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幕間 伝紙の主

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「皐月が敗れた・・・か」


 崩れゆく塔の中。

 自らの決死の攻撃によって、がれきの下に埋もれてしまった冷泉は、がれきの中でも上層で気を失った純を、最後の力を振り絞って見つかりやすいところへと吹き飛ばし、そのまま息絶えるその時を待っていた。


「別に、死んでほしいわけではないしな・・・」


 あくまで、皐月の作戦の邪魔をさせないため。

 純と戦っていたのも、そのためだ。

 そう自分に言い聞かせる。

 ただ、心のどこかでは、いまの皐月がもう別の存在になっていたことは、なんとなくわかっていた。


 この村へ派遣され、唯一の陰陽師となった時から、瓜生と日下部の人間には本当に良くしてもらった。

 だから、皐月が何をしようとしていても、それを支える。

 それが自分の役目だと、そう思っていた。

 陰陽師が皐月の兄を連れていき、殺したという話を聞いて、何が何でも瓜生の血筋を支えて見せる、陰陽師から離反することもいとわない。

 その決意だけが、俺を動かす原動力だった。


「まぁ、そのせいでただ言うことを聞くだけの亡霊になってしまったんだが」


 がれきの中で、独りで迎える最期・・・なんとも亡霊らしい終わり方だ。

 組織を裏切った、その罰だろうか。


「っ!・・・全身が痛いな」


 塔が崩れ始めた影響でもろくなった地面はさらに落ち、その身は最下層の市街地まで落下してしまっていた。

 その影響で、身体を強く殴打した上に、さらにがれきの追い打ちを受け、もう意識を保つのでやっとだった。


「どこだー!!」


 ・・・声が聞こえる。

 誰かを探す声だ。

 もしかして、探しに来てくれたのだろうか?

 助かる可能性があるなら・・・。

 一縷の望みをかけて、伝紙でここにいることを、伝えようか。

 そう思い、懐にある式神へと力を込めようとした。


「くそ!耳の聞こえない人なんて、どうやって探せば・・・!」


 ・・・どうやら俺を探しているわけじゃないようだ。

 耳の聞こえない人・・・心当たりがある。

 見事な植木が目印の、優しい奥さんのいる、あの家だろう。


 たしか、姫芽が、よく歌を歌ってもらっていた・・・な。


「・・・」


 最後の一枚の伝紙へと、振り絞った力を込める。


『このまま十秒直進し、左に曲がった少し先にある、大きな植木の家に遭難者あり』

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