風邪を引いて発熱してしまい、

母に連れられて病院を受診した。


元々が虚弱体質なせいか体調を崩しやすタイプで、

幼少期から色々な薬を飲まされていた。

だがなかなか慣れず、

夜のお薬タイムが苦痛だったのを思い出した。

改めてこうして飲んでみると子供の味覚や喉には、

粉は苦く粒はつかえるものだと感じた。


そうこうしている内に、

ここからさらに時が進み。


養生などをしている間に、

ついに7月15日を迎えてしまった。


僕は意を決して仮病を使い、

(母はまた体調不良かとイヤな顔をした)

朝から事件のヒントになるものを、

目を皿のようにして探した。


なぜなら結局犯人は、

学校関係者ではないと判断したからだ。


これも思い出したことだが、

両親は内弁慶というヤツで外面が良かった。


担任の先生が家庭訪問に来た時もやはり、

良い親を演じ当たり障りなく接していた。

さらに友人がほぼ居なかった僕とその両親が、

学校の生徒に恨まれる可能性も低かった。


やはり近しい人間の方があり得るだろうと考え、

犯行現場である家に残ることにしたのだ。


加えて言えば、

これで再度親が殺されることがあったなら、

容疑者から僕が外れることになる。


だってすでに事件について知っている僕は、

もう殺す気なんて無くなったのだから。


あの親のために犯罪者になりレッテルを貼られ、

職にあぶれ人生を台無しにするのはすごく勿体無い。

今はそう思っている。


今日上手くヒントを見つけ出し、

事前に犯行を止められたなら、

きっとそれはそれで良いことなんじゃなかろうか。


ぶっちゃけ死んで欲しい位のイヤな人間だが、

犯人が殺しに手を染めるのを阻止することは、

きっと善い行いなのではないだろうか。


…さぁ、捜索を続けよう。


確か警察官や叔父さんから聞いた話では、

夜に居間で両親が殺されたんだよな。


凶器は台所の包丁で急所を数カ所刺されていたとか。

そして包丁から僕の指紋が検出されたとか。

そんなことを言っていた。

家の包丁だから家族の指紋が出るのは当たり前だけど、

母と僕以外の指紋は出なかったらしい。


うーん、そうすると、

包丁はあんまりヒントにならないかな。


僕は居間と台所を中心に、

棚の上部やカーペットの下まで隈無く探ってみたが、

怪しいものはなに一つ出て来なかった。


家に仕掛けをされて殺し易い状況を作られた、

という線ではないのかな。


病み上がりの僕は探し疲れてソファに座り込んだ。

すると抗えない眠気に襲われて、

うっかりそのまま寝落ちてしまった。


もしかしたら、

タイムリープする前は本当に犯人が僕自身で、

犯行しないと決めた事により未来が変わり、

何も起きない可能性もある。

と、少し油断して気が緩んでしまったのもあった。


そして眠りから覚めて仕舞ったと飛び起きた時。


すでに事はなされていた後であった。


いつの間にか外はどっぷりと耽っていて、

帰宅していた父母がテーブルに座っており、

背中から赤い液体をドクドクと垂れ流していた。


それと同時に部屋に充満する鉄のような臭い。


僕の寝ていた傍らに落ちている血まみれの包丁。


自分の手はドロリとした、

絵の具とは違う明らかに血液と思われるそれが、

不気味にまとわりついていた。


実際に見た殺人現場の情景は聞きしに勝る凄惨さで、

僕は息を飲み頭が静かに錯乱するのを感じた。


そしてそのまま意識を失ってしまったのだった。


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