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13・真犯人逮捕と親殺しのゲットバック


僕はずっと、

この人であって欲しくないと思っていたが、

真犯人は加藤清史であった。


これは逮捕後に伯父から教えてもらったことだが、

彼はうちの親を激しく恨んでいたという。


父からは、


「いつまでも下っ端教師でどうする。

だから安い家賃しか払えないんだ。」


と小バカにされ、母からは、


「うちのアパートに居させてやってるんだし、

教師なら海斗の相手くらいできるわよね。」


と子守を押しつけられていたらしい。


プライドを傷つけられ弱みを握られ、 

彼の中の恨みと不満が溢れ出たそうだ。


「そもそも教師っていう仕事はブラックなんだよ。

1人につきどれだけ仕事を抱えさせられるか。

なのに給料は安いから家賃だって節約しないと生活できない。

こっちはそれでも頑張って金を払ってるのに、

あのアパートは騒音が酷くて眠れない。

それをアイツらに言っても注意もしれくれない!


さらに自分の息子の子守まで押し付けて来やがって。

いくら子供相手の仕事をしてるからって、

こっちはクタクタに疲れて帰って来てるんだぞ!

もう限界だったんだよ!」


そう吐露していたとか。


僕は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

両親が失礼であったのはもちろん、

相手の都合も考えずに、

彼の部屋を自分の逃げ場にしていたからだ。


大人だって人間なんだから、

一人の解放される時間だって必要だったよね。


子供で分かっていなかったとはいえ、

僕にも非があったと思った。


そもそも自分の内に籠もらず児童相談所にでも、

親のことを相談していれば良かったんだ。

相談できないなら出来ないで、

もっと何か親から離れる方法とか考えれば良かった。

そうしたら結果は違っていたかもしれない。


彼は…清史さんは。

恨みだけでなく心理的に追い詰められたのだろう。


「それで加藤は家賃を持って行った時に妹から、

海斗くんが夜寝付きが悪いとか虚弱体質であるとか、

本人までなんとなく体調が悪いってことを聞いたらしくて。


その心の隙に入り込むよう同情してみせて信用を獲得した。


さらに知り合いの知り合いの看護師を、

紹介してもらって惚れさせて、

その女性に薬を盗ませていたらしい。


本人も実際騒音とストレスで眠れなくて、

さらに忙しくて医者にも行けなかったそうだから、

同情して窃盗してまで与えてしまったんだろう。


それを使って妹には、

強いものを軽めの睡眠薬とウソをついて最初は通常で、

その後通常処方の2倍を常時服用するように誘導した。

すると過剰摂取で正常な判断も出来なくなるし、

体調もさらに悪くなる。

そこであの日に飲み始めるよう指示し、

見た目を変えサプリメントだと嘘をついて、

本当はこれまでと同じ成分の睡眠薬を渡した。

これを体に良いからと多く飲むよう話した。


つまり犯行当日は相当量の睡眠薬を摂取したことになる。


ついでに風邪薬も飲んでるから、

副作用で眠気どころかさらに昏倒したんだろう。

飲み合わせもよくなかったみたいだし。


そうやって精神を病んだ女が起こした、

一家無理心中事件に見せたかったらしい。


本当はこれで全員死亡して欲しかったらしいが、

心配性の彼は確実に息の根を止めたかった。


まぁ確かに睡眠薬だけだと、

病院の治療で助かることもあるからね。


で、7月15日は、

薬だけで息の根が止まったか確認しに家に入った。

さらにもしも死亡していなかった時のことを考えて、

確実に刺し殺す準備までして侵入した。

その場合の計画では君を生き残らせて、

罪を被せるように仕向けようと考えていた。


加えて確実に殺害するために、

この方法で可能かどうか、

野良猫を使ってテストしたりもしたと言っていた。


そういうことだそうだ。」


彼の強い恨みが伝わる。

僕のこともうっとおしかったのかもしれないな。


そう考えて自分が土に薬を埋めたことが脳裏を掠めた。


彼も僕も辛く苦しい現実を消したかった気持ちは、

同じだったんだなと思った。


そう。


犯人は誰かからもらうにしても、

睡眠薬を入手するのに不自然ではない状態だろうと予測していた。


やっぱりそうだったんだなと思った。


そしてあともう1つ引っかかってることを確認したみた。


「あのね、気になったんだけど。

その盗みをさせられてた看護師さんて、

なんていう名前?」


伯父は顎に手を当てて答えた。


「確か、宗谷沙羅って言ってたと思う。

知ってるかい?」


その名前を聞いた瞬間、

