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バレていない秘策

地剣ちけん 土砕波サンドウェーブ!」


 影と、槍での攻防をいくつか続けていた時、突如地面がぐらついた。

 それと同時に、後ろから純の身体が吹き飛んできて偽物の仁へと衝突した。

 動かなくなった純は、やがて黒いもやへと姿を変え、消えて行ってしまった。


「なにっ!」

「惰弱な偽物だ。リサーチ不足じゃないのか。ティータイム小僧」


 得意げに、剣を掲げて見せる純。


 純が、偽物を倒したのか!

 ありがたいことに、こちらも好機だ。

 純の偽物がぶつかってきた影響で、拮抗していた戦況がこちらへ傾いた。

 今しかない!


「風雅!」


 操気で起こした風で自らの身体を浮かべ、通常よりも早い速度で接近をする仁。

 態勢を崩した相手へそのままの勢いで近づくと、隙をついて槍を強く突き刺した。


「ぐはぁあ!!」

「はあああ!」


 突き刺さった槍が仁によって上に押し上げられ、偽物の上半身を引き裂く。

 苦しそうな声を上げ、膝をついた相手は、そのまま純の偽物と同じく、黒いもやへと姿を変え、消えた。


「なぜ、そんな技を・・・!聞いた話と違うぞ!」

「俺のこの技は、天照府で晴明と組手をした時以外使ってないからな」

「くそ!」


 口惜しそうに指の爪を噛む男。

 そんな男へ純が剣を突き立てる。

 その表情は冷たく、斬ることすら容赦はないと、そう言っているかのようだった。


「悪いが手加減はしない。斬られたくなければ、さっさと術を解け」

「・・・わかった。解いてやるから剣を下ろしてくれ」


 観念した様子でそう言うと、術を解いたのだろう。北条と咲也の幻影が消えていった。


「純!」

「純くん!ありがとう」

「二人とも無事か?」

「うん!とりあえず、この人縛っておこうか」


 そのまま北条の水によって縛り上げられ身動きをとれない状態にされた男。

 思えば、この塔の内情を知れるチャンスかもしれない。

 そう考え、尋問するため男へと向かい合う。


「なぁ、あんたに聞きたいことがある」

「この状況で話すと思うかい?」

「こっちはお前に危害を加えることができることを忘れるな」


 純が剣を出し、脅しをかけようとしたところで、仁がそれを制した。


「話したくなければ話さなくていい。無理に聞き出したい訳じゃない」

「・・・聞きたいことは何だい?」

「一つ目は、俺たちの情報を誰から聞いたのか、だ」

「もちろん、僕たちの親玉である皐月だよ」


 瓜生が・・・。

 予想の範疇の答えだが、ここで一つ疑問が出てくる。

 なぜ瓜生は咲也や純の魔装まで知っている?

 一度対峙した俺の魔装がわかるのは当然としても、一度も面識のない二人の魔装まで知っているのはおかしい。

 内通者・・・?

 いや、俺たちが継承者とか呼ばれている存在だということは広まっていても、魔装の形まで知っている人間は多くない。この線は考えにくい・・・よな。


「それより、君たちはこんな場所で僕とおしゃべりしていていいのかい?」

「どういうことだ?」


 人を不快にさせるようなにやけ顔を浮かべた男が、答える。


「皐月はそろそろ南の村へ侵攻するつもりだよ。早く止めないと、多くの人間が犠牲になるかもしれない。確か・・・蓮と薫って子がいる村だったかな」

「・・・蓮と薫?」


 聞き覚えのない名前だが。

 ピンと来ている様子のない一同に、けたけたと笑いだす男。


「知らないのかい!?君たちの友達、黒金怜衣と火宮龍牙の大切なお友達だよ!あはは!!」

「!」


 怜衣たちは確かに、南の方角から京都へと来ていた。


「すぐに上に行こう!止めなきゃ!」

「こいつの話を信じるのか?」


 純の質問に、首を振ってこたえる玄花。


「可能性があるなら、行く以外の選択肢はないんだよ、純くん」


 急いで次の階を目指していく一行だったが、聞きたいことがもう一つあった仁は、そこで立ち止まる。


「最後に一つだけ、目的を聞かせろ!何のために村を襲う!」

「そんなの僕が知るわけないだろう?聞きたきゃ本人たちに聞きなよ。ま、間に合わないかもしれないけどね」

「ちっ!!」


 おちょくる態度にイラついた仁は、舌打ちとともに、返事の代わりに男の顔面へ一発、拳を叩きつけると、純たちの後を追うように扉を開け、階段を上っていった。

 拳を受けた男は、一瞬気を失ったかと思うと、黒いもやとなって虚空へと消えていった。

 すでに階上を目指していた一同は、その姿に気付くことはなかった。


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