ヴァルキリースコアボードの7
今日は月曜日。筋肉痛にも関わらず今日もランニングをして帰って来たわけで、汗だくで足も棒のようになっている。しかし気分はまあ悪くない。今日はうるし先輩に会えたからな。たとえ短い挨拶だけでも好きな人に認識してもらっている実感があるのは良い気分だ。
しかしながら体力は既に限界、へとへとになった俺は靴を脱ぐとそのまま倒れ込み匍匐前進で冷蔵庫へ向かう。
「どうしたぁ? 水が欲しいのかぁ?」
フロゥは煽るようにするだけ飲み物を取ってくれなくなった。本人曰く最初の10kmから距離を半分にしているのにそこまで手を貸してやる必要は無いとのこと。寧ろ筋肉痛の中で走ってるんだから褒めて欲しいぐらいなんだが。足を痛めそうで怖いぐらいだぞこっちは。
どうにかこうにか冷蔵庫まで辿り着きペットボトルに入れて冷やしていた水道水を一気に飲み干す。喉を通る冷たさはそのまま体に染み渡り全身の熱が少し冷えて生き返ったような気分になるな。
「頑張れよ真白ぉ、私は先に飯食べてるからな」
声の先ではどこから用意したのかわからない弁当を持って座卓の前に座っている。フロゥが床に座っているところなど初めて見たかもしれない。
「しかし思ったより綺麗になったな。お前は掃除できないタイプなのかと思っていたが」
お前がやれと言ったんだろ。
この土日は大変だった。フロゥがどこぞへ出掛けている間に俺はずっと部屋の掃除をしていたのだ。ゴミの分別がどうなっているのかもわからずネットで調べ、袋に詰めたは良いがその後に指定のごみ袋を買わないといけないことに気付き、ごみが消えてもその下の床や壁が変なシミが付いて汚かったり。それを足が筋肉痛の中でやるのは本当に大変だった。
リビングに入ると皮肉めいた物言いに文句でも言ってやろうと思っていた。しかし机の上にはフロゥが食べているのと別に弁当があるのに気が付く。
「その弁当は思ったより頑張ったお前への褒美だ。ちょっと良いやつだから味わって食えよ」
どうも俺と言うやつは単純なようでちょっとしたご褒美で簡単に懐柔されてしまう。さっきまで考えていた文句の言葉もどこかへ行ってしまった。
「まだまだ綺麗にする余地はあるが、その辺はこれから時間を作って少しずつやってもらうとしよう」
「一言多いんだよ」
しかしまあ、悪い気はしなかった。
朝食を終えると座卓に向かい合って作戦会議となる。視界に映るのはフロゥとその後ろにあるごみ袋の山。あれはこれから毎日のランニングに向かう際に持って行くことになるだろう。
「作戦会議ねえ。もしかしてうるし先輩のサークルがわかったのか?」
そもそもフロゥがこの土日いなかったのはうるし先輩のサークルについて下調べに行くとかなんとか、そんな理由だった。となればここではそのことについて話し合うに違いない。
「まあ確かに調べたわけだが……。その内容をお前に開示する気は無い」
「えっ」
思わず声が出て口をぽかんと開けたまま呆然としてしまう。調べはしたけど俺に話す気は無い? 何で?
「おいおいおい、何の為の下調べだったんだよ」
「私が調べた情報で比良坂うるしの事を知り仲良くなれるのか?」
「当然……」
なれる! ……か? いや、そうとも限らない。この前の講義で一緒になった時に先輩と知っているのを明かさないように言われた。あれは良く知りもしない相手が自分のことを知っていると気持ち悪いからだ。今回も同じことでは?
