表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/127

火龍の加勢

 「いやあ、門番が申し訳なかったのう。奴は昔から少し頭が固くてな」


 背にしていた村の門から、白髪の男が現れる。


 「おう少年たち、危ないから町に入っていなさい」


 そう蓮たちへ声をかけると、男の周囲にいた、奇妙な模様が施された着物を身に着けた人が、蓮たちを村へと誘導していく。


 「助太刀するぞ、若人。いや、継承者殿!」


 そういうと、懐から服のデザインと似た模様の描かれた紙を取り出し、右腕に当てる。


 「火符かふ 赤甲しゃっこう!」


 呪文のようなものを唱えると、紙はあたりを照らす火へと変わり、次の瞬間には、男の右腕には赤く輝く手甲が装着されていた。


 「な、なんだそりゃ!?」

 「はっはっは!見るのは初めてかな。それなら驚くのもしょうがないな!これはな・・・」


 男は、大きく高笑いした次の瞬間には、数十メートルは離れているはずの、こちらにいる天使たちを殴っていた。


 「数百年の歴史が生んだ、人々の叡智の結晶だよ」


 砂を巻き上げ、炎をまといながら男は言い放つ。


 「さあ、反撃開始といこうか」


 右腕で、周りの天使を次々と粉砕していく。

 当人の戦闘能力もさることながら、手甲をふるうたびに龍のように舞う炎が、周りの敵へと襲い掛かる。

 まるで何人もで戦っているかのような制圧力だ。

 突然現れた協力者に、そしてその強さに唖然としていると、声を掛けられる。


 「継承者殿、お前さんはあちらの長へ向かってくれ。わしはここでこいつらに対処する。なに、ささっと終わらせて合流するわい」

 「!ああ、わかった。頼む」


 唖然としている場合じゃない。戦闘が終わったわけじゃないんだ。

 あの男が誰かはわからないが、怜衣を助けに行かなければ。それになにより蓮たちを保護してくれたんだ。信じるしかない。

 地を蹴り、怜衣の方へ向かう。

 矢で狙われるが、それすらもあたりを舞う炎が焼き尽くしてくれる。


 「ふん、ここはわしが預かった戦場だ。ほかの者には指一本触れさせはせんよ」




 「怜衣!」


 振り降ろされる剣を刀で受け止める。


 「もう来たか!」

 「ああ、協力者のおかげでな!」

 「ありがとう龍牙、そのまま受け止め続けてくれ!」

 「わかってるぜ、援護は頼んだ!」


 襲い掛かる剣をいなしながら、刀を振るい続ける。

 速い・・・。だが、対処できないほどじゃない!

 相手が縦に振れば、横で受け止める。


 「はああああああああ!!!」

 「おらあああああああ!!!」


 数秒だけで数十にも重なる剣戟を互いに打ち合い、受け止め合う。

 怜衣も、隙を見計らいながら、援護に徹してくれている。


 「どこまで、どこまでこの私をコケにすれば気が済むのだ貴様らはぁぁ!!」


 追い込まれた天使長は、己の限界までスピードを速め、二人の攻撃へ対処しようとする。

 しかし、意識の外からくる弾丸まで対処する余裕は、天使長にはすでになかった。

 徐々に対処しきれなくなった相手へ、少しずつ攻撃が掠り始めていた。


 「どうした!さすがの天使長も二対一じゃ分が悪いか!?」

 「くそ!人間風情にぃぃぃ!!!」

 「たくさんの部下を使って足止めまでしていたんだ。卑怯なんて言わないでよね!!」


 さきほどまでの速さは鳴りを潜め、ただ防御に徹することしかできなくなった天使長へ、強く握りしめた武器を打ち込む。

 振り降ろした刀は腕に当たり、剣を落とさせた。


 「いまだ!!」

 「はああああああああ!!」


 無防備となった胴へ、居合のような要領で強く振り抜く。

 もろに攻撃を受け、意識が飛びかけている相手へ、追い打ちをかけるように弾丸がいくつも撃ち込まれる。

 最初の数発は腕で必死に受け止めようとしていた天使だったが、後半の数発にはもう抵抗できる力が残っていなかったのだろう。最後の一発を頭に受けると、その勢いのまま仰向けに倒れ、やがて消え去っていった。

 終わった・・・。無事に乗り切ったんだな。この戦線を。


 「・・・守れたんだな、オレたち」

 「そうだね、お疲れ様」


 二人で、顔を見合わせ、こぶしをぶつける。


 「龍牙!怜衣さん!」

 「蓮!薫!」

 「こっちも終わったぞ。はっはっは、よく天使長を倒した。さすが後継者だな!」

 「怜衣にいぃぃぃ、龍牙にいぃぃぃ」


 泣きながら抱き着いてくる蓮と薫を抱きしめながら、笑い合う。

 笑いすぎたせいか、緊張がほどけたせいか、オレも怜衣も泣いていたような気がする。

 でも、大切な人を守り切ったんだ。年甲斐もなく泣いたって今くらいはいいよな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