さらに悲しみの感情が強くなったのを感じた。


やっぱり共犯者は沙羅先生だった。

看護師を辞めて施設の先生になる資格を取ってまで、

清史さんのことが好きで尽くしてしまったのかもしれない。


もっと早くに気付いて、

犯罪に手を染める前に止めてあげあかった。


僕は涙が零れそうなのを、

目に力を入れて堪えながら笑顔で答えた。


「ううん、知らない人だったみたい。」


それから数日後。


無事だった僕は両親が回復するまで伯父の家に預けられ、

彼と一緒に見舞いに行くことになった。


意識を取り戻した2人はギャンギャンと、

清史さんの悪口を巻くし立てていた。


やれ恩を仇で返したとか、異常者だとか。


さすがに腹が立った僕は2人に説教をした。


「いい加減にしろ!

被害者ヅラしてんじゃねーよ!

あんたらが清史さんのプライドを、

傷つけたからこんな事になったんだろ!

自分がやられたら騒ぐくせに、

自分のした事を棚に上げてんじゃねーよ!!

彼から見たら加害者なのは、

あんたらも僕も同じなんだからな!!」


普段大声を出したりしない息子の剣幕に、

一瞬ビクッ身を震わせて、

それぞれのベッドで俯いて喋らなくなった。


誠人伯父さんも、


「今回はさすがに海斗くんの言う通りだと思う。

人への接し方を考えた方がいいね。」


と後押ししてくれた。


少しだけ反省したのかその後は、

退院するまで大人しかった。


時は過ぎ。


僕は二十歳になっていた。


清史さんに殺されたあのアパートとは違う、

セキュリティのしっかりしたマンションで、

ペンタブを握りながらコマ割りをし下描きをしている。


そう僕は幼い頃の夢であった漫画家になっていた。


今着手している漫画のタイトルは、


「親殺しのゲットバッグ」


である。


僕はおもむろに机の引き出しを開け、

SEI先生からの手紙を出して開く。


内容はタイムリープ前のものと一部部分変わっていた。

容疑者扱いを慰める内容が消えていて代わりに、

夢を応援してくれる内容に入れ替わっている。


写真の彼女は端正でリンとしてやはり美しかった。

もちろん撮影場所も施設ではなくなり、

書店のサイン会会場に変わっている。


眺めていると、

命を賭してあらゆることを成し遂げた彼女を尊敬し、

感謝する気持ちが止めどなく溢れる。


先生、

僕はあなたのおかげでやり遂げられましたよ。


すでにクセと化している、

心の中のSEI先生との会話を楽しんでいると、

母親からLINEが届いた。


「真面目に働いてますか。

たまには帰って来てください。」


両親は相変わらずのクセ者ではあるが、

あの事件がキッカケで少しだけマシにはなった。

本当にわずかだが言葉を選ぶようになったのだ。

殺されかけたのだから当然だろう。


けれど人間の根本はそうは変わらない。

やはりどこか他人を見下している雰囲気は今もある。


僕は例え血縁者でも嫌いなものは嫌いだという、

自分の本心を受け入れることにした。

なので高校を卒業してすぐに実家を出た。

むしろそれを目標に頑張り抜いた。

バイトで仕事をしながら時間を作って、

漫画を描き投稿し続けた。


そしてどうにかデビューにこぎ着けられた。


こんなにまで心のエンジンをかけられたのは、

ある意味あの事件と両親のおかげでもある。


思わず口の中で小さく呟く。


「僕に最高のネタを与えてくれてありがとう。」


さぁ、

これからどんどん僕の本当の人生を取り戻すぞ!


ヒトトミです。

最後まで読んで頂きありがとうございます。

「親殺しのゲットバック」は

こちらのサイトで初めて書いた作品になります。


そして物語を作るのは好きで、

時々様々なテーマで書いて参りましたが。

タイムリープ×ミステリーは初挑戦でもありました。


ずっとチャレンジしてみたい、

書きたいジャンルだったのですが、

全然形にならず…というか難しい。

苦戦するのに粗だらけの陳腐なものしかできず。


ようやく今回の作品は最後まで形にできました。

(形にできただけで粗だらけなのは変わりませんが。)


ちなみに海斗の幼少期の経験は、

わたしが実際に経験した事を元にしております。


それからこの作品のスピンオフとして、

漫画家SEI視点の物語を書きました。

もしよろしけれ合わせてお読み頂ければと思います。


まだまだ未熟なわたしの作品を読んでくださりしかも、

ブックマークやイイネをくださった皆様。


本当に心より感謝しております!

励みになります!


これからも懲りずにどうぞよろしくお願い致します。

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