096:目覚め
少しの懐かしさを感じながら、もう元の世界に戻らなければいけないと思った瞬間に意識が現世に戻った。
俺はバッと上半身を起こして目を覚ますと、溺れていたのかというくらいにゼーゼーッと息が荒れている。
「お 俺は、どうなったんだ? 生きてるみたい………でも、全身が筋肉痛みたいで痛い………」
オリヴァーと戦闘を始めたのは覚えているが、どうなったのかまでは記憶が曖昧になっている。
起きあがろうとするが全身が筋肉痛なように電気が走る痛みが広がる。こんなになったのは2度目の人生で、神父様から剣の修行を受けた翌日以来だった。
俺の痛みのあまりに出た声を聞きつけた、エッタさんが別の部屋から走ってきて、ダイビング抱きつきをしてくる。
「良かったですぅ!! もう目を覚さないって少し思っちゃいましたよぉ………」
「痛い痛い痛い痛い!! エッタさん、まだ俺は怪我人だから抱きつくのは痛いよ!!」
「あっ!? す すみませんでした。目を覚ましたので、とても興奮してしまって………」
本当に心配してくれていたんだと分かるくらいの力で、俺の体をギュッと抱きしめてくれた。そんなに心配してくれていたのならば嬉しい限りだが、傷だらけの俺からしたら痛すぎる。
俺が流石に痛いというと、エッタさんはバッと離れて恥ずかしそうにモジモジとしていた。
「め 目が覚めたみたいですね。少し心配していましたが、本当に聞いていた通りに生命力が強いですね………」
「どちら様……って、乳デカ!?」
「ミナト様っ!! 誰のどこを見ているんですか?」
怖いって。男だったら誰だって、こんなデカい乳袋があるのならば見てしまうのは本能なのではと思ってしまう。
そんな俺を冷ややかで部屋の温度が数度下がったのではと、錯覚してしまうくらいにエッタさんの目が冷たい。
とにかく見た事も無い女の人がいるという事と、記憶が戻ってきて死んでもおかしくない傷を喰らっていて、現在生きているという事は、この人が命の恩人なんだろうと容易に察せられる。
「推測だけど、アンタが俺を助けてくれたのか?」
「え えぇ。お嬢さん方に、頼まれたので全力で治療をさせていただきました………しかし、さすがに難しいかと思いましたが、3日で意識が戻るとは思いませんでした」
「3日も寝てたのか!? そうか。そんなに寝てたのか………まさかオリヴァーに、あれだけの実力差を見せられるとは」
起きて記憶が鮮明になって来たところで、オリヴァーに負けた悔しさがジワジワッと湧き上がってくる。グッとシーツを強く掴んでやりきれない気持ちを抑え込む。
そんな俺の姿を見たエッタさんは、自分も動く事ができずに愛する人を殺されそうになった事を、何度も何度も責めて今も罪悪感を感じているのである。
「それで、アンタは誰なんだ? 助けてもらったのに、名前を知らないのは礼儀知らずだと思ってね」
「そうですか。私の名前は《フローレン=ナインゲール》と申します………一応、十二聖王をやらさせてもらっています」
「十二聖王っ!? どうして、そんな人が砂漠の村に………」
最近、十二聖王に合いすぎではないだろうか。
十二聖王って言ったら冒険者の中でも、トップの人間であり12人しかいないはずだろ。それがありがたみを忘れてしまうくらいに遭遇率が高すぎだ。
しかし死にそうになっているのを、助けてもらったのだから俺の運があるという事にしておこう。
「私もオリヴァーについて調査をしに来たんですが………たまたま立ち寄った村で、貴方が血まみれで倒れていたんです」
「通りがかりに命を助けてもらって感謝する。それにしても今直ぐにオリヴァーへ、リベンジしたいが体が動かないな」
「そうですね。私が魔法をかけても、丸1日は動く事ができないと思います………正直なところ生きているのも、不思議なくらいに出血していたので」
そんなに出血していたのだろうか。負けた事は理解して痛みもあるから酷い傷だったのは理解できるが、そんな惨劇のようになっていたとは想像もつかない他人事のようだ。
それにしてもフローレンが魔法をかけても、丸1日動けないなんて重症にも程がある。傷は綺麗に塞がっているのだから、それだけでもフローレンに感謝しなければいけないだろう。
「とになく今は静養していて下さい。オリヴァーにリベンジするのは、それからでも遅くは………あっそういえば」
「そういえば? 何か忘れてた事でもあったの?」
「今のミナト様にいうのは急かしてしまうかもしれませんが、クロスロード連盟軍たちもオリヴァー拿捕に動いているらしく」
確かに焦ってしまう情報ではあるだろう。しかし俺としては傷を治さないで無理に戦いを挑む程、俺っていうのは主人公キャラじゃないらしい。
という事で焦る事なく、動けるようになってからオリヴァーにはリベンジさせてもらおう。それこそが俺が前世からの夢である自由な異世界ライフだ。
* * *
ナミカゼ少尉たちは城での攻防を終えてから、俺たちが滞在していたエデン人たちの村に食料提供をしに向かった。
クロスロード連盟軍の旗を知っているエデン人たちは、自分たちに彫られている刺青を隠して対応する。下手な人間が対応して問題になっては困るので村長が村の入り口までやってくる。
「どうもどうも。今回は、どのような御用件で?」
「これから首都に遠征に行くんだが、この村には食料やら飲み物やらを提供してもらう」
「物資提供という事でしょうか? そういう事ですか………わかりました、直ぐに準備させていただきます」
明らかな作り笑いをしている村長だが、トラスト中将の圧力に押されて顔が引き攣ってしまっている。どれだけ怯えているのかというくらいにプルプルッと震えてしまっている。
この村には人に与えるくらいに物資が豊富なわけではないが、世界連盟に加入している為にクロスロード連盟軍が示す、協力提示書を出されたら協力しないといけない。
「最近は珍しい来客が多いなぁ………」
「なんだって? 今なんて言った?」
「も 申し訳ありません!! 軍人さまたちを馬鹿にしたわけじゃないんです………」
「そんなのは良い。今、珍しい来客が多いって言ったか? 俺たちに以外に、ここを訪れた奴がいるのか?」
村長が少しボヤいた事に、トラスト中将がピクッと反応して村長の方を振り向いて詳しい話を聞き出す。その時のトラスト中将の表情というのも強張っていたから怖かっただろう。
自分が完全に失礼な事を言ったと思って、村長はサーッと血の気が引いて真っ青になっている。そして気分を害されないようにペコペコと頭を下げる。
「数日前に、冒険者を名乗る少年が訪れまして………」
「冒険者の少年だって? 名前は知っているか?」
「えぇっと確か………周りの人たちが、ミナトと呼んでいた気がしましたけど………」
「ミナトか……」
トラスト中将は俺の名前を聞いたところで、何かを考えるかのように真剣な顔をしている。声をかけて良いのかというくらいに集中しているので村長は頭を下げて立ち去る。
トラスト中将のところに、ナミカゼ少尉たちが物資を提供してもらったと報告にやってくる。
「全ての物資を提供してもらいました!!」
「あぁ……」
「どうかなされたんですか?」
「いや、ミナトっていう冒険者についてな………」
トラスト中将が俺について考えている事に、ナミカゼ少尉が聞いて冒険者について何で考えてるんだろうと思った。
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