12・戦略と殺人事件当日
ついに当日になった。
僕は念のため学校を休み、
準備を整えながら時間になるのを待つことにした。
そして夜になり犯行時刻となった。
両親も僕も夕食を終え居間にいた。
いつも通りに母から薬を出されたが、
僕は飲むフリをして隠した。
そもそも今回のタイムリープから出された薬は、
全て飲まずにやり過ごしている。
元々本当に寝付きが悪いから、
薬を飲まないと夜眠れなかったが、
体調については服用しない方が良かった。
前回のタイムリープ同様少し風邪を引いたが、
飲まない方が回復が早かった。
やはり子供の僕にとって、
あまり良くない薬だったのかもしれない。
さて話は戻り。
父は風邪薬とサプリメントだと言われ、
母から出されたものを飲んだ。
そして母も普段から服用していたものを、
普段通りに水で飲み干していた。
それから約30分程度で親が動かなくなってしまった。
意識が混濁しているか眠ってしまったのだろう。
そう思った瞬間。
全身黒ずくめでマスクにサングラスをした人物が、
静かにそっと侵入して来た。
僕は寝たフリをしながら、
薄目を開けてその姿を確認する。
多分慎重な性格なのだろう、
刑事ドラマのようにビニール袋を足にしっかり嵌め、
ゴム手袋に透明なカッパまで着込んでいた。
返り血を浴びることや、
証拠が残ることを想定してのことだろう。
そいつはゆっくりと台所まで行くと包丁を取り出し、
テーブルに突っ伏している母の側まで行く。
そしてその背中めがけて大きく振りかぶった瞬間…。
僕は飛び起きて犯人の手めがけて、
ソファとクッションの間に隠しておいた、
材木の棒切れを叩き込んだ。
空いている時間に父の倉庫で、
手に馴染み攻撃力のある武器を探したのだが、
これはジャストフィットだったらしい。
子供の力でも充分に痛かったらしく、
そいつは包丁を取り落とした。
犯人は小さく呻きながら手を抑え、
驚いた様子こちらを振り返る。
そしてすぐさまに踵を返し逃げようとした。
僕は咄嗟に叫んだ。
「伯父さん、お願い!」
しかし縁側から飛び込んで来た誠人伯父さんに、
ギリギリと取り押さえられのだった。
実はあのファミレスでの食事の時。
伯父については犯人ではないと確信が持てたので、
「7月15日の夜にお前ら一家を殺しに行く。
っていう非通知の電話が家電にかかって来たんだ。
真に迫ってたからウソとは思えないよ。
僕は怖くて怖くて毎日震えてる。
伯父さんこの日の夜うちを警備してくれないかな?
父さん母さんには秘密でさ。
あの人たちに言ったらまともに相手してくれないと思うし。
伯父さん前に何かあったら相談しなって言ってたよね?」
とお願いをしていた。
伯父さんは苦笑し、
「仕事の勤務日時を調整してみる、
心配だし放っておけないしね。」
と答えながらそれでも快く引き受けてくれた。
それで周辺を警備しながら待機していてくれたのだ。
もちろん脅しの電話はウソである。
…以前本で読んだことがあった。
ウソの中に本当のことを少し混ぜると、
全て真実かのように信憑性が増すと。
電話はウソでも殺しに来るのは本当だし、
僕が毎日震えていたのも本当である。
武者震いでもあったが恐怖の震えでもあった。
伯父には申し訳ないがそれを使わせてもらった。
だって背に腹は代えられないからね。
さて、
突っ伏したそいつの顔からサングラスが落ちて、
ついにその顔面が顕になった。
その人はやはりメモ紙に書かれていた人物であった。
彼であると明らかになったと同時に、
僕の胸には深い悲しみの感情が広がって行った。