俺がそうやって悩んでいるとフロゥは勝ち誇ったような笑みで俺を見た。
「気付いたようだな。仲良くなりたい相手のことはお前自身が知ろうとしなければならないことだ。相手が不快にならない程度に探りを入れて行って、その過程で仲を深めて行くべきだろう?」
ぐうの音も出ないとはこのことだ。物理的に近くにいるだけでは決して仲が深まらないことなどわかっていたはずだ。人と人とはコミュニケーションを通じてお互いを知っていく過程が必要、そんな当然のことも俺はわかっていなかったらしい。
「……なら本当に何で下調べに?」
「比良坂うるしについても当然調べてきたが……。久々にヴァルハラから降りて来たからな、この時代の人の暮らしがどういうものか実際にこの目で見てきた」
そういえば話を聞く感じ数十年ぶりに降りて来たんだよな、こいつ。
「久しぶりなんだよな? その割に現代に順応してないか? テレビとか普通に使ってたけど数十年前には無いだろ」
「ヴァルハラにもテレビぐらいあるぞ。人間の作った物はヴァルハラでも流通していてテレビは人間の世界の出来事を色々と映してるな。長い休暇の最中でもそれを見て価値観をアップデートさせるんだと。一々面倒なんだよなあ、人間なんて弱いんだから力で言うことを聞かせればいいんだ」
お前の価値観昭和より古くねえか? アップデートできてねえよ。
忙しない日々が、いや、思ったよりも暇な日々が過ぎて行く。何せうるし先輩に会えるのは基本的には金曜日の講義だけ。他の日は朝にランニングの習慣が増えたぐらいで大してやれることが無い。散歩しているのを見かけた日もあったができたのは軽い挨拶だけだ。フロゥには立ち止まって話しても良いとは言われたが、そもそも会話が不得意なのに疲労と足の痛みまである状態でまともに会話できる自信が無い。結果ランニング中だからという口実で逃げ出したわけである。
さてさてつまり、この講義の前の時間でどうにかうるし先輩の趣味について聞き出す必要があるということだ。金曜日の三限が始まる少し前の時間、二人しかいない寂しい教室で改めて決意を固める。
「比良坂うるしはこの後も講義らしいからなぁ、この時間にせめて何らかの糸口でも掴まないとこの先仲良くはなれないかもなぁ」
隣からプレッシャーをかけて来るフロゥ。前回同様にフロゥがわざわざ講義に付いて来ている。今の言葉も俺が逃げ腰にならないように発破をかけているのだ。……そう思わないとすぐに心が折れそうなのだ。それに前回は何だかんだ色々と助けてくれた。今回も本当にやばそうな時は助けてくれるだろう。
「あまり私に期待するなよ。お前はすぐ人に頼ろうとする」
……先に釘を刺された。しかしフロゥはずっとそう言っていただろう。自らの力でやれ、と。俺の力でどうにか聞き出すのだ。
教室の席が徐々に埋まって行く。扉が開くとうるし先輩ではないかと振り返って確認してしまう。気持ち悪いからやめろとフロゥに何度言われたか。落ち着かないので仕方なく教科書を取り出してぱらぱらと捲っていると、不意に横に人影が。
「隣、いい?」
うるし先輩がにこにことした笑顔でそこに立っていた。
「ど、どうぞどうぞ」
「じゃあお邪魔します」
ランニング中の挨拶は本当に擦れ違う際の一瞬だけ、しかもちょっと距離がある。しかし今は隣の席、近いし少なくとも講義の間はすぐ傍にいる。ああ、なんか緊張で手汗が……。
「真白君とは一昨日ぶりだねぇ。昨日は見なかったけど毎朝走ってるの?」
「え、ああ。毎朝ですよ、一応」
うるし先輩、散歩の時に俺がいるか気にしてくれてるんだ。
「起きた時間でちょっとずれちゃうんで、タイミングがですかね」
「昨日は私が起こさなかったら昼間で寝てたかもな」
「ぐっ」
仕方ないだろ、毎朝毎朝ランニング。正直俺の足はそろそろ限界だぞ。しかし文句を言うことは出来ない。一度トレーニングは休養日を挟んだ方が良いという動画をこれ見よがしに見せてみたが、速攻でスマホの電源を切られた。次はスマホを外に投げ飛ばすと言われたので俺はもう逆らえないのだ。現代人がスマホ無しで生きて行けると思うな!
