表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/128

影との交戦

 玄花の水符による爪が、純の盾にぶつかる音が響く。

 瓜二つの仲間が牙を向けてくる状況に、余裕を失う一同。


「瓜二つすぎて、どれが偽物かわからん・・・!」


 見た目で違いが判らないという状況が一同を困らせていた。

 様々な攻撃が入り組んでいる状況で、視界外からの攻撃を避けることがかなり難しい中、相手が倒すべき相手かどうかわからないのが、本気で攻撃できない要因となっていた。


「君たちのことは、いろんな場所で学ばせてもらったよ。その不思議な武器についてもね。すごい完成度だろう?」

「うるせぇ!」


 槍を大きく振り回し、矢をはじきながら近くにいた自分の偽物を吹き飛ばす。


「はあああ!」

「うわ!」


 吹き飛ばされた仁の偽物が、今度はその近くにいた咲也に襲い掛かる。

 まったく同じ声で気合の一声を上げる偽物。


「声まで・・・」

「だから言っただろう、学ばせてもらったと。僕の能力は相手のことを知れば知るほど、幻影の完成度が上がっていく」


 まったくしゃらくさい能力だ!


「仁くん、危ない!」

「うぉ!」


 超高圧で押し出された水の斬撃が、顔めがけ飛んできていた。

 声のおかげで間一髪避けられた斬撃は、そのまま飛んでいき、塔の外壁を一部切断した。


「なんて威力だよ・・・」

「ほとんどワタシの技と同じ威力だから、気を付けて!」


 純の盾や、咲也の遠距離攻撃は厄介であったが、それ以上に、陰陽頭である玄花の偽物が猛威を振るっていた。

 爪による攻撃はまともに受ければ致命傷になる上、水による盾も作り出すことができるため、玄花の偽物には隙がなかった。


「とはいえ、そっちの攻撃にまで気を使えないぞ!」


 ただでさえ、周りのやつが敵かどうかわからないんだ。

 遠くの戦況なんか気にしていたら、足をすくわれる。

 現に今だって、純の盾を槍ではじきながら、攻撃をどう通すか考えることで手いっぱいだ。


「仁、治療するから僕の近くに!」

「わかった」


 不意に受けた矢が、地味に痛みを生じさせている。

 回復してもらえるならそれに越したことはない。


「待って!それは偽物の僕だよ!」

「は!?」


 続いた言葉で、咲也のもとへと進めていた足を止める。


「こっちが本物だよ、早く!」

「違うよ!僕が本物だ!そっちにいちゃダメだ!」

「くっそ、なんだこれ!」


 声の主である咲也を見比べる。

 だめだ、わからない・・・。

 見た目も声も同じなら、何で判断すればいいっていうんだ。


「仁、回復はあきらめろ!いいか、全員自分自身と戦うんだ!とにかく自分の偽物を倒すことだけ考えろ!」


 純の声にハッとする。

 確かに、目の前にいる自分が偽物だということは、自分自身が一番わかっている。

 敵だと確信できる相手とだけ戦えば、本気でやれる。


「わかった!」


 目標を自分へと変更し、そちらの方向へと駆け抜ける。

 それを阻止するかのように、矢が飛んでくるが、それをはじき風で反撃する。


「風雅!」

「ちっ!」

「作戦通り動く俺を攻撃してくる時点で、敵だってわかんだよ、バカが!」


 鏡写しのような自分のもとへとたどり着き、槍を振り下ろす。

 力強く地を叩いた槍は、がれきを舞い上げた。

 ほかのやつらも、自分自身とタイマンができる状況になれた様子だ。

 その様子に、先ほどまで余裕そうだった青年は不愉快そうに表情をゆがめた。


「いやな作戦を思い浮かぶね。でも、君たちにその影を倒せるかな?」

「偽物に負けるわけないだろうが!」


 槍を構え、突き出す。

 同じ構えの相手がそれを槍先ではじき、返すようにこちらへ刃を突き付ける。

 返された攻撃に対し、体重移動で態勢を変えて上半身でそれを避け、切っ先を柄で押し返す。その勢いのまま円を描くように槍を回すと、相手を槍で薙ぎ払った。

 しかし、相手もそれは織り込み済みなのか、槍で受け止めると、受け流すように槍を回転させ、こちらを切り伏せようとする。


 見たことのある動きに、簡単に攻撃をかわす仁だったが、変わらない戦況に歯がゆさを覚えていた。


「くっそ!」


 あいつの言っていた通り、この幻影、完成度が高い。ほとんど俺と同じ太刀筋で攻撃を返してくる。

 躱すことはたやすいが、それは相手も同じだ。

 このままだと、決着がつかない!

 影にスタミナって概念がないなら、不利なのはこちらだ。

 どう突破すればいい・・・?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