二度目の戦闘
しかし、すでに出入口付近には2体の天使が道をふさぐように立っていた。さらに、片方は弓。
火が燃え盛り、出られそうな場所はそこ以外にはない。逃げ場のない空間で、槍と弓という。近距離と遠距離の両方で戦える相手と対峙してしまう。
数も不利、リーチも相手の方が長い。まさに最悪の状況だ・・・!
「生存者がもう一人いたからな、手分けをしていたら少し遅れてしまった。行くぞ」
「ええ」
弓に矢をつがえ、臨戦態勢へと移る。もう片方の天使もそれを確認すると、槍を構えこちらへ向かってくる。
やるしかない。一対二でも・・・!
拳を握り締めると、槍を持つ天使と戦闘に入る。
手甲と槍、矢がぶつかる金属音と、力のこもった声だけが戦場に響く。
振るわれる槍に対処しながら、攻撃の隙を伺う。しかし、そちらに集中しすぎると矢に当たってしまう。
繰り出される槍を手甲ではじき、距離を詰め殴る。頭では理解しているが、リーチのある槍をかいくぐって殴るのは至難の業だった。
その上、こちらの行動をけん制するような矢の動きにも対処できるよう、片腕は開けておかなければならないことを考えると、攻めあぐねてしまう。矢と槍のコンビネーションに終始押され続け、ついに燃え盛る火のギリギリまで後退してしまう。
これ以上は下がれない・・・!決意を決めて前進するしかない!矢を何本か受けることを前提に槍の天使を倒す!
背水の陣ならぬ背火の陣。相手が再び攻撃してきたとき、弓に矢をつがえるその隙で決める。
意を決し、姿勢を低くしたその時。
「はあああああ!」
まさに疾風迅雷。
剣と盾を携えた人影が素早く天使たちの後ろから侵入し、弓を構えていた天使を切り伏せる。
「なぜおまえがここに!?ほかの天使はどうした!」
あまりにも突然の事態にたじろぐ槍の天使を、その隙をつき、力いっぱい殴り飛ばす。
そのまま家屋の外まで吹き飛んでいく天使を追いかけ、とどめを刺す。
突然のことで動揺したが、それ以上に助けが来てくれたことにただ安堵する。
しかし、その安心もすぐに掻き消える。しまった。まだ天使はいるのだ。追撃するためとはいえ安易に外へ出てしまった!
その隙を狙っていたかのように、上空から矢が飛んでくる。
とっさに手甲で受け止めようとするが、矢は届く前に何かにぶつかって落ちた。
「安易に飛び出すんじゃない!」
目の前には、かばうように盾を構える戦士。盾で守ってくれたようだった。
戦士は翻り、腕をつかんで走り出すと、すぐにほかの家屋へと入り、共に身を隠す。
燃焼していない、明かりの無い家屋は薄暗く、姿を隠すにはぴったりだった。
「すみません、助かりました」
「いや大丈夫だ。それより今考えるべきは、空から矢を打たれるこの状況を打破する方法だ」
互いに今までの状況を簡単に共有する。
話を聞くと、助けに来てくれる前にすでに表にいる天使を5体ほど撃破したらしい。
あの短時間でその数を倒したと聞き、驚く。
「そうすると、残りはおそらく2体ほどになると思います」
「なるほど、だがあいにく弓の天使については討伐できていない。つまり残っている天使はすべて弓を持っていることになるが・・・」
手甲と剣。当然、遠くの敵への攻撃方法はなかった。
沈黙が続く中、突然付近の家屋が破壊されていく音が響く。
「まずいな・・・おそらく相手もこちらに弓に対抗する手段がないことに気づいたんだ」
「隠れる場所をなくす作戦ってことですね・・・」
このままではジリ貧だ。何か手段を探さなければ。
矢は常に降り続けている。すぐそばに崩れそうな家を狙った矢が落ちてくる。
いや、待てよ。もしかしたら、いけるかもしれない。
「一つ、思いついたことがあるのですが」
「本当か!」
「ただ、少し協力をいただきたくて・・・」