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11・容疑者たちとその反応


まずは叔父と伯母に家電で電話をし、

会う約束を前持って取りつけておいた。


大人というのは仕事や家庭があるため、

アポイントなしで会う事が難しいものだ、

と知ったからである。


さらにアパート住人にも、

家賃回収という名目で一戸ずつ訪問をした。


そして何食わぬ顔で、

父についでにアンケートを頼まれたフリをし、

会話をしてみることにした。


当の父親は風邪気味だとかで、

少し体調も悪そうだったから、

自分の言動もあやふやだろうし。


なら、何かあっても多分大丈夫だろう。


確認ポイントは、


「物件内で騒音が響いたりしていないか?

それに絡めて睡眠は取れているか?」


「住んでいて困ったことはないか?

それに絡めてストレスはないか?」


である。


小学校から帰宅後まず鈴木宅を訪問した。

妻は仕事でおらず夫が玄関で対応してくれたが、

ドアを開けた瞬間から幼い子供の賑やかな声がした。


どうやら居間で兄弟揃ってゲームをしている様子で、

コントローラの奪い合いになっていた。


「家賃をもらいに来ました。」


僕が言うと髪がボサボサで薄汚いのTシャツを着、

ジャージを履いた小太り男性が封筒を差し出した。


「あー、はい。」


「ありがとうございます。」


僕はお辞儀をしてから質問をした。


「父からアンケートをするように言われたのですが。

こちらに住んでいて住み心地はどうですか?

音が響くとかでよく眠れないとかはありませんか?」


僕はなるべく子供らしい聞き方をするように、

気をつけて言葉を紡いだ。


「んー、特にはないかなぁ。」


鈴木家夫は頭をボリボリ掻きながら面倒そうに答える。


「そうなんですね。

あと他に住んでいて困ったことはないですか?

ストレスがかかっていることとか…。」


すると無精ヒゲが伸びた口元を歪めてこう答えた。


「家賃をもっと安くして欲しいかな。」


…イヤイヤ、これでもかなり安いよね。

きっとこの人はこういう人間なんだろうな。

無気力で感謝が足りないタイプ。


「えっと、アンケート以上で終わりです。」


僕はスルーしてドアを閉じた。


さて次の田中宅では妻が対応してくれた。

家賃の回収と伝えると肉付きの薄い顔の中の、

細い眉を吊り上げて封筒を出して来た。


「はい、これね!」


気配を感じよく見ると部屋の奥の方で小さな子供が、

モソモソと菓子パンを食べているのが見えた。

すでに3歳位の感じだがオムツをしていた。


「あと父からアンケートを頼まれたんですが。」


僕はサラッとさっきと同じ質問をしてみた。


するとイラ立った口調で彼女は答えた。


「隣よ、隣!今も子供が煩いったら。

壁が薄いのにしつけもしないなんて、

どうなってるのって言って欲しいわ!」


うんまぁ、確かに。


「困ったこと?

トイレが共同でお風呂が無いことね!」


それも確かに…だけど、

最初から分かってて入居してるはずだよね…。


なんか的が当たってるのか外れてるのか、

どうだか分からない人だな。


「えーっと、アンケート以上で終わりです。」


僕は苦笑いしながらその場を離れた。


その後夜に清史さんの部屋を訪問した。

彼はもう家賃を払っているので、

いつも通り遊びに来たテイにしておいた。


お菓子とお茶を出してくれたのでそれを摘みながら、

他の住人にもした質問を何気なさそうに聞いてみた。


「音が響く…、

今もやっぱり下の階の子供の声かな。

夜眠るのはなんとかなってはいるけど。」


なるほど。


「困ったこと、ストレス…、

いろいろあるからなぁ。

けどもう解決する見込みがあるから大丈夫。」


彼はその柔和そうな顔で晴れやかな笑みを作った。


それから数日後に叔父に会った。

彼に会うことにしたしたのは、

ダメ押しで容疑者外であることを確認するためである。

メインの目的はこれであるが他にも、

もっと情報を得るためそして、

頼みたいことがあったからだった。


彼は車で家まで迎えに来てくれてその上、

夕食に連れて行ってくれた。

今回は僕の3歳下の娘も一緒だった。


ファミレスに入店して席に席に座り、

注文したお子様ランチに舌鼓を打ちながら聞いてみた。


「警察官って夜も働いてるんでしょ?

