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強敵との対峙

 先ほどまで背中に担ぎ、鞘に納められていたはず剣が、今目の前で手甲を受け止めている。

 あの速度で、抜刀して受け止めたとでも言うのか・・・?


 「これならどうだ?」


 今度は、取り巻きの天使を倒した純が、左翼から剣を突き立てようとする。

 振り降ろされる剣が、隊長の身体をとらえる。


 「甘いな」


 だが、それも空いている右腕で、簡単に防がれる。

 そこらへんの天使では、受け止めることすらままならない攻撃のはずだが、二人の攻撃はいとも簡単に見切られてしまった。

 明らかに今まで戦ってきた天使とは、違う。


 すると隊長は、受け止めていた二人の武器を押し返すと、大剣を振りかぶる。

 まずい、来る!

 後ろへ押し返されたその勢いのまま、とっさにステップを取り後退すると、間髪入れず目の前を大剣がかすった。

 あと少しでも遅かったら、死んでいただろう。冷や汗がどっと出る。


 「確かに、人間にしては強い。だがこの程度か」


 とっさのことだったとはいえ、剣筋がほとんど見切れなかった。身の丈ほどある大剣をあの速度で振り回すことができるというのか。

 むやみに攻めれば、即、剣の錆だろう。


 「ほかの天使に加勢しなかったのは、こちらの実力を測るためか」

 「・・・ああそうだ」


 一瞬の間が空き、隊長が答える。


 「天使長の名において、ここでお前たちに引導を渡す」


 剣の剣先をこちらへ向けて、啖呵を切る。それと同時に剣を振りかぶると、強く、大きく一歩踏み出し、大きく横に振るう。

 後ろへ下がり、攻撃をよける。


 「かなり大ぶりな攻撃だな」

 「あの大きさの得物だ。攻撃後なら隙があるかもしれない」

 「どうした、来ないのならこちらから行くぞ!」


 再び、大剣が振るわれる。

 空気すら切り裂きそうな鋭さの一振りに、思わずたじろぐ。

 その時、そんな気迫を意にも介さず、剣を振り切ったタイミングで、純が攻撃を仕掛ける。

 しかし、その刃は天使長へは届かず、大剣の側面によって防がれてしまう。


 「ふっ、そんなわかりやすい隙をさらすほど馬鹿ではない。それ!」

 「がはっ」

 「純!」


 攻撃を受け止めた大剣とともに、タックルするような攻撃をもろに受けてしまった純が大きく吹き飛ぶ。

 明確にこれまで戦ってきた天使とは違う。パワーもスピードも段違いだった。


 「強い・・・!」

 「早速一人脱落か。この程度の相手で評価されるなら楽なものだな」


 そう言い、こちらへ攻撃を仕掛けてくる。

 大剣を構え、振り下ろす。

 すんでのところで、それをかわす。それを何度か繰り返す。

 攻撃の前の予備動作がわかりやすい分、避けるのは簡単だが、大剣が大きく、攻撃が広範囲のため、近づいて攻撃する隙がない。

 おまけに、大剣を何度も振り回しているのに、天使長に疲れている様子は見受けられなかった。むしろ、一度でももろに食らえば戦闘不能になる緊張感に、こちらの方がより疲労がたまっていく。

 このままでは、いずれ避けきれなくなる。こうなったら多少無理してでも攻めるしかないか。

 相手の攻撃後が難しいのなら、予備動作の時点で仕掛けるしかないだろう。

 こちらの攻撃で相手の体勢さえ崩せれば、反撃を受けずに済む。賭けだが、純が攻撃を受けてしまった以上、ひとりでもやるしかない。

 もう何度目かもわからない天使長の攻撃が、再び繰り出されようとする。こちらも回避をする体勢を取り、後退するふりをする。

 今だ!

 体重を前方に移動し、一歩踏みだす。

 素早く相手の懐に飛び込んだ豪は、そのまま天使長の身に着ける鎧を目掛け、強く殴る。


 「はああああ!」

 「なに!?」

 

 無防備な横っ腹に全身全霊の殴打が直撃する。

 砕くまではいかなかったが、いくつかひびが入った。

 その衝撃にたじろぐ天使だったが、体勢はわずかに崩れたのみだった。

 そのまま振るわれる大剣をどうにかよけようとするが、前進した勢いを殺せず、うまく後退できない。


 間に合わない。このままでは直撃する・・・!


 その時、


 「うおおおお!」


 豪めがけて振るわれた大剣は、直撃する直前で防がれる。

 そのまま大きく後ずさりするが、ダメージはほとんどない。

 守られるのはこれで二度目。以前にも見たことのある背中に安心する。

 盾をもって攻撃から守ってくれたのは純だった。


 「純!無事だったんだな」

 「月影・・・お前は本当に無理をする」


 民家の方へ吹き飛んで行ってしまっていた純が、ギリギリで助けてくれたようだった。


 「あの重量の体当たりを受けてまだ立っていられるか」

 「一撃でやられてしまうわけにはいかないからな」


 天使長へ返事をしたかと思うと、今度は小声でこちらへ声をかける。


 「月影、あのひびはお前が?」


 首を縦に振り、肯定する。


 「賭けだったけど・・・。大剣を振りかぶったときに、体勢を崩せれば何とかなるかと思って」

 「あまりにも危険すぎる・・・、だが、そのおかげで道筋が見えたかもしれない」


 そう話す純を改めて見てみると、純は剣を持っていなかった。

 不思議に思い、尋ねる。


 「純、剣は?」

 「剣はあえて、しまった。ここから先、俺は行動の一切を防御に集中する」

 「どういうことだ?」

 「いいか、相手は手練れだ。おそらく明確な隙をさらしてくることはないだろう。攻撃を加えるには、こっちで隙を作り出すしかない。だから・・・」


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