救いの弾丸
その時、
「よく耐えたね、三人とも!」
銃声とともに、次々と撃ち落とされていく天使たち。
聞きなじみのある声に、出そうになる涙をこらえると、名前を呼ぶ。
「怜衣!」
「お待たせ、龍牙。その刀、もしかして?」
強くうなずく。
「なら、近接攻撃は任せるよ」
「ああ、任せろ」
ようやく強がりじゃなく本気で、任せろ、と言えたような気がする。
刀を強く握り、構える。
さっきまでの弱気はもうどこにもなく、龍牙の瞳には、光が宿っていた。
向かってくる天使を、目にもとまらぬ速さで薙ぎ払う。
奇しくも挟み撃ちのような形となった二人は、つけ入るすきを一切与えない。
反転攻勢となった二人の勢いは弱まることを知らず、はじめは追いこむ側だったはずの天使たちは、気付けば数を大きく減らし追い込まれていた。
しかし、その時。
「人間風情に何を苦戦している」
いつの間にか近づいてきていた一体の天使の凛とした一声によって、戦場が静まる。
そいつは明らかにほかの天使とは違う気配をまとわせて、そこに飛んでいた。
「天使長!先ほどまで追いつめていたのですが、突然反撃を受けまして」
「この気配、そうか、貴様ら・・・悪魔の力をもつ者か。・・・全員、むやみに攻撃を仕掛けるな。ここからは私の指示に従え」
少し考えこんだのち、周りの天使へ指示を出すと、剣を抜き戦闘態勢をとる。
「親分が出てきたってところか、まずいな・・・」
「各個撃破でいくぞ、村付近にいる天使は、刀の方を足止めしろ。その間にこちらを討つ」
刀を構え、こちらも準備をするが、森のほうから天使長が来たため、今度は怜衣が挟み撃ちされる形となってしまった。
天使長は剣を持っている。近づかれてしまえば、怜衣が圧倒的に不利な対面だ。なんとか合流しなければ・・・!
「さすがに長だね、比べ物にならない強さだ」
剣をかわしながら、弾を撃つタイミングをうかがう。
真正面から撃っても、剣でいなされるだけだ。
ほとんどの雑兵の天使は龍牙の方へ戦力を持っていかれているから、ほぼ一騎討ちの状態で戦えるのはありがたい。
とはいえ、一筋縄ではいかない相手だ。堅牢な剣捌きをどう崩すか。
「まだない技術なのに、よく反応できるよね。ほんとに」
「なめるなよ。この程度、上位の天使たちの攻撃と比べれば遅い方だ。そもそも、それに似た武器はすでにある。普及していないだけだろう」
「教えてくれてありがとうね、っと!」
相手の攻撃をよけては引き金を引く、それをひたすら繰り返す。
とにかく、攻撃を受けないように注意しよう。かならず好機はやってくるはず・・・!
「キミたちの目的は何なんだ?」
「ここで死ぬ貴様が知る意味はない」
「ここは冥途の土産に教えてやろう、って流れでしょ?」
「ふん、くだらんな」
気をそらすついでに話を引き出そうとするが、取り付く島もない。
相手は息切れする様子もない。もう引き延ばすのは難しそうだ。
龍牙の方は大丈夫だろうか。天使長と実力が拮抗していて、少しでも目を離すとその隙をつかれてしまいそうで、あっちの状況を把握できない。
龍牙の方にこちらから近づくしかないが、対峙する天使長が許すはずもなく、なかなか合流できない。
「そろそろ終わりにする」
相手も、龍牙の方の戦闘が気になるのだろう。
先ほどよりも、さらにギアを上げて攻撃してくる。
「くっ!」
「先ほどまでの軽口はどうした、悪魔よ!」
「ボクは悪魔じゃないっての!」
反論はするが、正直こいつの言う通り余裕はない。このままタイマン勝負じゃ、いずれやられるだろう。
どうする・・・?
その時、龍牙のいる村の方から、大きな音がした。