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憤怒

 「蓮!!」


 すぐに自分の身で、天使から蓮を隠す。

 まだ、あんなに遠いっていうのに・・・!

 

 「大丈夫・・・。龍牙、薫を連れてさらに先へ逃げて。そうすれば、都につく。遠いけど、森もあるから隠れながら行けば・・・」

 「何言ってんだ!置いていけるか!」


 辛そうにしながら、それでも薫を想い続ける蓮を見て、心が痛むと同時に、怒りがわいてくる。

 なぜ、門を開けて目の前の子供を助けようとしないのか。なぜ、まだ幼い子どもが家族を想って命を投げ捨てなければならないのか。なぜ、オレは怜衣のように戦えないのか。

 今もなお矢が飛んでくる。狙いも精密になってきている。おそらく次に放たれた矢はこちらへ当たるだろう。槍を持った天使もこちらへ向かってきている。もう一刻の猶予もないことは明白だった。


 もう、策はないのか・・・?

 蓮を見捨てて、逃げるしかないのか・・・?


 ふざけるな!


 「何が天使だ!何が通行証だ!ここで見捨てて逃げたら、大人として、人として終わりだろうが!」


 気付けば、怒りに血がにじむほど拳を握っていた。

 泣きじゃくる薫を蓮へ渡し、こちらへ飛ぶ天使へと向かい合う。


 「来いよ、人の幸せを奪うカスどもが!背を向けるくらいなら、相打ち上等だ!」


 そう叫んだ刹那、


 『ふむ、まあ及第点だ、憤怒の罪人よ。女神の契約通り、くれてやる、叛逆の兵装をな。貴様の怒りを私に見せてみろ』


 声とともに、手の中にあった何かを槍を向けてくる天使へ、そして飛んでくる矢へ振り抜く。

 鈍い音と同時に、さっきまでこちらへ攻撃を仕掛けてきていた天使は、すでに光とともに消えていた。

 手には、一振りの刀。

 何が何だかわからず少しの間、立ち尽くす。

 さっきのはなんだ・・・?オレが倒したのか?

 ふと、怜衣の話を思い出す。


 寝ぼけてでもいたのだと話半分で聞いていたが、突然聞こえてきた声と刀、そして体に満ちてくるエネルギーを感じ、嘘ではないと確信した。

 戦えるんだ。ただ逃げ回るだけじゃない。この力があれば、怜衣も蓮も、薫も守ることができる!


 「この刀が、オレに守る力をくれるっていうなら、罪だろうが何だろうが受け止めてやるよ!」


 そうして、映像作品でみたように、見様見真似で刀を鞘から引き抜こうとするが、抜けない。

 先ほど振り抜いた時も、鞘がついた状態で振り回していたことに気付く。


 抜けない?刀なのに・・・?いや、やり方が間違っているのかもしれない。


 角度を変えたり、力いっぱい引き抜こうとしたりするが、それでも刀身はピクリとも動かない。

 そういえば、さっきの声も及第点と言っていた。合格点じゃないからなのか?


 あまりにも突然のことに周囲にいた天使すら、何が起きたのか理解できていなかったのだろう。少しの間茫然としていたが、仲間がやられたことを確認すると、矢を引き絞り、狙いを合わせる。


 「龍牙!まだ天使が!」


 蓮の声にハッとする。

 何が及第点だ、知るか!こいつらを全員倒せるなら、鞘のままだろうが、折れてしまおうが、戦うだけだ。

 地に落ちている石を、刀で強く打ち飛ばす。

 土を舞い上げながら、石は空を飛ぶ天使へ一直線に向かい、直撃する。

 すかさず、ほかの天使も矢を撃ってくるが、流れるように叩き落す。

 見切れる。この程度の速度なら全然!


 「もう攻撃が当たると思うなよ。オレにも、オレの大切な人にも」


 矢を振り払い、攻撃をかわしながら、数を確実に減らしていく。

 刀身が抜けなくたって、強い力でたたけば倒すことができる。

 だが、どうしても空を飛ぶ天使への攻撃が届かない。石を飛ばす作戦も、見切られてほとんど当たらなくなってきている。

 どうすればいい。守ることはできても、攻めきれない・・・!

 せめて二人をどこか隠れられる場所へ連れていくことができれば・・・。


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