表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/127

山中にて

 -------------------------------------------

 「世界を守るためならば、かまいません」


 意を決したのだろう。決意に満ちた顔でこちらの要求を呑む。


 「家族には」

 「結局同意は得られていません。ですが、私が適任なのであれば、これほどうれしいことはないのです。ぜひ協力させてください」

 「・・・わかった。では案内する」


 純粋な善意に触れ、心が締め付けられる。

 こちらの思い通りになっているのに、心は一向に晴れない。

 大志は時として、死の名分となってしまうのだ。

 また一人、誰かの大切な人が大義のもとに失われていく。

 -------------------------------------------


 銃声とともに、目が覚める。

 あまりにも聞きなじみのない音に、蓮と薫も飛び起きる。

 周囲を見渡すと、布切れを身にまとう男が数人、オレたちを囲むようにして立っていた。

 おそらく盗賊か。

 とっさに二人に腕を伸ばし抱きかかえるが、盗賊たちは襲ってくる様子はなく、むしろおびえているようだった。


 「怜衣!」

 「それ以上僕たちに近づくなら容赦はしない。同じ人間だろうとね」

 「な、なんだ、今のは・・・」


 盗賊たちの視線をたどると、横に立っていた大木に、大きな穴が開いていた。先ほどの銃声の正体はこれか。


 「今のは威嚇だよ。次は君たちに撃ち込む」


 すでに及び腰の盗賊は、怜衣の凄みで、完全に戦意を喪失したのだろう。

 足元に武器を置き、その場を去ろうとする。

 しかし、その時。


 「ぐあああ!」


 空から降ってきた矢が、盗賊の背中へ突き刺さる。


 「!天使だ、全員身を隠せ!」


 銃声を聞きつけ、天使たちが集まってきてしまった。

 盗賊たちが散り散りに逃げていく。


 「龍牙!」

 「わかってる!薫、こっち来い、おぶってやる!蓮は走れそうか!」

 「うん!」


 急いで薫を抱え、走る。

 だが、どこを目指す?こんな山道で、空を飛ぶ相手から走って逃げ回るのはあまりに不利だ。


 「下の町なら、陰陽の力で守られているかもしれない!」

 「どっちみち目指す先はその町か!」

 「ちょ、まってくだせえ!あっしも、連れて行って下せえ!」


 先ほどの盗賊が一人、ついてくる。


 「襲っといて何言ってんだ、お前にかまってる暇はねえ!どっか行け!」


 かといって、盗賊を振り切れるほどの余裕はこちらにもない。

 的が分散することも考え、ひとまずそのまま、五人で山を下りていく。


 「やっぱり走りながら当てるのは難しいな・・・」


 怜衣も銃で応戦してくれるが、ガタガタの山道を走りながら、葉で視線が遮られている環境で天使を狙うとなると、やはり命中率はどうしても下がってしまう。


 「龍牙、蓮たちをお願いしてもいい?」

 「何言ってる!?ここがどこかもわからないのに、分かれて動くなんて自殺行為だろ!」

 「ボクはここで、天使たちに応戦する。そうすれば、戦力を二つに分断できるから、狙われる確率も大きく下がると思うんだ。大丈夫、ボクにはこれがあるから」


 そういって銃を自慢げに見せてみせる怜衣。

 怜衣は普段は気弱そうな雰囲気だが、自分の思ったことはめったに曲げない奴だった。

 きっと何を言ったって、考えは変わらないのだろう。


 「・・・わかった。天使を任せる、蓮と薫は任せろ」


 そういい、山を駆け降りる。


 「怜衣さん!」

 「大丈夫、蓮は町へ行くことに集中して。道中気を付けて。薫ちゃんをお願いね」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