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合流、そして戦地へ

「千東・・・だから先に京都の方角を確認したというのに」

「す、すみません・・・」


 砂嵐のせいで前が見づらくなっていた青那は、ことあるごとに京都とは違う方向へ行ってしまい、順調にいけば日が落ちるころには京都へ到着できるはずだったのに、気が付くと日が変わってしまっていた。

 身を隠せる場所で睡眠をとり体を休めつつ、場所を何度も確認しながら歩を進め、再び太陽が姿を現した頃、二人はようやく京都を発見できた。


「かかった時間は二倍以上、だな」

「面目ないです・・・本当に」


 最後まで気は抜かず、力を振り絞って砂嵐を起こしながら京都へと向かっていくと、その外側から、何者かの声がした。


「京都へは入らせない!水穹!」


 聞きなじみのある声。


「この声、咲也か?」

「あ、あれ?仁!?」


 弓を構え、砂嵐へ狙いを定めていた咲也が、知り合いの声を聞き素っ頓狂な声を上げる。

 仁が風を止めると、砂嵐が止み、龍に乗った二人が咲也の前に姿を現した。


「私もいますよ」

「千東さんも!すみません、突然現れた砂嵐だったので、天使の仕業かと思って攻撃しようかと思ってました」

「危ないな、おい」


 苦笑いを浮かべる咲也が、今度は表情を緩める。


「でも、二人とも無事でよかった!昨日中には到着できるって式神で聞いてたから・・・」

「あ・・・うふふ」

「・・・」


 責めるように千東を見つめるが、こちらと視線を合わせようとはせず、口に手を当て笑って、咲也の言葉をごまかしていた。


「そ、そんなことより、出水さんはどうしてここに?」

「そうだ!こっちでもいろいろあって・・・」

「おい咲也、先走るな・・・って」

「純!」


 咲也の言葉の途中、後ろからたしなめるように言葉を発しながら、純が歩いてくる。

 続いて玄花も姿を現し、こちらへと合流した。


「青那ちゃん!無事でよかった!」

「玄花ちゃん、ただいま」

「まぁ、一応、無事ではあるか・・・」


 道中、襲撃を受けたこともあり、無事に着いたとは言い難かったため、北条の言葉に素直にうなずけない。


 そんな仁の歯切れの悪さに、何かがあったのだと感づいた純が、言葉を続けた。


「ということはそっちでも何かあったんだな?」

「そうですね。双方、話したいことがあるようですし、ここで一回情報の整理をしましょうか」


 青那の一言で、咲也たちは京都で起こった襲撃事件について、そして仁たちは京都へと向かう道中について、互いに情報を交換しあった。


 純の話では、京都には今、晴明と怜衣、依瑠が待機している。

 そして、式神で聞いた日にち通りに返ってこなかった俺たちの探索と、瓜生への接触のため、純と咲也、北条がこちらへ来たということらしい。


「見えない場所からの狙撃・・・。そんなことができる奴がいるとすると、かなり厄介だな」

「あぁ」

「ひとまず柾木さんの目が覚めてよかったです。目覚めた瞬間襲撃されたのは気の毒ですが・・・」

「そうですね」


 苦い表情をしながら、そう肯定した咲也の隣で、考え事をしていた玄花が口を開く。


「・・・この二つの襲撃、共通点があるよね」

「瓜生が関係していることだな?」


 咲也たちの話で出てきた侵入者、そいつも瓜生の名を口にしていたとのことだ。

 瓜生と関わりがあるということだ。


「うん」

「だが、なぜこちらを襲ってきたのか、天使は一体なにが目的なのか、それはわからないままだ」

「うーん、そうだね。結局、直接対峙するしかないのかも」


 仁はそれに加え、昨日今日の瓜生の行動に、もう一つ違和感を感じていた。

 瓜生は悪を裁く、村人など周りの人を守る、それが目的だと思っていた。

 なのに、なぜ遠回りをしてまで接触を避けた俺と千東を襲ってきたのか。

 なぜ関係ない依瑠を襲ってきたのか。

 それに加え、程度を誤れば身が朽ちるほどの力を、仲間へと与えた?


 とはいえ、一昨日一回接触しただけのやつだ。仲間想いだと思ったのも、俺の勘違いだったのかもしれない。

 どちらにせよ、本人に確かめれば済む話だ。


「仁たちを発見できたし、俺たちは目的を変え、このまま瓜生のもとへと向かおうと思う。二人は瓜生との接触や襲撃で疲れただろう。依瑠や晴明と合流して、京都で休め」


 純が仁と青那を気遣い、休むよう進言するが、二人は首を振って、それを拒否した。


「いえ、私も皆さんと瓜生のもとへ向かいます」

「俺も村へ向かう。確認したいこともあるし、直接戦ったのは俺だけだしな」


 強い意志を持って同行を主張する二人に、純が引き下がる。


「・・・わかった。だが無理はするな」

「あぁ」

「わかりました」

「相手は、天使の力をもらった存在だ。一筋縄ではいかないだろう」

「一層、気を引き締めないとね!」


 どこからか撃っているのかわからない狙撃や、影に入り込む能力など、瓜生だけではなく周りの人間まで人間離れした力を得ている。

 ここからは、本当にわずかな油断が命取りとなる。


 京都から、一歩踏み出す一同。

 行先は、瓜生たちのいる村。

 瓜生の、そして天使の目的を探るため、戦いの地へと赴くのだった。

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