087:友の怒り
カエデちゃんたちは特殊なオリジナルスキルを持った、師団長のオレオンと戦闘を行っていた。
「3対1でも中々に勝機が見えて来ないでござる………」
「それでも数で押せば、私たちなら問題ないわん!!」
「そんな単純な話じゃない気もするにゃ………」
3人は即席ではあるが連携は取れている。
それでも勝ちきれないという事は、オレオンが若そうに見えるが相当なトレーニングを積んでいるのだろう。
村の人たちを助ける為には、ここで勝ち切らなければいけないので、どうにか隙やら弱点を探す。
「クチャクチャクチャ。どうしたんだ? 作戦会議したところで雑魚なのには変わりない………それなら楽に殺してやるから、動くんじゃねぇぞ」
・オリジナルスキル『柔軟化』
――うねる剣――
作戦会議している3人に対して、オレオンは剣を蛇の様にクネクネッとさせてルイちゃんに斬りかかる。
剣の鋭利さと強固さは持っているので、刀で防いでも鞭の様に自分に襲いかかってきて油断できない。
「この剣は面倒でござるな!!」
「こっちで対処するわん!! まだまだ使いこなせないけど、使うしかないわん………ぶっ飛ばしてやる!!」
「獣神化か? そんな珍しいのを見せてくれるとは………この仕事について幸いだったかもな!!」
ルイちゃんとオレオンが鍔迫り合いをしている隙に、カエデちゃんが獣神化して襲いかかっていく。
しかしオレオンは自分の腕を柔らかくして、ゴム人間の様に腕を伸ばしてカエデちゃんの顔面を殴った。
「そんな事もできんのかよ………絶対にぶっ飛ばしてやる」
「こんな事もって、君たちレベルなら本気を出さなくても問題は無さそうだね」
「舐めないで欲しいにゃ」
・氷魔法Level1《アイスボール》
・火魔法Level1《ファイヤーボール》
――爆発玉――
爆発する玉をオレオンに向けて放った。
しかしオレオンはスネーク・サーベルを使って、ウィンター・オブ・サマーを真っ二つにした。
真っ二つになった爆発する玉は、オレオンの背後で地面に触れた瞬間に大爆発を起こす。
その爆風が3人を襲って、目を瞑った瞬間に、オレオンは走り出して3人に斬りかかる。
「こんな爆風だけで足を止めてんじゃないよ!! そういう隙を突かれるもんなんだよ!!」
「シュナちゃんを後ろに隠すでござる!!」
「そんなの分かってるわ!!」
ルイちゃんが前に出て、後衛職のシュナちゃんを自分の後ろに隠して攻撃をさせない様にする。
カエデちゃんも性格が荒々しくなっているので、ルイちゃんにタメ口で話してシュナちゃんの前に立った。
「やっぱ後衛職からやるのが戦いのセオリーだよなぁ!!」
「絶対に、そうはさせないでござ………なっ!?」
「足元が踏ん張れないと、攻撃もできやしないよな!!」
刀をスッと振り上げたものの地面を柔らかくされて、ルイちゃんの体勢がガクッと崩れてしまった。
その為にルイちゃんは腕を胸の前まで下げてしまい、オレオンの攻撃を防ぐ事しかできない。
「面目ないっ!! そっちに行ったでござる!!」
「何をやってんだ!! 私が仕留めてやるよ!!」
「ここまで勢いをつけちゃったら、そう簡単に止められるわけないだろ!!」
―――地面の揺れ―――
オレオンは地面を柔らかくすると、グンッと強く踏み込むとオレオン周辺の地面が波が起き始めたのである。
獣神化してフィジカルが上がっているカエデちゃんでも、グラッと蹌踉めいてしまうくらいだ。
その隙にオレオンはカエデちゃんすらも突破すると、シュナちゃんに剣を向けようとした。
「私を簡単に倒せると思ってるなんてにゃ………とても不愉快極まりないにゃっ!!」
・氷魔法Level4《粉吹雪》
「クチャクチャクチャ。ふんっ……後衛職が、前衛に勝てると思ってんじゃねぇよ!!」
「えっ!? 嘘にゃ……」
自分が前衛になったら勝てないなんて言われたシュナちゃんは、オレオンにマックスの怒りを持っている。
ムスッとした顔で両手を前にして、オレオンに向けて粉雪で作った雪像で攻撃しようとした。
しかしオレオンは、さっきまでフニャフニャに柔らかかった剣をピンッとした普通の剣に戻して、最も簡単に雪像を切り刻む。
「お嬢ちゃんからバイバイだっ!!」
「シュナっ!!……うっ!?」
「………ん?」
完全に万策尽きたと目の前に剣が迫ってきて、シュナちゃんは目を必死に瞑った。
何秒経っても自分の体が痛くない事に違和感があり、何かと思って目を開けると口から血を流しているカエデちゃんがいた。
「カエデっ!? どうしてにゃ……どうして、カエデが血を流しているんだにゃ………」
「シュナが無事で………良かった」
「カエデっ!!」
シュナちゃんが刺されるギリギリの瞬間に、カエデちゃんが間に入って腹を貫かれた。
どうして自分を庇ったのかとシュナちゃんは、ポロポロと涙を流している。
そしてオレオンはカエデちゃんの腹から剣を抜くと、カエデちゃんは全身の力が抜けてバタンッとシュナちゃんの胸に倒れる。
「良くもカエデ殿をやってくれたなっ!!」
「どうした、どうした? ただ仲間がやられただけじゃないか。そこに倒れているガキは、この瞬間を覚悟していたんじゃないのかな?」
「そんなの関係ないでござる!!」
「関係ないって? どうして関係ないんだろう。やられる覚悟もできていない奴が、こんなところで俺と戦っちゃダメだよ」
ルイちゃんは自分に背を向けているので斬りかかる。
だが直ぐに気配を察したオレオンは横に飛んで避けると、どうしてシュナちゃんは泣いているのかと煽ってくる。
確かに冒険者として各地を周り人を助ける為に、戦っているのならばやられる覚悟をしておかなければならない。
しかし俺としては仲間がやられておいて、涙を流したり怒りを覚えない奴の方が生物として最悪だろう。
「ルイさん、そこを避けるにゃ。私が、絶対に許してやらないにゃ………」
「わ 分かったでござる!!」
「君に何ができるの? 仲間がやられた程度で、涙を流して怒りで周りが見えなくなる雑魚がさぁ」
シュナちゃんは怒りで体が震え顔も赤くなっている。
そんなシュナちゃんの姿すらも、オレオンは嘲笑う様に煽ってくるのである。
その場に俺がいるのならば、今直ぐにでもオレオンを殴り飛ばしているところだが、ここはシュナちゃんに任せよう。
シュナちゃんは両手を前に出して、もう魔力が尽きても良いからと大魔法を放つ準備をする。
「そんな大技は隙が生まれる………やっぱり戦いを舐めてるな。直ぐに殺して………ん?」
「私が、そんなヘマをすると思われてるのが心外にゃ」
確かに大魔法には魔力を練るのに時間がかかり、その間の隙を突かれてもおかしくはない。
オレオンも大魔法を練り始めた、シュナちゃんに向かって走り出そうとしたが足が動かなかった。
「なっ!? 足が凍らされている………いつの間に!!」
「アンタが呑気に喋ってる時ににゃ………これでアンタの顔を見るのは、今世で最後にゃ!!」
バレない様にオレオンの脚を凍らせていた。
その作戦がまんまと成功して、シュナちゃんは大魔法を打つ為の魔力を貯める事ができた。
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