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再来

 光を発し消えていくそれを見て、安堵する。


 「やったのか・・・?というか天使を殴ってしまってよかったのだろうか・・・」


 いまさらになって人の形をしたものを殴ったことへの罪悪感が生まれる。が、先に斬りかかってきたのは相手だということを思い出し、ひとりで納得する。

 そもそも、あいつは本当に天使なのか?人を斬り殺すような存在だぞ。天使っていうのは人間に福音を送ってくれるものではないのか?

 それにこの手甲は一体何なんだ?あいつは悪魔とか言っていたが・・・。声の主もわからずじまいだし・・・。

 何より、明らかに身体能力が向上しているのも不気味だ。っていうかここはどこなんだ?

 一時の安全が確認できると、片隅に追いやっていた数多の疑問が頭を埋め尽くす。


 とはいえ、今ここで考えても、わからないことばかりである。

 気持ちを切り替え、ひとまず周りを見渡す。改めて見てもひどい光景だ。

 おびただしい数のかつて人だったものたちが痛々しくて、凝視してしまわないよう目線を広範囲に配る。どうやらそれなりに大きい村だったようだが、家屋はコンクリート製ではなく、木造であることがうかがえた。

 今時、ほとんどの家が木造の場所などあるだろうか?

 少なくとも、ここが自分の住んでいる場所ではないことがわかった。そもそも自分の住んでいる場所に天使は現れない。


 しかし、それと同時にあることに気付く。

 さっきの天使一人で、この規模の村を、この数の人々を壊滅させられるのか・・・?

 背筋が凍る。それとともに、大きな翼が風を切る音が上空から聞こえた。


 「生存者を発見、悪魔の力を使う者のようだ。仲間が一人倒れている、油断するな!」


 いやな汗が背中を駆ける。

 声のする方を向くと、そこにはさっき光になって消えた存在によく似た姿をした存在が十体ほど、大きな羽をはばたかせていた。なかには弓を持っている者もあった。

 やはり一体ではなかった!一対一ならまだなんとかなるはずだが、いかんせん数が多すぎる。なにより遠距離から攻撃されるのはまずい・・・。


 考えるより先に身体が動いた。

 その場から駆け出し、相手の視線を遮るように家屋の中へ身を隠す。ありがたいことに、荒れ果てた村中では隠れる場所に困らないが、ほとんどが燃えていたり倒壊しているため、長く隠れていることは難しそうだ。

 どうする・・・?おびき寄せて各個撃破するのが最善であろうが、相手が飛べる以上、難しいだろう。

 考えている最中も、火の勢いは増し、付近に矢も落ちてくる。

 弓を弾く音や矢の落ちてくる頻度から考えて、3体は弓を持っていると考えてよさそうだ。


 「見つけた!」

 「!まずいな・・・」


 一体の天使に見つかり、襲われる。レイピア状の剣をはじきながら応戦するが、燃える家屋の中での戦いで熱さが厳しい。

 しかし、弓で上空から狙われるよりはずっとましだ。

 さっき戦った天使と実力自体は変わらないため、苦戦するほどではないが、かといって瞬殺できるほど実力差もない。

 見つけたという声に続々とほかの天使も集まってきているだろう、囲まれればおしまいだ。

 何度か攻撃を当ててはいるが、あまり手ごたえがない。仲間の天使が来るまで、時間稼ぎをしているのだろう。こちらを逃がさないことを前提にした防御重視の戦い方で、やりにくい。


 「早く来い!こっちだ!」


 なかなかこちらへ来ない仲間にしびれを切らし、対峙している天使は声を荒げ、外にいるであろう仲間を呼ぶ。

 今だ!

 目線の外れたその隙をついて、一気に距離を詰め懐に潜り込み、フックを叩きこむ。


 「ぐは!」

 「距離があったから油断したな!」


 そのまま体勢を整えきれない天使へ連撃を放つ。幾重も殴られ、崩れ落ちる天使を横目に、他の天使が来る前に場所を変えようと、その勢いのまま、まだ火の回っていない出入口へ駆け出す。


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