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第二の村へ

 「な、なんだ、その武器は・・・!お前さんたち、一体何者なんだ・・・?」

 「いや、正直俺たちにもわからないんだ。でも、天使に対抗できることだけわかってる」

 

 隠す場所など到底ない大きさの武器を、突然生み出した二人を見て、腰を抜かしてしまうほど、驚きの表情を浮かべる男。

 びっくりさせたい訳ではなかったが、時は一刻を争う。

 配慮していられる余裕もなかった。


 「この道をたどれば、村に着けるのか?」

 「あ、あぁ」

 「わかった、ありがとう。村は任せて。おじさんはここで待ってて」


 面食らって茫然とする男へ、ここで待っているよう伝え、ただ悲鳴のもとに向かって駆け抜ける。

 伸びてきている草木を踏みつけ、先ほどよりも何倍も速いスピードで、飛ぶように走る。

 

 道をたどり、わずか数分。視界が開け、村が目に映る。


 「あそこだ!やっぱり天使がいる!」


 既に襲撃を受け、森の方へ避難しようとする人々とそれを追う数体の天使が見えた。


 「あんたたち!こっちは危険だよ、早く森に戻るんだ!」

 「大丈夫。行こう純!」


 足に力を込め、急接近する。

 必死の形相で、避難を勧告してくれる村の人たちをすり抜け、反撃されることなど想定もしていなかったであろう天使を殴り飛ばし、切り払う。

 吹き飛んでいく天使をそばに、村の状況を確認する。

 先ほどよりも規模の小さい村だ。家屋がいくつか倒れてしまってはいるが、被害はまだ少ない。

 村へ入った2人は、住民を守るように天使たちと向かい合う。

 村中の天使も集まってきたが、数もさっきと比べるとずっと少ない。


 「これ以上、被害は出させない!」

 「彼らを守る役と、天使を倒す役で分かれよう。盾がある分、守りは俺の方が得意だろう、危険な役目だがそっちは任せてもいいか?」

 「わかった、住人たちを頼む」


 役割を手早く決め、目の前に迫っている天使へ拳を振るう。

 悪魔の力を察知した天使たちは、先ほどまでの攻撃一辺倒だった作戦を変え、集団戦法へと切り替える。攻撃を受ける者が防御に徹し、周りの天使が攻めるという布陣で追い込もうとするが、力に慣れ始めた豪は、構えている武器ごと手甲で粉砕し、一体ずつ的確に処理していく。


 「くっ、こいつ、強いぞ!」

 「住人だ!住人を狙え!」


 かなわないと悟った天使たちは、今度は住民を狙う作戦へと切り替える。


 「多勢に無勢でもかなわなかったのに、こちらへ戦力を分散していいのか?」


 豪の隙をついて、住民へと攻撃を加えようとするが、純の堅固な守り、剣と盾を持っているとは思えないスピードに、天使たちは手も足も出ない。

 純の言う通り、戦力を二分してしまったせいで、より各個撃破がしやすくなった戦況となり、二人の攻撃によってみるみるうちに数を減らした天使たちは、やがてほんの2体ほどとなると、勝てないと悟ったのか背を向けその場を去っていった。


 「逃げていったな、ひとまずは安心か」


 武器をしまい、住民たちと顔を合わせる。


 「ありがとうございます、助かりました・・・!」

 「こんな辺境の村に、まさか天使と戦える人が来てくれるなんて」

 「けが人はいませんか?」

 「多少はいますが、今手当をしております。ほとんどが軽傷かと」


 村の人々から感謝の言葉をもらいながら、住人の安否を確認する。

 切り傷等を負った人がいるようだったが、命を落とした住民はいないようだった。

 先ほどの襲撃を受けた村の惨状を思い出す。

 今度は救えたのだ。犠牲もほとんど出さずに・・・!

 ただ胸をなでおろす。


 村の修復作業を手伝うため、二人で村をまわっていると、握手を求められたり、両手を合わせ拝まれたりもしたが、それと同時に人間離れした力に恐怖し、警戒する人もいた。


 「助けてくれてありがたいが、あんたたち一体何者だ?天使を圧倒できるほどの力なんて、中央お抱えの陰陽頭ぐらいのもんだ」

 「オンミョウノカミ?」


 陰陽道に関係あるのだろうか。

 知らない単語につい首をかしげてしまう。


 「なんだ・・・?あんた知らんのか。京の方には、天使に対抗するための陰陽師の集まりがあるんだよ、あんたらそこの人間じゃないのか?」

 「いや、初めて聞いたよ」


 思えば東京という地名なのに、人々の服装が和服だったり、家屋が木造だったり、自分が学んできた歴史と時代がちぐはぐすぎる。それに加え、陰陽師だって・・・?歴史上、何年前に盛んだったかすら曖昧だ。

 しかし、それを考えるよりも、自分たちが何者なのか、という質問にどう答えたらいいのかに頭を悩ませる。

 怪しまれている中正直に、コンクリートジャングルになっている別の東京から来た、と答えていいものだろうか。

 頭のおかしい人間だと思われそうで、口ごもってしまう。


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