10・殺しと最後のタイムリープ
キタる4月15日。
僕は夜12時直前に顔を洗っていた。
鏡には幼少期と同じく青白い肌色の、
けれどあの頃と違い覚束ない顔つきではなくなった、
成長した自分の顔が映っていた。
もうすぐ犯人が殺しに来る。
またあの恐怖と痛みを味わうことになる。
だけど乗り越えてやる。
そして犯行を止めるんだ!
昨日所長から、
「そうそう、保管していた海斗くんへの手紙。
段ボールに入れておいたよ。
あとイサムーンのフィギュア。
共用のオモチャ箱に混じってたからそれもね。」
と言われたので、
改めて探ってみたら出て来た。
古びてしまっていたそれを握りしめ、
イサムーンと自分を同化させようとした。
イサムは普段は上下スエットの、
冤罪をかけられたニートなんだけど、
いざ変身してイサムーンになると、
騎士のようなヒーロースタイルになる。
「魔」が刺した人間の「魔」を断ち切るソードを翻し、
毅然とした紳士のようになるのだ。
決めゼリフは、
「魔を切り裂き自分とみんなを救って職に就く!」
それが笑っちゃうけどすごくカッコよかった。
僕はヒーローに変身は出来ないけど…。
どうかSEI先生。
イサムーンの勇気をください。
フィギュアを胸に抱き祈りを捧げていると、
インターフォンが鳴った。
「ピンポン、ピンポーン。」
還って来てからも毎晩ならされていたそれを、
僕は落ち着いて聴きドアを開けた。
そして僕はやはり予定通りに殺された。
気分の悪くなるそれを、
タイムリープするためと犯行を阻止するためには、
どうしても必要なことだったから我慢して受け入れた。
薄れゆく意識で確認のために、
なんとかそいつの顔を見ようとしたが、
黒いマスクとサングラスが邪魔で目視出来なかった。
メモ紙に名前は書かれていたが、
思い込みで間違った推理をし、
取りこぼしたくなかったから目をこらした。
だってこれが最後のタイムリープなのだから、
もう失敗は出来ない。
1度目は不意打ち過ぎて、
相手の特徴までは捉えられなかったが。
頑張って凝視したおかげで、
今回は身長や骨格などで男であることを確認できた。
これで女性は容疑者から弾かれる。
そう思った瞬間あのシャットダウンが起こり…。
気が付くとまた実家の布団の上で仰向けになっていた。
まだクラクラする頭で起き上がりカレンダーを確認すると、
それは2013年の6月が表になっていた。
上旬だとしても前回よりも約2ヶ月も進んでいる事になる。
時計は7時ちょっと過ぎを指し外は明るかったので多分朝だろう。
僕はやはり台所に行き母の携帯を覗いてみた。
2013年6月10日。
やはり残り約1ヶ月。
子供の僕が残したヒントと大人の僕の考えを合わせ、
推理が正しいか確証を取るため、
残りの日数で容疑者数名に接触することにした。
真犯人の犯行を必ず阻止してみせる。