それはそれとして先週同様に俺の脇が小突かれる。とにかく会話を続けろと言う指令だろう。何だかんだ程度の差はあれ助けを出してくれる辺り、俺はフロゥに感謝した方が良いだろう。
「あっ、と、うる……、うるし先輩は毎朝決まった時間に散歩を?」
ごちゃごちゃ考えていたら変な感じになった。うるしさんと呼ぶべきかうるし先輩と呼ぶべきか、そもそも比良坂さんの方が適切では? もう前回の会話も朧気になってしまったので前に何て呼んだのかも覚えてねえ。
「あー、先輩だって。そうそう、私先輩なんだよねぇ。私はね、毎朝決まった時間に起きて散歩してるんだ。私先輩だからね、えへへ」
おお、なんか先輩って呼んだのは好印象っぽい。どうも子供っぽいところがあるのか、後輩に慕われる先輩ポジションに憧れがあるみたいだ。
「お姉さんは規則正しい生活ができてるんですね。どっかの馬鹿とは大違いだ」
フロゥは適当に話を繋いでくれるのはありがたいが、一々俺を下げないと駄目なのか? そしてうるし先輩はと言うと。
「お姉さん! お姉さんもいいねぇ。私弟いないからお姉ちゃんとか呼ばれるのも憧れだったんだよねぇ」
なんか妹が出来たみたいに喜んでる。うーむ、喜んでる姿もいいな。と、それはそれとして何か話を繋げないとだ。
「えっと、先輩も一人っ子ですか?」
「ううん、お兄ちゃんが一人いるよ。みんな私に優しいの」
まあ親兄弟に厳しくされていたらこんな性格にはならなそうだ。寧ろ結構甘やかされてきたのでは。
「も、ってことは真白君は一人っ子なんだ」
「え、ああ。そうですそうです」
「寂しくない? 私の家はね、お父さんもお母さんも共働きでいなかったから子供の頃はお兄ちゃんによく遊んでもらってたの。お兄ちゃんがいなかったらきっと一人で寂しかったと思うの」
寂しい、か。
俺の両親は共働き、ではなく親父が働きに出て母さんが家を守るという昭和の価値観に近しい家だった。今思えばそれは単に親父の給料が相応に良かったということだろう。だからいつも母さんが家にはいた、だからこそ俺にとって家にいるのは嫌だった。
学校での生活は楽しかったか、と言われれば別にそうでもない。友達もほとんどおらず部活も入らなかった。数少ない友達とも今では疎遠になってしまったし、もはや誰かと共有も出来ない思い出になってしまったな。
人との関わり合いが少ない暮らしだったが実は寂しいと思ったことは少ない。俺はそういう感情を持っていないんだと思っていたこともある。今はそこまで格好つけたことを言うつもりは無いけど、まあ……。これ以上は止めよう。
「僕はなんか一人でゲームやってましたね。うちは親父が結構稼ぎが良かったんで最新のゲームとか結構買ってくれたんですよ」
「そうなんだぁ。私はずっと積み木とかやってたの。二人でお城を作ったりしてたんだ」
「へえ、積み木かあ」
そういやそういうのはあんまり触った記憶ないな。あんまり物の無い家だったからなあ。ゲームも本体は最新のやつ以外はすぐに処分されてたし。そのせいでクリアまで時間がかかるゲームはやるのを躊躇したものだ、何せ途中で捨てられて続きができなくなるかもしれないから。
「真白も城を作ったらどうだ? 部屋に散らかってるごみで作れるだろ」
「この前掃除しただろ!」
この野郎、俺の悪い部分を先輩にアピールしてどうする。一人ではろくに会話できる自信が無いとは言え、こんなことを隣で言われ続けるんじゃあプラマイゼロじゃないか。
「真白君、お部屋は綺麗にしないと駄目だよ?」
「いや、ちょっとしばらく疲れてて、部屋に帰るとすぐごろごろしちゃう日が続いてて……」
「毎日何時間ごろごろしてたんだ」
「ええい、やめろやめろ」
