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2・タイムリープと実家


う…ん。

僕を呼ぶ声がする、

誰だろう聞いた事がある声。


「海斗、起きなさい!」


ハッ!


聞こえたと同時に重い瞼が開いた。


どこか覚えがある戸建ての天井と部屋の形。

家に使用している木材の香りと窓から差す陽の光。

体を起こすと勉強机やプラモデルがそこにあった。


「いつまで寝てるの学校に遅刻するわよ!」


振り返ると引き戸を遠慮なしに開け放った女性が、

鬼の形相でこちらを睨んでいた。


小柄で痩せた体つきに上下の色の組み合わせの悪い服、

ボサボサの髪の下に神経質そうな顔立ち。

どれを取っても嫌悪の感情が湧き出てくる、

忘れもしない実の母親であった。


「返事くらいしなさいよ!」


彼女は吐き捨てるように言うと、

ドタドタと足音を立てて去って行った。


こんなバカな事があるはずはない、

夢でも見ているのだろうか。


僕はフと自分の手を見てみた。

なんだか小さい気がする。

そこで起き上がって壁にかけてある鏡を覗いてみた。


すると映し出されていたのは、

色白で弱々しい幼い顔面だった。


慌ててカレンダーを確認すると、

書かれていたのは「2012年4月」。


目を疑いもっと確実性の高い、

年月を示すものはないかを考えた。

なぜならカレンダーだと、

単にめくり忘れているだけかもしれないからだ。


「パソコンか携帯電話…。」


つぶやきながら部屋を見渡し、

机の引き出しの中も探ってみたが、

そんなものはどこにも無かった。

そこで部屋を出て台所へ行ってみることにした。


木の軋む廊下を歩きトイレの前を通過し、

恐る恐るドアを開いて中へ入る。

すると母が焼いたであろう、

冷めた黒こげのトーストとマーガリンが、

テーブルの上に置かれてあった。


その向かい側にはピンクの携帯電話が見えた。


多分彼女は今トイレ中だ、

電気がついていたし使用している気配がしたもの。


僕は今ではあまり見かけない目の前のガラケーを、

サッと掴みパカッと開けてみた。


その画面に表示されていたのは、

「2012年4月10日」。


ああ、

カレンダーは間違ってなかったんだ。


ウソみたいな話しだけど、

僕は今7歳の頃にタイムリープしているということ。


イヤ、もしかしたら死の間際にみる、

走馬灯の中にいるのか?


思わず目を擦ったり頬をつねったりしてみたが、

ちゃんと痛いし何も変化は起きなかった。


走馬灯じゃないってことか。


そう思った瞬間に戦慄が走った。


この年の7月15日に運命が狂ったからだ。


2012年7月15日に両親はこの家で死ぬ。

その犯人は他でもないこの僕。


なぜ犯人とされたのかといえば、

動機と現場に証拠からだった。


けれど大人になった今だに、

当時の記憶が曖昧でハッキリしていない。


確かに僕は両親とも殺したいくらい嫌いだった、

ハッキリ言って毒親以外の何者でもなかった。


ヤツらを殺して自分も死にたいと、

何度思ったことだろう。


けれど自分で言うのもなんだが、

ビビりの僕が実際に行動できたのだろうか?


そういう疑念が拭いされないでいる。


…うん。

せっかくタイムリープできたのなら開き直って、

あと3ヶ月の間に何が起こったのか確かめてみよう。


僕はそう決意すると、

母親の携帯を元に戻し冷蔵庫から牛乳を取り出した。

そして中身をコップに注ぐとテーブルについて、

トーストにバリバリとかじりついたのだった。


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