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仁の操気

 二発受けて、なんとなくの方角はわかった。

 弾は、間違いなくあの村の方から飛んできている。

 だが・・・。


「村はどこです?あっちですか?」

「・・・こっちからは見えない」


 そう、見えないんだ。

 方角的には、確かに村のある方だ。

 しかし、村を避けるように大回りをしているため、こちらからは村なんか豆粒ほども見えない。

 つまりあっちからもこちらの姿は見えないはずなんだが・・・。

 そんな距離がある中、さらにかなりのスピードで動いていた俺たちを補足し、弾を命中させるほどの正確さ。

 相手はとんでもなく手ごわいかもしれない。


「止まっているだけじゃ格好の的だ。とりあえずあの木の裏へ逃げ込むぞ」

「はい」


 とはいえ、ここは平原。わずかに木や岩はあるが、あとはちょっとした草と砂だけ。

 木や岩も、身を隠し続けられるほどの大きさも頑丈さも持ち合わせていない。

 あの威力の弾だ。せいぜい一発耐えられるくらいだろう。

 木の裏へと身を隠し、作戦を考える二人。


「あの龍の式神は?」

「まだ出すことはできますが・・・」


 このまま進んだところでまた狙撃されるだけか。

 だが、戦うにしても、相手の姿さえ見えていない状態で村へと接近するのは、あまりに危険すぎる。

 せめて、相手の姿が見えさえしていれば、どうにかできるとは思うが・・・。


「やはり村へ接近するしかないですね」

「いや、待ってくれ」

「はい?」


 ・・・身を隠したら弾を撃ってこなくなった。

 ということは、相手はどこからかこちらの姿を見て狙撃していたということになる。

 音やにおいを頼りにしている可能性も考えたが、そうではないなら・・・。


「千東、龍を召喚してくれ」

「え?でも、また撃たれてしまうのではないですか?」

「いや、俺が護衛する。千東から教わったこの力で」


 地面の砂を握り、青那を見つめる仁。


「!なるほど、わかりました」


 そのしぐさで仁の作戦に気付いた青那は、力強くうなずくと式神を出した。


「京都の方向は大丈夫だな?今の内に確認しておかないと、迷うぞ」

「大丈夫です!木符 紙龍しりゅう

「よし、行くぞ!」


 作戦開始だ。



 一度撃墜させられた龍の背に乗り、京都へと向かう二人。

 身を隠していた木から姿を現した標的は、再び襲撃者から狙われていた。

 照準が合わせられ、引き金が引かれようとしたその時。


風雅ふうが 砂撃さげき!」

「なにっ」


 仁の言葉とともに、突然起こった暴風とともにあたりの砂が舞い上がり、二人はその中へと姿を消した。


「・・・これでは狙いをつけるのは難しいな」


 そうつぶやいた襲撃者はため息をつくと、さきほどまで狙いを定めていたライフルを肩にかけ、静かに姿を消した。

 砂嵐の中、龍にのって平原を駆け抜けていく仁たち。


「よし!弾が来ないぞ!」

「これなら、いけます!」 


 晴明の符によってわかった仁の得意な気は、木気。

 そのため、仁はこの数日、青那と行動を共にして、木気を学んでいたのだった。

 そこで習得した能力が、気力で風を起こすこと。

 気を左手にため、風を操りながら、魔装の槍で身を守り戦う。

 それが仁の戦い方の基本になっていた。


 そして平原には細かい砂と石がいくつもあった。

 仁はこれに目をつけ、自分たちの周りで風を巻き起こすことであたりの砂を舞わせ、視界をふさぐ作戦を思いついた。

 狙いを定める方法が、目視によるものだとわかったからこそ、成功した作戦だった。


 二人は砂嵐を巻き起こしながら、京都へと向かっていく。


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