実際何時間もごろごろしてたのは事実なので反論が難しい。しかしこのままでは先輩に嫌われてしまいかねない。部屋が汚い男は嫌われると動画で言っていたからな。
「でもちょっとわかるなあ。私もね、大学一年生の時は家に帰ったらずっと遊んでばかりでね、ベッドでごろごろばかりしてたの」
「先輩もですか?」
「うんうん。でもお兄ちゃんに言われてね、ごろごろしてるぐらいなら何か新しいことでも始めたらどうだって。それでサークルに入ってね、だから部屋でごろごろする時間は随分減ったかなあ」
図らずもうるし先輩がサークルに入ってることを自ら明かしてくれた。というか前回もこんな感じで自分から先輩であることを明かしたり結構オープンな人だな。フロゥは訝しむような目で先輩を見つめ、俺に一枚の紙を差し出してくる。
『この女に警戒心は無いのか?』
誰にでも分け隔てなく接すると言う先輩の良い所だろ。後でフロゥにはそう言っておいたが実の所俺も同じことを思っていたのは内緒だ。
それはそれとしてこの機を逃してはいけない。それぐらいは俺にもわかる。今こそ先輩が所属するサークルを聞き出す絶好のチャンスじゃないか。
「先輩サークル入ってるんですか?」
とりあえずオウム返しにそんなことを尋ねよう。会話の基本だな。
「そうそう。何だと思う?」
う、それは想定外な返答。どんなサークルを挙げるのが正解だ?
「手芸サークル!」
フロゥがビシッ、と指を立てながら声を上げた。
「手芸かぁ、あれも面白そうだよね。でもこの大学にあったかな?」
「意外に運動系でテニスとか」
「私、運動系だと意外なの? テニスはね、やったことはあるけど全然球が返せなかったなぁ」
「じゃあミステリー同好会」
「ミステリー面白いよね。この前友達からおすすめのやつを借りて今読んでる所なの」
悉く外していくフロゥだが冷静に考えるとこいつ答え知ってるはずじゃあ。ヴァルキリー形態なら俺以外からは見えないんだからうるし先輩に付いて行くだけで簡単に突き止められる。……要するにこれは俺にも何か言いやすくしてやろうと言う配慮なのかもしれない。或いは外しても良いから何か言えという催促か。
「真白君はなんだと思う?」
あ、先輩の方から催促されてしまった。フロゥがご機嫌斜めになってしまうぞ。いつもそうか。それはそれとして何を言おうか、外してもいいのは分かるがあまり変なのは言えない。何かしら推理の手掛かりになりそうなものは無いか、そう思ってうるし先輩の方を見ると服が目に入る。
「えっと、服とか? 先輩おしゃれですし」
正直なところおしゃれな服の基準は分からないが、少なくとも先輩の服は似合っていると思う。落ち着いた色のワンピースとカーディガンで見ていて何だか安心する感じだ。
「おしゃれかあ、嬉しいなあ。実はこの服ね、珍しく私が買ったのなの。ほとんどお母さんが買ってくれたやつなんだけどね、ふふ」
うるし先輩が嬉しそうに微笑む姿を見れたのは良かったが、残念ながらサークルは服飾関係では無いらしい。となると何だろう。実はあまり先輩のことを直視できないのでこれ以上手掛かりを探しようがない。直視できない理由? 照れ臭いからに決まっている。
そんなところで教室にゲド先が入って来たのが見えた。そろそろ講義が始まるまで時間が無いらしい。残念ながらクイズの時間はここまで。
「そろそろ時間も無いし正解を言っちゃうとね。DIYサークルっていうのに入ってるの」
「DIYって、えーっと、何か作るやつですよね」
「Do it yourselfの略語だ。自分自身でやるみたいな意味で、家具自体を買わずに木材を買って自分で作るみたいなのが正にそうだ」
フロゥって本当に何十年もヴァルハラにいたんだろうか。俺よりこの世界のこと詳しくないか?
