086:二手三手
エッタさんとイローナちゃんは、俺とノールの戦いに邪魔が入らない様に雑魚たちを相手にしてくれている。
「ちょっと聞こえてきたんだけど、あのノールって奴はミナト様に対して色々と言ってるみたいよ」
「そうらしいね。もしかして、ここを全て私に任せるわけじゃないよね?」
「も もちろんよ。さすがに全ては捌ききれないでしょ………本当なら私が八つ裂きにしてやりたいけど」
「中々にサディスティックだよね………まぁ私たちは、こっちに集中すれば良いんだよ」
ノールの態度に対してエッタさんは、中々にイライラしている様子で手を出してきそうだ。
しかしイローナちゃんの持ち場を離れないよねっという、言葉の圧力でエッタさんは我に帰る。
それでもエッタさんの怒りは無くなっておらず、自分がやれるのならば八つ裂きにすると怖い発言をしていた。
「それにしても、マーシャルアーツとかいうのを兵士の人たちはして来ないね」
「まぁ生存燃料っていうのを上手く操作しなきゃダメらしいから、一般の兵士たちには無理なんじゃない?」
「確かに私たちも使えるわけじゃないもんね………ミナト様の為にも習得しようかしら」
「ミナトは守られたいとは思ってないと思うけど………まぁ実力が付くのは良いんじゃない」
当たり前の様に喋っているが、これはトレーニングとかではなく本当の命の取り合いである。
それにも関わらず、2人は話す余裕すらあるという事実に驚かなければいけないのだろう。
そこら辺の人間なんかよりも遥かに強く、俺のファミリーの中でも2人は強い方だ。
「この女たちは化け物なのか!!」
「俺たちの方が何十人も多いんだぞ!!」
「休んでる暇は無いぞ!! このままだったら、ノール師団長がいても………全滅してしまう!!」
共和傭兵団の方はエッタさんと、イローナちゃんの2人にやられまくっている為に焦っている。
それもそうだろう。
俺だって大勢で可愛い2人の女の子に、仲間がバッタバッタとやられていたら焦ってしまうのは目に見えている。
「どうする!! このままじゃあ全滅は避けられない………サブマスターやレラールさんもやられて戦力が落ちてるぞ!!」
「しかし!! ノール様に無断で撤退すれば、我々の方が殺されてしまうのではないか!!」
「そんな事も言ってられないだろ!! ここで全滅してしまったら、元も子もないぞ!!」
全滅を懸念している副師団長は、ノールに許可をとる事なく撤退を命令しようか迷っている。
しかし ここで無断の撤退をしてしまったら、後で軍法会議にかけられないかと懸念されている。
それでも命には変えられないと副師団長は、生き残っている兵士たちに撤退命令を出した。
「面白いくらいに尻尾巻いて逃げていくわね」
「エッタさんが狂気的だから怖がって逃げんたんだよ………」
「まぁ何て酷い事を言うのよ!!」
逃げて行ったのをイローナちゃんは、エッタさんが狂気的だからと目が笑っていない表情で言った。
「そんな事よりもミナトの方は、どうなったのかな?」
「私たちも手助けしにいけば……って終わってるみたいだね」
「ピクピクしてるよ……」
イローナちゃんが始めた話題をイローナちゃん自身で終わらせると、俺の心配をしてくれていた。
2人は俺の方を見て確認しようとすると、既に俺の足元にノールが倒れ込んでいたのである。
ここに至る話は、約数分前に遡っていく。
俺はバイソンになったまま、ノールの腹を力一杯に殴ったのであるが綱体の効果でダメージが入らなかった。
「それならラッシュなら、どうだっ!!」
「どれだけ数を打っても、この綱体の前には何の意味もない」
1発では足りないと言う事で、ラッシュをかける様にノールの腹を殴りまくっていく。
しかしノールにラッシュをかけても顔色1つ変えないで、涼しい顔をしながら余裕をかましている。
俺は必死にノールの腹を殴る、まさしく馬鹿みたいに殴り続け戦闘IQは高くない………。
っとノールは思っているだろうが、この馬鹿みたいに腹を殴っているのはある考えからである。
「どうだ? これだけ多くもパンチを打ち込んでも、僕には通用しないだろ?」
「そうだなぁ。俺は良くわかっていないが、オーラの移動っていうのは簡単にできないんだろ………それなら顔面周りは無防備って事だよな!!」
「ま まさか!?」
俺の狙いはノールの意識と、オーラを腹付近に集める事だ。
それに成功すると俺は腕を上げて、ガラ空きのノールの顔面にパンチをクリーンヒットして倒した。
綺麗なバク宙でノールは1回転して、地面に衝突すると数バウンドしてからピクリとも動かなくなった。
「ふぅ。オリジナルスキルを聞いた時は焦ったけど………自分の力を過信してて良かったなぁ」
「ミナト様っ!! 師団長を、こうも簡単に倒してしまうなんて惚れ直してしまいますぅ!!」
「私もエッタさん程じゃないけど、それなりには評価し直さないとね………」
「いえいえ、そんな褒めてもらわなくてもぉ………さてと、騎馬を奪って先に進もうか」
俺に可愛くエッタさんが駆け寄ると、ジャンプをして抱きついてきたので優しく頭に手をポンッと乗せる。
何やらイローナちゃんも珍しく俺の事を褒めてくれたが、上から目線で流石だと思った。
ひと段落したところで共和傭兵団の健康な騎馬を見つけて、その騎馬に乗って村に出発した。
* * *
大大陸と中陸の中間地点の海上に、真っ黒に塗られた船が速いスピードで航海している。
受け口が丸っこい昔の電話の様なモノが、ジリジリッとけたたましく鳴ってクルーが電話に出るのである。
「こちら《ISO第6部隊》です。そちらは、どちら様でしょうか?」
『私は《ISO第8部隊》の《モンタナ》だ』
「モンタナ様ですかっ!?」
この船はサイファーオールの船だった。
電話に出たクルーは下っ端の下っ端で、電話の相手はサイファーオールの幹部である。
その為に下っ端がモンタナの名前を聞いた途端に焦り出し、アワアワしてしまっている。
「そ それで御用件は何でしょうか?」
『そこに《フリロダ》がいるだろ? フリロダに代われ、話は直接する………なるべく早く代わってくれ』
「りょ 了解しました!!」
モンタナが電話をかけてきた理由は、同じく幹部で第6部隊の隊長を務めている《フリロダ》に話があるからだった。
それが分かった瞬間に、下っ端のクルーは走ってフリロダのいる部屋に向かった。
「代わった、俺だ。俺に話があると聞いたが、別の任務で外に出払っているぞ………」
『上からの命令だ。フロマージュ王国に、今からでも向かえとの事だ』
「フロマージュ王国だと? どうして、そんなところに行かなければいけない………」
『話は最後まで聞け。そこに共和傭兵団……いや、カホアール教団の教祖と幹部たちがいる』
「なんだと!? あの国にいるのか………」
モンタナは上からの命令でフリロダに、フロマージュ王国に行ってカホアール教団の拿捕をしろと伝えた。
それを聞いてカホアール教団は、フロマージュ王国なんかにいるのかと驚いた。
『あと言われたのは、クロスロード連盟軍よりも早く拿捕する様にと言われた………伝えたいのは、それだけだ』
「そうか。上の命令ならば仕方あるまい………直ぐにフロマージュ王国に向かう事にしよう」
フリロダは上からの命令という事で、行き先をフロマージュ王国に変えて出発した。
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