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稀代の陰陽師

 「晴明様の復活って・・・?」

 「うん?すまない、独り言が聞こえてしまったみたいだな。こちらの世界には、昔、とてつもない強さを誇る安倍晴明様という方がいらっしゃって・・・」


 名前ぐらいは聞いたことがある。

 稀代の陰陽師、安倍晴明。

 天文学や暦、占いという分野で、治世にて利用されるほどに陰陽道の基礎を確立させた一人。


 「安倍晴明って・・・こっちの世界にもいましたよ!」

 「そうなのか!?確かに、非常に強力な力を持ったお方だ。どちらが最初かはわからんが、もう片方の世界へ影響を与えていても何らおかしくはないな」


 知っている名前が出てきて混乱する。

 ひとまず、気になっていることを明らかにしておきたい。


 「どうして安倍晴明の復活を?」

 「晴明様は天使が最初に侵攻してきたときに、初めて天使を撃退したお方だった。陰陽師としていくつもの功績をあげたが、老衰で床へ伏したときに、儀式によって魂を切り離したのだ。再び天使の侵攻があった時に、依代として用意した肉体へはいれるように」


 魂だけを切り離すなんて、そんなことが可能なのか。


 「つまり肉体は死んでいるが、魂は生きているってわけか」

 「晴明様のおかげで陰陽道は、暦や天文に助力すると同時に、天使に対抗する手段としての立場を築いてきたのだ。生業としてきた我々にとっては神様同然だ」

 「なるほど」


 ふと、復活の儀で魂を依代に入れることができるという話に、疑問を持つ。


 「なら、なぜ今晴明はいないんだ?別に魂として生き続けることができるなら、常に新しい体を用意して、数年ずつ変えていけばいいじゃないか」

 「いや、依代となれるのは高い気力を持った者だけなんだ。それに晴明様の魂を身体へ迎えるということは、もともとそこに入っていたはずの魂は・・・」


 そうか。依代という形をとってはいるが、要するに生贄か。

 器として使う以上、中身は消えてしまうのが当然だ。


 「晴明様は心優しいお方。いたずらに民の命を奪うことは避けたいとのことで、継承者がこちらへ現れた時だけ、その手助けのために儀式を行うことを従者へ言い伝えていた」

 「だから、このタイミングで復活させようとしているんですね」


 人一人を犠牲にするタイミングを、俺たちの出現が握っているのか・・・。

 逆に言えば、俺たちが現れなければ消えずにすむはずだった魂があるということだ。

 責任が重くのしかかる。

 勝手に呼ばれたというのに、ここまで待望され、お膳立てされてしまっているこの状況に、変な汗が出てくる。


 「そう。だからほかの陰陽頭は、晴明様の依代を探す者、儀式の準備を進める者、継承者の捜索をする者に分けて、行動しているというわけだ」

 「ほかの人たちの居場所はわかっているんですか?」

 「ここから南へ行ったところで反応があったことがわかっている。火気の陰陽頭が向かっているが、もうついてもおかしくない頃なんだが連絡が・・・。まあ朱祢さんのことだ。仮に見つけたとしても知らせは遅くなるだろう」


 するとそこへ、二つ結びをした中学生くらいの、小さな女の子が走ってくる。


 「おーい!黄我ちゃん!」

 「玄花!」


 駆け寄ってきて、親しそうに黄我へと話しかける

 娘・・・か?いや、父親を名前で呼ぶか?

 だとすると妹かもしれない。

 だが、見た目で考えれば親子ぐらいの年の差がありそうだが・・・。

 反応に困っていると、咲也が声をかける。


 「お子さんですか?」

 「えぇ!?いや違う!」

 「ぷぷ、お子さんだって。黄我ちゃんまだ二十歳なのにね!」


 驚愕する。

 この風貌と貫禄で、年下だと・・・。


 「は、二十歳だったんですね・・・すみません」

 「いや、大丈夫だ。慣れている・・・。この子は北条ほうじょう 玄花げんか。水気の陰陽頭だ」

 「二人が継承者サマね。こんにちは!北条玄花、十五歳です!」


 十五歳で陰陽頭・・・!?

 かなりの人手不足か、相当の実力者か。

 いずれにしても、この歳で人を動かす立場にいるという事実に驚く。


 「こんにちは。出水咲也です、よろしくね」

 「日向仁だ」


 咲也につられ、名前を名乗る。

 玄花から笑顔を返される。それと同時に、思い出したかのように黄我の方へ振り返ると、自慢げに報告をする。


「そうだ、黄我ちゃん。やっと整ったよ、準備が」


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