「そうなんだよねえ。最初はね、部屋に置く本棚のサイズがいいのが無くてね、友達にそのことを話したらそういうサークルの知り合いがいるから聞いてみるって。それで私もそれに付いて行って一緒に作らせてもらったの。その縁でサークルにも入ったんだ」
うるし先輩がのこぎりやトンカチを持って本棚を作ると、いまいち想像しづらい絵面だ。そもそも俺には関わり合いが無い世界だというのが想像できない原因かも。
「家具とか作るのって楽しいんですか?」
俺はその楽しさが全く分からなかった。だからつい、そう尋ねていた。言ってからうるし先輩が気を悪くしないだろうかと不安になったが、どうやら杞憂だったようで何やら真剣に考えてくれている。
「んー、とねぇ。なんて言えばいいんだろうね。……私の場合は、そうだなあ。お部屋にね、みんなと一緒に作った本棚を置いた時にね、すごくいい感じだったの。ちょっと誇らしい感じかな。自分がこれを作ったんだぞ、って思ったんだよね。それが何だかいいなあ、って思って。そういうのって無いかな?」
思い返してみれば中学ぐらいの頃に授業で少しやったが、あの時は随分と不格好な小さい本棚を作った覚えがある。クラスの中でもトップクラスに下手で落ち込んだ記憶が……、だから思い出さないようにしてたのかもしれない。
「……いいですね、それ」
ただ、先輩の言うことはなんとなくわかる気がする。
非常に残念ながら講義の始まりを告げるチャイムが鳴ったので話はそこまでとなった。苦行にも等しい講義の時間を終えると先輩はまたね、と手を振り去ってしまう。そこには寂しさもあったがまた会えるというのはとても良いことだ。
教室から皆がさっさと去って行き残っているのは気付けば俺とフロゥだけになる。閑散とした教室は静かで物思いに耽るには丁度いい。
「DIYかあ」
広い部屋に声が反響する。俺の内から発せられた声が外からも聞こえて来るとぼんやりとした思考の海に溺れてしまいそうになる。幸いにもそうなる前に声をかけてくれる相手が隣にいるが。
「お前の部屋に本棚は必要なさそうだが」
皮肉たっぷりの声だ。俺の部屋に本らしい本は存在しない。教科書と参考書があるがあれは段ボールに投げ入れている。
……部屋に置く家具かあ。掃除する前の自分の部屋はゴミが床を覆っており家具の置き場も無かった。今やすっきりとした部屋の中には座卓とテレビとベッドぐらいしか物が無い。ごみが無くなると考えれば考えるほど殺風景な部屋になったものだ。
一人暮らしを始めた頃、俺はこの部屋を見てどんなことを思っていたのだろう。この部屋にどんな夢を見ていたのだろう。
「真白、帰るぞ。いつまでもここに居ても仕方ないだろ」
フロゥがそう言ったのは間違いなく自分が帰りたいからだ。暇な時は部屋でテレビを見るのがこいつの日課なのだから。
「今日の晩飯は焼肉にしよう。私は肉が好きなんだ。比良坂うるしのサークルを知れた記念だな。ほとんどあっちが勝手に教えてくれたようなもんだが、まあお前も頑張ろうとはしていたようだし少しは評価してやる」
勝手なことを言う。焼肉を食いに行くにしても買って自分たちで焼くにしても金を出すのは俺なのだから。でも。
「……まあ、偶にはそういうのもいいか。確かウッシーが安くて食い放題の焼肉屋があるって言ってたから聞いてみよう」
「おお! 牛君もなかなかやるじゃないか」
少しぐらいはフロゥの望みを叶えてやるのも悪くない。あまり認めたくは無いが、俺は間違いなくフロゥに救われている部分があるのだから。