寝たり寝なかったりしてると、

お休みの日眠れなくなったりしないの?」


「よく知ってるね。

まぁ負担がないと言ったらウソになるけど、

私はとりあえず大丈夫かなぁ。

疲れてるから場所も時間帯も関係なく寝落ちるよね。」


「そうなんだね。

じゃあストレスとかは?」


「それも無くはないけど…。

この子の笑顔を見ると癒されるよ。」


ケチャップまみれの娘の口元を紙で拭きながら、

デレデレの表情をしてみせた。

確かにかわいい子でパッチリした黒目で、

パパの方を見上げながらニコニコとしていた。


「じゃあさ、ぶっちゃけてだけど。

伯父さんはうちの父さんと母さんのこと好き?嫌い?」


こう振るとさっきまでの表情とは一転し、

少し苦し気になって口を開いた。


「愛子も子供の頃は可愛かったんだよね。

けど大きくなるに連れて歪んで行って…。

結婚してからそれが酷くなった。

今は嫌いではないけど好きとも言えない。

ただ心配なんだよね、兄としてさ。

海政さん…お父さんのことは、

クセがあるとは思ってるけど、

別に嫌いではないかな。」


この人はやっぱりずっと母の事を心配している。

母はそのことに気付いているのだろうか。


さらに数日後。


今度は叔母に会いに行った。

まだ事件前なので普通に家に入れてくれた。

この頃の彼女はまだ若く見えてスタイルも良くキレイだった。


僕は出されたケーキと紅茶を有り難く頂きながら、

他の人と同じくいろいろと聞いてみた。


「伯母さんはストレスで眠れないことってある?」


彼女は大きな目を上に向けて答えた。


「うーん、たまにはあるかな。

仕事と子供のことでいろいろ考えるとね。

ほら、私、兄貴の仕事の雑務をしてるじゃない。

あなたのお母さんが手伝ってくれればいいけど、

言い訳して逃げてばかりでやらないし。

やったと思ったらミスばかりだし。


私にだって子供がいて大変なのにね。

って、なんでそんなこと聞くの?」


やっぱりこの人は厳しくてちょっと勘が鋭い。

そこが苦手だったのかもな。


「僕も勉強のこととかで寝れない時があるから。」


それらしい事を捻り出して答えると、

ピンクの唇を少し開けて笑った。


「子供でもストレスってあるのね。」


「じゃあさ、

眠れない時はどうしてるの?」


「そうね、

羊の数を数えてみたり、

難しい本を読んでみたりかしら。

そうすればすぐに眠くなってくるわ。」


なるほど。


「そっか、あのね話は変わるけど。

叔母さんはうちの父さんと母さんのことは好き?嫌い?」


この言葉を聞くと彼女はあからさまに不快な表情をした。


「お父さんのことは好きでも嫌いでもないわ。

ただ単に兄妹だってだけよ。

お母さんのことは、

子供にこんなこと言うのもなんだけど嫌いね。

いっそ別れてくれないかしらと思う。

もしかしてあなたも嫌いなの?」


やっぱり鋭い。

僕は作り笑いをしながら焦って言った。


「僕も両親のことは好きでも嫌いでもないよ。」


ヘタなことは言わない方がいいと思ったから、

当たり障りなく適当にスルーした。


最後に彼女だけには付け加えた質問をした。


「叔母さんはうちのアパートに住んでる人と、

会ったことはあるの?

誰が住んでるか知ってる?」


「ないし知らないわよ。

税務関係は税理士に頼んでるんじゃなかったかしら?

なんで?」


聞き返されたので苦笑いで答えた。


「僕よく家賃取りに行くの頼まれるから、

叔母さんはどうかなと思って。」


「…兄貴ったら子供にお金扱わせるなんて。」


大きめの口で彼女はため息をついた。


僕が叔母さんまで念のために探ったのは、

女性が主犯で実行犯は別の線もあると思ったからだった。


けれどこの線は薄いような気がした。


なぜなら今と比べると、

未来の叔母は老け込み方が異常であった。

なんというか、

憎い相手を抹殺した清々しさみたいなものがなった。

代わりに事件の被害者と加害者両方を、

身内に持つ人間の心労が見え隠れしたい様子だった。


つまりここに僕意外にもう1人、

この事件の被害者が居るわけで。


僕を救うことは彼女を救うことにもなると感じた。


こうして目ぼしい人間をこうして観察し終えた。


本当は子猫を殺害した犯行も、

現行で目視したかったのだが、

タイムリープした時点で日時がすでに過ぎていたため諦めた。


それでも真犯人はカプセルの中にあった、

メモ紙に書かれていた人物だと確信できた。


こうして僕は殺害当日を迎えたのだった。


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